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帳簿の合わない部屋 rw+2,881-0220
2025/08/29 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
帰ったはずの男の声が、まだ部屋に残っている気がする。 「それは見えているんじゃない。帳簿が合っていないだけです」 あの一言を最後に、彼は二度と来なくなった。 それまでは、天井の角にいた。 押し入れの上 ...
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乗りますか~倉敷堀、空舟の影 #3,394
2025/08/29 -短編, r+, 洒落にならない怖い話
岡山・倉敷──あの街で、俺は見てはいけないものを見たのかもしれない。 コロナ禍真っ只中の、空気まで死んだようなある平日の午後だった。仕事で倉敷の美観地区の辺りを歩いていた。アイビースクエアの横を抜けて ...
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呼んだのはどちらか nw+318-0217
2025/08/28 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
平成が始まった翌日、塾へ向かう夕暮れの新宿で、私は一人の幼子を見た。 二歳ほどの男の子だった。母親に手を引かれ、こちらを見上げていた。 その黒い瞳だけが妙に澄んでいた。 私は胸の奥が熱くなり、勝手に名 ...
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戻してはいけない波形 rw+5,424
以前勤めていた病院の話だ。 救急の夜勤。深夜一時を回ったころ、サイレンが処置室のガラスを震わせた。搬送されたのは六十代後半の男性。名札のないジャージ姿で裸足。到着時には心停止。瞳孔は開きかけ、体温は低 ...
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真ん中に立つ人間 rw+3,049
2025/08/28 -短編, r+, 洒落にならない怖い話
あの町の名前は、いまも口にしないことにしている。 発端は、知人から聞いた「境界線」の話だった。物理的な線ではない。こちら側とあちら側を分ける、意識の裏に貼りついた薄膜のようなものだと言う。見えないが、 ...
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□□は最初から一人だった nw+
2025/08/27 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
大学二年の春、ひとり暮らしを始めた。 街の中心から少し外れた、古びた鉄筋コンクリートのマンション。共用廊下には雨水の黒い筋が残り、夜になると蛍光灯は半分しか点かない。窓からは線路が見える。終電後もしば ...
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叫ばされた校舎 rw+8,188-0203
あれは事実だったのかどうか。今でも、判断がつかない。 もう何十年も前のことだ。それなのに、あの朝の湿気と、教室に満ちていたざわつきだけは、皮膚の内側に貼りついたまま離れない。 昭和五十九年。大阪の千里 ...
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足りない rw+3,955-0117
2025/08/27 -短編, r+, 洒落にならない怖い話
あれは、小学四年の夏休みだった。 十五年経った今でも、はっきり覚えている。 本当にあった。 少なくとも、俺の中では。 当時、山中という同級生とよく一緒にいた。 クラス替えで隣の席になってからだ。ゲーム ...
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見るだけで、つながる rw+4,580
2025/08/27 -短編, r+, 洒落にならない怖い話
あれは五年前の夏だった。 俺はまだ中学生で、日が暮れるまで裏山でエアガンを撃ち合っていた。弾が切れれば、寺の石段に座ってペットボトルの水を回し飲みする。あの頃の世界は、汗と火薬の匂いだけでできていた。 ...
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視線の往復 rw+2,017
2025/08/27 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
放課後の公園に、スーツ姿の男が立っていた。 小学校六年の春先。桜は半分散り、砂場の縁に花びらが溜まっていた。ドッジボールをしていた俺たちは、誰かの「お前に似てる」という声でいっせいに振り向いた。 入口 ...
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花だけが新しい rw+2,050
山に入って三日目、ようやく最初の目的地にたどり着いた。 古地図にだけ記され、国土地理院の地形図ではただの雑木林とされている場所だ。実際、道など存在しなかった。高巻きしながら枝を払い、沢を跨ぎ、獣道すら ...
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分類できないもの rw+1,901-0209
2025/08/27 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
泊まったホテルの名前は、もう思い出せない。 いや、思い出せないのではなく、意識的に引き出さないようにしている。 場所は東北だったはずだ。学会での発表があり、大学から派遣され、前泊が必要になった。地方都 ...
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裂け目の夜道 nc+
2025/08/26 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
あの日のことは、どうしても頭の隅から離れてくれない。 五年前の十二月、残業が珍しく長引いて、終電でようやく帰ることになった夜のことだ。 当時の住まいは、最寄り駅から徒歩二十五分もかかる古びたアパート。 ...
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指しているのは誰か nw+410-0214
2025/08/25 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
正月になると、九州の奥の集落に一族が集まる。 山と藪に囲まれた古い家だ。舗装の剥げた坂を上がり、竹を押し分けるようにして辿り着く。縁側から差す年始の陽射しはやわらかいが、外気は骨に染みるほど冷たい。座 ...
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ハカソヤ rw+7,305-0126
母の故郷の話を、私は長いあいだ何も知らずにいた。 それを初めて聞かされたのは、大学進学が決まり、東京で暮らす準備をしていた頃だ。地方の静かな街で育った私にとって、東京は現実味のない異界だった。駅前にス ...
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天安河原で見た二人 rw+2,767
2025/08/25 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
宮崎に行ったのは、十年前の十一月だった。 大学の仲間五人で、夏休みをずらしての旅行だった。車を借り、ルートを決めたのは先輩の女だ。霊感だの波動だのを半分本気で語る人間だったが、面倒見はよく、誰も逆らわ ...
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沖縄で拾った軍袋の話 rw+3,169-0211
2025/08/25 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
ヒッピーに憧れていた。 きっかけはビート・ジェネレーションの詩集と、場末の中古レコード店で見つけたジャニス・ジョプリンだった。あの時代の連中が見ていたという幻覚や、居場所のない魂の震えに、自分の輪郭を ...
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一匹分の隙間 rw+1,884-0217
2025/08/25 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
午前三時。 目が覚めた理由がわからなかった。物音も、風も、雨もない。ただ、頭の奥がざわついていた。 縁側を見ると、五匹が並んでいた。 横一列。背筋を伸ばし、尾も揺らさず、カーテンの向こうを見ている。 ...
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一番小さい電車 nw+450-0120
2025/08/24 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
大学一年の春になると、決まって思い出す出来事がある。 思い出す、というより、向こうから浮かび上がってくる感覚に近い。 あれを錯覚だと断定できれば、今も両親と同じ布団で眠ることに、ここまで神経を使わずに ...
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四足の祖母 rw+5,094-0219
2025/08/24 -短編, r+, 洒落にならない怖い話
三歳の頃の記憶が、私のいちばん古い記憶だ。 木枯らしの吹く夕暮れ、公園のブランコにひとり座っていた。鉄の鎖が軋み、耳がちぎれそうに冷たい。手も足もかじかみ、呼吸をするたび喉が痛んだ。それでも帰らなかっ ...
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白髪の門番 rw+2,189-0219
2025/08/24 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
広い家だった。 田舎の地主の家らしく、門が五つあり、敷地は竹林と畑と古い家屋の残骸で曖昧に広がっている。初めて来た人間は、どこからがうちの土地なのか分からない。 だから昔から、知らない人間が庭を歩いて ...
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母にいない妹 nw+
2025/08/23 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
『そういえば叔母さんは元気?』 その一言を口にするたび、家の空気が変わる。 きっかけは、三歳か四歳の頃の記憶だ。夏の夜、母方の祖父母の家。縁側の奥で、母の妹と、その婚約者が並んでいた。蚊取り線香の煙が ...
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接続済みの人生 rw+2,458-0212
2025/08/23 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
正直、最初は母親に無理やり連れて行かれたと言ったほうが近い。 自己啓発の集まりだと聞いた時点で帰りたかったが、親戚が最近通い始めたらしく、「若い人も来たほうがいい」と半ば強引に予定を押さえられた。場所 ...
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救われたのはどちらか nw+
2025/08/22 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
あれは、先月の、まだ寒さが地面に残っている頃だった。 曇天の下、次男を連れて河原へ蕗の薹を探しに行った。春の匂いを拾うつもりが、足もとには枯れ草と小石ばかりが続く。袋は軽いまま、私たちは下流へ流される ...
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誰だと聞いてはいけない rcw+14,735-0121
大きめの姿見がある家に住んでいる人は、一度だけ試してみてほしい。 ただし、絶対に継続はしないこと。 鏡の前に立ち、自分の目を見ながら、こう言う。 「お前は誰だ」 霊的な話ではない。 オカルトでも都市伝 ...
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三月の隣人 rw+3,362
2025/08/22 -短編, r+, 洒落にならない怖い話
引っ越してきたのは、何年前だったか。 駅から徒歩五分、築二〇年のマンション。二LDKにしては家賃が安かった。付き合っていた彼女には小さな子どもがいて、三人で暮らすことを前提に選んだ部屋だった。 入居し ...
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出前の青年 rw+2,781-0219
2025/08/22 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
俺が二十歳を少し過ぎたころの話だ。 近所の小さな和食屋で、毎晩のように出前をしている青年がいた。俺より三つほど下で、高校へは行かず、十五か十六の頃から住み込みで働いていた。人当たりがよく、配達先でも評 ...
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三つ目の『ツ』 rw+2,201-0201
2025/08/22 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
三年前の夏だった。腕が日に焼けてひりつく感覚だけが、やけに鮮明に残っている。 就職したばかりで、毎日が薄い膜を一枚ずつ剥がされていくようだった。朝起きて電車に乗り、席に座り、定時までそこにいる。それだ ...
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内鍵 ncrw+412-0121
2025/08/21 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今年の黄金週間、家族は二泊三日の旅行に出た。俺ひとりを家に残して。 二階建ての家は、古びているくせに無駄に広い。もとは他人の家だったものを親父が安く買い取り、最低限の補修だけで住み始めた。柱や壁には、 ...
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言えなかった理由 rw+7,206-0119
叔母は、生まれつき、見える人だった。 霊だとか、気配だとか、過去だとか。そういう輪郭の曖昧なものが、布の皺や汗の染みに引っかかって、浮かび上がるのだと言っていた。 若い頃は、それをひた隠しにしていたら ...
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雨の日の空席 rw+2,425
2025/08/21 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
雨の日だけ、俺は思い出から抜け落ちている。 自分が通っていた保育園で、昔の友達が働き始めた。久しぶりに会って酒を飲み、「あの頃の担任、まだいるよ」と聞かされた。軽い気持ちで飲み会を開いた。担任も来て、 ...
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スピリチュアル系 #1,776
2025/08/21 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
スピリチュアル系【ゆっくり朗読】 現在進行形で起こっている『呪い』に関するネタ投下 473 :パワーストーンやヒーリングバカに付ける薬なんかないよ1:2011/08/24(水) 19:48:55.33 ...
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霧の向こうの客 nw+462-0121
2025/08/20 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
あれは、もう何年も前のことだ。 馴染みの客に引っ張られて、場末のスナックに入った。白すぎる蛍光灯の光が、酒で濁った空気をむき出しにしていて、氷が溶ける音だけが妙に大きく響く夜だった。 カウンターに立っ ...
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苗字の由来 #10,844
2025/08/20 -短編, r+, 家系にまつわる怖い話
★人気ベスト300苗字の由来【ゆっくり朗読】 自分の苗字由来の話。 田舎の方に行くと、地域に同じ苗字の家が密集してる集落なんてのは割とよくあると思う。 で俺の住んでた地域も二、三種類の苗字が大半を占めていてました。 俺 ...
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泣かない子 rw+6,511
2025/08/20 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, ヒトコワ・ほんとに怖いのは人間
★人気ベスト300西東京のアパートに越したのは、三月の終わりだった。 軽鉄骨二階建て、二階左端の2DK。築二年。可もなく不可もない、ごく普通の物件だった。 私は三十を過ぎた独身で、在宅中心のフリーの仕事をしている。大家 ...
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更新された顔 rw+4,064-0201
2025/08/20 -短編, r+, 洒落にならない怖い話
長野県出張で長野に行ったときの話だ。 地方の話をするのに「田舎」という言葉を使うのは少し躊躇するが、やはり都市部とは空気の質が違う。呼吸をするたび、肺の奥まで冷やされるような感覚があった。音も匂いも少なく、 ...
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いなくなったあと rw+2,102-0118
2025/08/20 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
もう異動してしまったが、あれは去年の冬のことだった。 社会人になって六年目になる。誰に話しても信じてもらえないと思う。だが、あれを体験して以来、俺は毎朝、職場に入る前に必ず手を合わせるようになった。 ...
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戻されていないもの nw+
2025/08/19 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
夜があれほど重く沈むとは、あのときまで知らなかった。 中学二年の冬、京都への修学旅行。古い木造旅館に泊まり、軋む廊下の音にいちいち騒いでいた。二日目の夜、夕食と風呂を終えたあとの自由時間、隣室の連中と ...
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誰が泊まっていたのか rw+7,315-0104
祖母の法事があり、先日、十数年ぶりに故郷の山奥の町へ帰った。 山に囲まれた小さな町で、駅前の商店街も半分以上がシャッターを下ろしている。法事のあとは決まって親戚一同で集まり、酒を飲みながら昔話になる。 ...
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《知っていた人》nw+
2025/08/18 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
義両親に呼び出された日のことを、私は忘れられない。 春だった。花粉で目がかゆいはずなのに、それよりも先に、玄関の空気が喉を締めつけた。 応接間のテーブルに封筒が三つ並んでいた。 ひとつは、私のメールの ...
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午前二時の郵便受け rw+7,405
2025/08/18 -短編, ヒトコワ・ほんとに怖いのは人間
★人気ベスト300上京して一年が経つ頃、俺は四畳半のアパートで息をひそめて暮らしていた。 音楽で食っていく。そう言い切れるほど若かったが、現実は日雇いとライブハウスの往復だ。家賃三万円、風呂なし共同トイレ。玄関には外と ...
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ラッパの鳴らない五時 rw+3,505
2025/08/18 -短編, r+, 洒落にならない怖い話
予備自衛官補として入った最初の夏だった。 湿気が肌にまとわりつき、制服の内側で汗が乾かない。大学の講義を終えて電車を乗り継ぎ、郊外の駐屯地に入るたび、日常と切り離された空気に包まれた。 朝六時、スピー ...
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判断しただけ rw+2,745-0120
2025/08/18 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
あれから六年が経った。 岡山の夜のことは、記憶の底で湿った石のように沈んだまま、動かずに残っている。忘れたつもりでいても、何かの拍子に指先が触れると、冷えだけが伝わってくる。 今年、Nと再会したことで ...
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先に呼んだのは誰か nw+
2025/08/17 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
あれは、湿り気を帯びた夜だった。 雨は降っていないのに、空気だけが濡れていた。息を吸うたび、肺の奥で水が鳴るような錯覚があった。 友人の田代と、部屋で飲み直そうという話になり、コンビニ袋をぶら下げてマ ...
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崖の二歩手前で見た女 rw+10,449
先週のことだ。あれが何だったのか、まだ断定はできない。 ただ、あの山にもう一度足を踏み入れる気はない。それだけははっきりしている。 ウルトラライト装備で低山を歩くのが、ここ半年ほどの習慣だった。距離も ...
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塩は乾かなかった rw+4,458-0211
2025/08/17 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
あれは数年前のことだ。 社員十人にも満たない、小さな会社で働いていた。外から見れば威勢がよく、勢いだけで走っているような会社だった。だが内側は違った。社長は派手好きで、金の動きは荒かった。数字の話にな ...
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残ったほう rw+2,301
2025/08/17 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
五年前の秋口のことだ。 大学を辞めて地元に戻ったばかりの頃、短期で入った老人ホームの夜勤で、年上の職員から奇妙な話を聞いた。 深夜の仮眠室。白い蛍光灯が低く唸り、紙コップのコーヒーがやけに苦かった。 ...
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西はこちら側 nc+404-0201
2025/08/16 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
危険人物扱いされるのが怖くて、誰にも言えずにいた。でも、そろそろ限界かもしれない。 五年前から始まったんだ。きっかけは、テレビで野球を見ていた夜。気がついたら目の前のテーブルに、一枚の紙切れがあった。 ...
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隣の女が残した“ゆいごん”の中身 rw+8,016-0221
2025/08/16 -短編, r+, ヒトコワ・ほんとに怖いのは人間
★人気ベスト300, ネットで有名な怖い話あれは数年前、まだ学生上がりで、ろくな定職にも就かずにバイトを転々としていた頃の話だ。 一階の一番端の部屋に住んでいた。築三十年近い木造アパートで、壁は薄く、隣の生活音はだいたい筒抜けだった。 隣には ...
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敷地外の部屋 rw+3,098
2025/08/16 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
もう四十年も前の話だ。 埋立地にできたばかりの団地に住んでいた。空き地ばかりで、風が吹けば砂が舞い、自転車で同じ道を何周もしているだけで日が暮れた。昼間でも静かで、人の気配より潮の匂いのほうが濃かった ...