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魔界遊びの手順書 n+
2025/06/02 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
小学生の頃、ふざけてやったことが大事になった経験が一度だけある。 十二歳、ちょうどランドセルの卒業を意識し始める年頃。あの年齢の男子というのは、なぜか“怖いもの”に惹かれやすい。理由もないまま、心霊写 ...
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塩と石と、墓地の音 n+
2025/06/01 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
中学一年の夏、久々に家族揃って実家へ帰省した。 目的はお墓参り。祖父母やご先祖の眠る墓へ、花と線香を持って赴いた。お坊さんが柄杓や桶を貸してくれて、墓石に水をかけ、手を合わせる——田舎ではごく普通の風 ...
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人狼 n+
2025/05/31 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
中学時代の同級生がこんな話をしてくれた。 彼の祖父――もうずいぶん前に亡くなったらしいが――は、かつて朝鮮半島で交易をしていた。ロシア人やタタール人とつながりがあって、中でも一人のロシア人商人とは特に ...
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名前もわからない存在 n+
2025/05/30 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
ほんの一瞬、誰かが「渡れ」と背中を押したような気がした。 横断歩道の前で立ち止まったのは、車が右から来ていたからだ。そのまま待っていれば、なんの問題もなかったはずだった。でも次の瞬間、妙な衝動に駆られ ...
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パイプラインの内部点検 n+
2025/05/29 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
閉所恐怖症というものは、医学的な診断より前に、感覚でわかるものだと思う。 たとえば、直径60センチの鉄の管の中を、四つんばいで200メートル近く進まされる羽目になったとき、人は「あ、自分、閉所がダメな ...
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ピエロと二階の足音 n+
2025/05/28 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
学生時代、週末になると決まって友人Aの家に集まっては、夜通しゲームや無駄話に耽っていた。 Aの家は二階建てのゆとりある一軒家で、トイレが二階にもあるような造りだった。わたしとA、そしてもう一人の共通の ...
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鏡の底の女 n+
2025/05/27 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
一人暮らしというのは、自由と引き換えに孤独と責任を手に入れることだと、どこかで聞いた。 だが、自分がかつて経験した「一人暮らし」は、そのどちらとも違った。そこには、知らない誰かがいた。 あれは数年前、 ...
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白無垢ダッシュと夜の親戚筋 n+
2025/05/26 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
夏という季節には、何かと“向こう側”の空気が混じる気がする。 祖母が大往生を遂げたのも、そんな季節——お盆直前のことだった。 祖母は田舎の本家に隠居していた。農家の日本家屋で、玄関を開けると土間の匂い ...
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隣の部屋の音 n+
2025/05/25 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
俺が今住んでるアパートに引っ越してきたのは半年前のこと。築30年の古いアパートで、家賃が安いのが決め手だった。 最初の頃は隣の部屋から普通に生活音が聞こえてきて、まあ当然だよなって思ってた。足音とか、 ...
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仏の皮を被った何か n+
2025/04/15 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
中国・杭州にある山間の古刹で起きたという話を、ある女性から聞いた。 初めての海外旅行で参加したツアーの途中、彼女はその寺院を訪れたという。 かすんだ霧が山裾にかかり、音もなく時が流れていた。石段を登り ...
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護られし者たちの沈黙 n+
2025/04/14 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
大学時代の後輩が話してくれた話だ。本気とも冗談ともつかない口調で、けれど目の奥には微かな震えがあった。 場所は、静岡のとある交差点。東名高速の高架がすぐ脇を通っている、車通りの多い地点だったという。昼 ...
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あの夜の木の下で n+
2025/04/13 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
4歳のある夜、母に命を奪われかけた記憶が、その後の人生に深い影を落とす。母の拒絶、父の怒声、祖父の静かな愛。家族という名の渦の中で、「生かされた意味」を静かに見つめ直す回想録。 記憶は曖昧だが、光景だ ...
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拾った日記帳 n+
2025/04/12 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
それは小学生の頃、夏のはじまりを感じさせる、少しむし暑い日の出来事でした。 朝露に濡れた通学路の脇、誰かが落としていったのでしょうか、一冊のノートが地面に伏せていました。ページの端が少し破れていた以外 ...
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式台の左 n+
2025/04/11 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
実家の玄関には、古びた上がり框がある。 リノベーションはされているが、段差の多い古い家で、その中でも特にその段差は大きく、四十センチほどもある。そこに一枚板の式台が突き出している。祖父が言うには、祖母 ...
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三人の女の子~幽霊より怖いものを知った夜 n+
2025/01/13 -短編, ヒトコワ・ほんとに怖いのは人間, n+2025
深夜のコンビニは、いつも静かだった。 夜中にバイトをしていると、来るお客さんはほとんどいつも同じ顔ぶれ。その中で、特に印象に残っているのが、大学生っぽい三人組の女の子たちだった。華やかで清楚な雰囲 ...