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あなた、私が見えるんですか!? n+
2025/11/23 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
駅前のタクシー乗り場は、終電を逃した人たちで薄くざわめいていた。 舗道にこぼれた雨粒が、街灯の光を跳ね返して、足元を曖昧にする。 私は携帯を耳に当て、友人の声に相槌を打ちながら、いつもの位置に並んだ。 ...
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余計な事しやがって n+
2025/11/22 -中編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今でもあの夜の匂いを思い出すと、うっすら喉の奥がざらつく。 乾いた紙と、焦げる寸前の埃が混じったような匂い。あれが合図みたいにまとわりついて、胸の奥に沈んでいた何かがじりじりと立ち上がってくる。 あの ...
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父の不思議な夢 r+1,600-2,340
2025/11/22 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
これは、私が小学校2年生の頃に体験した事象である。 当時、父は頻繁に出張してビジネスホテルに滞在していた。夜間には、父は外出して飲みに行くことが多く、家庭に連絡をすることは極めて稀であった。しかし、そ ...
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穴の裏に書かれた名 n+
2025/11/21 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今でも正月の炬燵の匂いを思い出すと、胸の奥にざらつく感触が浮かぶ。 皆が眠って静まり返った居間で、薄暗い電球が畳の上に滲むような影を落としていた。 年越しの余熱がまだ室内に残っていて、鼻の奥には餅を焼 ...
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君だけが知っていた温もり r+1,752-2,131
2025/11/21 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
これは、ある患者から聞いた話である。 小学4年生の頃、彼は体が弱く、病院と自宅を行き来する日々を過ごしていた。年の離れた友人などいない孤独な時間の中で、病院内の庭園で出会った一人の「お兄さん」との交流 ...
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朱の印の向こうで鈴は鳴らない n+
2025/11/20 -中編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今でもあの夜の匂いを思い出すと、舌の奥に鉄の味が立つ。 雨上がりの舗装に染み出す土の匂い。濡れた電線から、かすかにじりじりと音が漏れていた。友人Aの親から連絡が来て、駅前の喫茶店で話を聞いた帰り道だっ ...
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神の領域に踏み込むな~消えた宮司の警告 r+2,350-2,984
2025/11/20 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
これは、以前同じ神社に勤めていた元同僚から聞いた話だ。 先日、久しぶりにその同僚と再会し、懐かしい顔を見ながら雑談をしていた。彼は今も変わらず神主をしている。話題は自然と神社のことになり、ふと、以前そ ...
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ダイヤモンドダストの社 r+1,415-1,739
2025/11/20 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
今でもあの冬の日の吐く息の白さを思い出すと、胸の奥がざわつく。 小学四年の十二月、北風が皮膚を刺すような寒さの中、友達と秘密基地へ向かった。場所は埼玉の郊外、低い林に抱かれた古びたホコラの裏手だった。 ...
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水の底を歩く煙 n+
2025/11/19 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今でもあの夜の匂いを思い出すと、喉の奥がざらつく。 真夏の夜、湿った土とアスファルトの境目みたいな臭気。あれを吸い込むと、胸の中に古い校舎のような黴の味が広がるのだ。 その夜、家を出たのは午前一時を少 ...
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守り神の箱 r+2,639-3,064
2025/11/19 -中編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
今でもあの夏の倉庫の匂いを思い出すと、鼻の奥に鉄錆と湿った木の粉っぽさが蘇る。 北海道の片隅で暮らしていた祖父は、よく「うちは北前船の末裔だ」と言って胸を張っていた。幼い私には、その言葉の意味は半ば分 ...
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藤原清衡の影:夢と現実を越えた古代の遺恨 r+4,209-4,521
2025/11/19 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
作家、民俗学者として知られる山田野理夫氏の話。 氏が語るこの体験は、日本の民俗的信仰と歴史的事象が深く結びついた稀有な例として注目に値する。この体験は、個人の身体的異常と、歴史的背景を持つ呪術的な要素 ...
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忘れられた写真と未来人の謎 r+2,977-3,410
2025/11/19 -中編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
ある日、うちの本家の祖父が亡くなる少し前に、「俺は未来人を見たことがあるんだ」と話し始めたことがあった。 祖父も高齢だったので、周囲は「もうボケたのではないか」と思ったが、実際には精神的な衰えはなく、 ...
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呼ばれていない席 n+
2025/11/18 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今でも、あの夜の匂いを思い出す。 焼き鳥の焦げた脂、タレの甘さ、汗を吸い込んだ畳のにおい。鼻の奥に、それらがまだじっと残っている。大学の仲間と久しぶりに会おうという話になったのは、年明けすぐだった。社 ...
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縁結び神社 r+2,335-2,621
2025/11/18 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
これは、学生時代の知人から聞いた話だ。 5年ほど前の夏、彼は学校が休みの日、母親と二人でひまわりが美しく咲き誇る観光スポットに行くことになった。目的地は少し遠く、数時間かかる道のりだったが、彼にとって ...
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未来人浮浪者 r+3,426-3,863
2025/11/18 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
ネットで有名な怖い話これから述べるのは、ムラ氏(仮名)から聞いた極めて不可思議な逸話である。 あの日、私はムラ氏の部屋で二人の男がいつものように酒を酌み交わしていた。古びた家具に囲まれた落ち着いた部屋だった。ムラ氏の机に ...
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音声入力の夜 n+
2025/11/17 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今でも、あの夜の録音を再生する勇気が出ない。 スマホのストレージに残っているのはわかっているのに、指が勝手に止まる。削除すればいい。そう思っても、なぜか消せないまま三年が経った。 その録音は、大学最後 ...
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幻想郷のような異世界に行く方法を知りたいくないか? r+2,160-2,640
2025/11/17 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
小学校時代からの友人の話。 彼は少し奇妙な人物で、例えば普段から人と違う行動を取ったり、不思議なことを考えたりすることが多かった。中学に進学してから、共通の趣味を持つことがきっかけで次第に親しくなって ...
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山道の怪談 n+
2025/11/16 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, 山にまつわる怖い話, n+2025
大学時代の深夜、俺と山根は、夜更けにラーメンを食いに行った帰りだった。 思いつきで隣の市まで行ったせいで、戻りは真夜中をとうに過ぎていた。 街灯の切れた峠道は、昼間と違って肌に貼りつくような匂いを放っ ...
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異界を覗いた出張帰り r+2,352-2,836
2025/11/16 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
三重県これは、転勤族であるAさんが三重県に住んでいた頃に体験した話だ。 出張で大阪へ向かったAさんが、昼過ぎに電車で戻る際のことだ。途中の駅で乗り換えるために降り立つと、薄暗く古びた駅が広がっていた。駅員の ...
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たけちゃん r+1,797-2,166
2025/11/16 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
これは、ある不思議な体験をした人から聞いた話だ。 彼は生まれつき、いわゆる「見える人」だという。霊や「見えないもの」が見えて、会話もできるが、ほかに特別な力はないそうだ。幽霊は、事故現場で立ちすくんで ...
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天井を見上げていた n+
2025/11/15 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
夜の天井を見上げる癖は、幼稚園の頃から続いていた。 小さな体をベッドに沈めると、目の前には白い平面が広がる。無地のようで、近づくと筆のかすれや塗りムラが見える。そこに淡い影が流れていくのが好きだった。 ...
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囁きの石段 n+
2025/11/13 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今でもあの国の空気を思い出すと、体の芯がざわめく。 旦那の転勤で暮らしたミャンマーの町。乾いた大地に強烈な陽射しが降り注ぐはずなのに、裏庭へ回ると湿った土の匂いが鼻を刺した。そこには旧日本軍が現地の人 ...
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空に『い』 n+
2025/11/12 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今でもあの「い」を思い出すと、喉の奥がざらつく。 小さな頃の空はいつも身近な図書館で、洗濯物の匂いと鉄の網戸の音が混ざっていた。あの匂いを嗅ぐと、たとえ十年以上経っても、日の光の温度まで引き戻されるの ...
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雨宮さんファイル r+1,952-2,541
2025/11/12 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
同僚が酒の席で漏らした話を聞いた瞬間、空気が凍りついた。 「……あれはな、マジでK察の闇だよ」そう呟いたのは、元警察官だったという友人・Nだ。飲みの場とは思えぬ重苦しい雰囲気を纏った彼の顔を、今でもは ...
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偽りの窓辺 r+2,003-2,331
2025/11/12 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
同じような話を繰り返し聞かされたのは、つい先月のことだ。 夜道で彼女と別れた後、どうしても眠れず、枕元であの奇妙な語りを反芻した。まるで他人の体験談のはずなのに、聞けば聞くほど自分の記憶の底に滑り込ん ...
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鱗粉の夜 r+1,984-2,375
2025/11/12 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
この話を思い出すたび、背中にぬめりのある冷たいものが這い上がってくる感覚に襲われる。 正月に帰省した折、友人から耳にした話だった。彼はあまり感情を表に出さない男だが、その時ばかりは声の調子が妙に乾いて ...
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死者の注文 r+2,575-2,637
2025/11/12 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
学生時代から世話になっている知り合いの米屋が、ぽつりと打ち明けてくれた話がある。 穏やかな昼下がり、米俵の匂いに満ちた店先で彼が語ったその顛末を思い出すたび、胸の奥がざらつき、背筋に冷たい膜が張り付く ...
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濡れた足跡と声なき伴侶 n+
2025/11/11 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
仕事に追われ、帰宅がいつも深夜にずれ込んでいたあの頃、 私は古びた安アパートに身を寄せていた。四万円の家賃に惹かれた部屋は、狭く薄暗い。廊下を歩くたび、壁紙の剥がれと湿気の染みが目に入る。雨の日などは ...
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屋根の上の自転車 r+1,419-1,769
2025/11/11 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
夏の光景はやけに眩しかったはずなのに、思い出すと胸の底に溜まるのは黒い沈殿物ばかりだ。 あれは小学生の頃の話で、友達と公園で遊んでいたときのことだった。鬼ごっこに飽き、ジュースを飲み干した頃には自然と ...
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二十三時三分 n+
2025/11/10 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
山奥に帰省すると、どうしても避けられない道がある。 舗装が途切れ、雑草に覆われた坂道を下りきったところに、竹藪の中に埋もれるようにして建った古い待合所があるのだ。屋根は苔に覆われ、雨樋は途中で折れて水 ...
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中華屋珍満 r+4,857-5,353
2025/11/09 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
近所の中華料理店でラーメンを食べていた際、支払いをしようとしたところ、店主が「いらない」と言った。店主によると、この店は今日で閉店するという。経営が厳しくなったことや高齢による体力の限界などが理由で、 ...
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B君 n+
2025/11/09 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
その話を聞かせてくれたのは、大学の同期だった。 飲み会の席で酔いが回りきる前、ふと真顔になって語り出したのだ。 夕方のことだったという。夏の西日が部屋の床に四角く落ち、埃が光に舞っていた。彼は机に肘を ...
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名を奪うもの r+1,931-2249
2025/11/09 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
同僚の田村さんから、ある飲み会の帰り道、ぽつりと打ち明けられた話がある。 笑い話に紛れたように語られたそれは、奇妙な“名前”の話だった。 彼の家には、代々受け継がれる一風変わった掟があるのだという。男 ...
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迎え火の宿 r+3,537-3,983
2025/11/09 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
今でも、あの男の目に焼き付いた“黒”を思い出すと、胃の裏がじくじくと熱を持ち始める。 これは、山奥のとある旅館に泊まった男性から聞いた話だ。あまりに具体的な描写と、話の途中で時折見せる奇妙な沈黙が、ど ...
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開かれた瞳の奥 r+3,474-3,756
2025/11/09 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
雪が降る日は、決まって呼吸が浅くなる。あれ以来、特にそうだ。 寒気のせいじゃない。肺の奥に、何かが残っている感じがして、無意識に息を浅くしてしまうのだ。まるであのときの空気が、まだどこかに漂っているよ ...
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対面の水 n+
2025/11/08 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今でも、あの水のぬるさが忘れられない。 夏の終わり、駅近くの古びたビルの二階にあるレストランでのことだった。 平日の遅い時間だったせいか、店内には他に客の姿はなかった。冷房は効いているはずなのに、空気 ...
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祠の夢、晴れの呪い n+
2025/11/07 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
この話は、ある業界に入ったばかりの青年が体験したという、不思議で少し恐ろしい出来事である。 曰く、「ほんとうに怖かった。今も夢か現か、わからなくなる時がある」という。 業界では、神仏や見えざるものとの ...
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うーちゃん r+1,890-2,143
2025/11/07 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
子供の頃、父方の田舎で過ごした夏の思い出。 普段はすっかり忘れていたが、昨晩ふと記憶が蘇り、胸が締めつけられるように切なくなってしまった。誰かに話しても信じてもらえないだろうから、ここに書き留めておく ...
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十字に裂かれたサドル r+1,899-2,029
2025/11/07 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
交番の前で信号を待つ時の心細さを思い出すと、どうにも胸の内がざらついて落ち着かない。 私はその夜の話を友人から聞いたのだが、彼が語った情景はあまりに生々しく、まるで自分自身が体験したような錯覚に陥る。 ...
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鎖の謡い r+2,147
2025/11/07 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
あれは高校二年の夏、台風の夜のことだった。 ……いや、正確にはもっと前から始まっていたのだ。毎晩のように起こっていた出来事を、私はただ「そういうもの」として受け入れてしまっていた。疑問を持たず、当たり ...
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赤丸の向こう側 n+
2025/11/06 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
夢の話をすると笑われるのが嫌で、ずっと一人で抱えてきた。 子どもの頃から、何度も同じ夢を見ては、目覚めた瞬間に内容を失ってしまう。確かに「またこの夢だ」と夢の中では気づいているのに、朝には真っ白だ。残 ...
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白いワンピースの子 r+2,159
2025/11/06 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
私が生まれ育った家は、古びた日本家屋でした。 土間に、畳敷きの大広間。かまどのある台所と、仏間。十六畳の和室。障子を開け放てば、縁側の向こうに小さな庭が広がり、その背後はすぐに山の斜面へとつながってい ...
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水の舌、蛇の声、名のない呼び声 n+
2025/11/05 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今でもあの夜の匂いを思い出すと、胸の奥がざわつく。 湿った石の匂い、ぬるい苔、雨を吸った杉皮。山の線が暗く膨らみ、谷から上がる風が舌の裏に金気を残した。私は調査の帰りに、村はずれの境の杭をまたいだとこ ...
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手配 r+2,037-2,361
2025/11/05 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
これは、とある予備校時代の友人の体験談だ。 彼の後輩、仮に「タケ」としようか。そのタケは、身長185cmと長身で、かつては80kgほどあった体格も立派な男だったが、二年前、彼の生活は一変した。 親が亡 ...
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声の届かぬ夏の群像 n+
2025/11/04 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
大学二年の夏、祖母に頼まれてお盆の支度をしに車を出した。 午後の陽射しは濁って、アスファルトの上で揺らいでいた。窓を開けると草いきれと排気のにおいが絡みつき、肌に薄い膜を貼るようにまとわりついてきた。 ...
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閉じ込められた三日間 r+5,170
2025/11/04 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
一九九〇年代のはじめ、私は誘拐された。 にわかには信じがたい話だが、私自身が体験した出来事だ。 同じマンションに住む女の人に連れ込まれ、鍵をかけられた風呂場に閉じこめられた。縛られたわけではない。ただ ...
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この女になろうと思った r+4,752
2025/11/04 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
中学からの友人で、高校生活を共に駆け抜けた政一の告白を受けたのは、卒業式の夜だった。 壇上で名前を呼ばれ、卒業証書を受け取る自分を見つめるあの眼差しに、妙な熱がこもっているのは気づいていた。だがそれが ...
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黒い三角は空を覆う n+
2025/11/03 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今になっても、あのときの空の暗さを思い出すと、胸の奥がざわめく。 私はまだ中学生で、父の車に乗って釣りに出かける途中だった。朝の空気は澄んでいて、林の向こうから鳥の鳴き声が聞こえていたのに、あの瞬間だ ...
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東北道に残されたもの r+5,194
2025/11/03 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
これは、高速道路交通警察隊に所属する友人から、私が直接聞いた話だ。 その夜のことを語るとき、彼は決まって煙草に火をつけ、灰皿に目を落としたまましばらく黙り込む。煙がやわらかく揺れながら天井へ溶けてゆく ...
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招かれざる菓子舗 r+1,918
2025/11/03 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
私は編集者をしている。 といっても華やかな雑誌や作家を抱えるような仕事ではなく、地域のイベントや飲食店を紹介する小さな情報誌だ。記事は読者から寄せられる情報を元にしたり、店側からの依頼を受けたり、時に ...