ある夫婦が郊外に中古の家を買った。
郊外だが駅までは近いし、近所にはスーパーなども多く日当たりも良好だ。
それに値段が格安といっていいほどの絶好の物件だった。
友人たちに引っ越しを手伝ってもらい、その後で飲み会をした。
お開きになったのが大分遅くなったので、その日は友人を含め新居で一緒に寝ることにした。
夜中『バタバタバタ……』と子供が廊下を走るような音がする。
その音を聞いて何人かが起きたが、気のせいだと思ってまた寝た。
すると今度は子供の話し声が聞こえて目が覚めてしまう。
そのせいで、朝まで熟睡できた者は誰もいなかった。
誰もが夜に体験したことを不思議がった。
そして皆が思った。
この家には何かある……と。
全員で廊下を調べていると青いクレヨンが落ちていた。
もちろん夫婦のものでも友人たちのものでもない。
そしてとてもおかしなことに気がついた。
この家の間取りが奇妙なのだ。
クレヨンを拾ったあたりの廊下は突き当たりになっているが、家のつくりを考えるとそこにはもう一部屋分のスペースがあるはずなのだ。
壁を叩くと中に空洞がある音がする。
壁紙をはがすと扉が現れた。
おそるおそるその扉を開ける。
もしかしたらとんでもないものがあるのではないか……
しかし部屋の中には何もなかった。
ただ部屋の壁すべてに青いクレヨンでびっしりと、こう書かれていた。
(了)