短編 集落・田舎の怖い話

一二様(いちにさま)【ゆっくり朗読】5100

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自分の田舎の話ね。

258:田舎の名無し2013/10/03(木)21:58:33.62ID:YqfvpVvW0

自分の地元はクソ田舎で、耳は遠いし同じことは何回も言うじいちゃんばあちゃんがいっぱい住んでる田舎なんだけどさ。

8月と12月に「一二様」っていう行事みたいなのが行われてるのね。

いつもは地域行事にも参加しないうちの足の悪いばあちゃんも、その日になると俺に仕事の休みを取らせて車で送り迎えをしてくれっていうんだ。

で、ばあちゃんから「8月3日の一二様のお祭りにいきたいから休みを取ってくれ」って言われた。

その日はもとから仕事が休みだったので、送ってあげることにした。

8月3日の朝。

足の悪いばあちゃんをやっとの思いで車に乗せて一二様のお祭りが行われる公民館の近くの祠へ向かった。

「一二様」という言葉は聞かされていたけど、実はまだどんなものなのか聞いたことがなかった。

そこで、車の中で俺は、ばあちゃんに何気なく聞いてみた。

「なぁ?一二様のお祭りってなんなの?」

そうするとばあちゃんはこういった。

ちなみに地元の方言のまま書く。わからなかったら聞いてくれ。

「おまん、一二様知らんがぁか。一二様ってのはこの地域の神様だすけ。こうやってお参りに行くがど」

俺はその言葉を聞いて、少し耳の遠いばあちゃんのためにゆっくり大きくこういった。

「ばあちゃん足も悪いんだから無理してでなくてもいいんじゃないの?今日は休みだったからいいけど、俺だってそんな毎回都合よく休み取れるわけでもないんだよ?」

そうするとばあちゃんは怒ってこういった。

「あったかさ!(馬鹿もの)…一二様にお参りしねーとバチあたらぁど!」

そうこうした会話をしている間に公民館の駐車場についたので、ばあちゃんを降ろす。

ここからは毎回ばあちゃんは一人で歩いて

祠まで行く。

「終わったら電話するすけ、携帯持っとけなぁ」

(ばあちゃんには80のお祝いにラクラクフォンを買ってあげてある。)

「うん。じゃあまた終わったらここまで迎えに来るね。」

ばあちゃんから電話が来たのは2時間後ぐらいである。

迎えにきてくれという内容の電話だったのだが、なにやらばあちゃんの声に元気がない。

気になりながらも公民館の駐車場に迎えに行くと、既にばあちゃんは駐車場まで来ていて、青ざめた顔をしてご近所さんのおじいちゃんおばあちゃんと話をしていた。

青ざめた顔をしていたのはばあちゃんだけではない。

隣の家のばあちゃんも遠い親戚関係らしい家のおばあちゃんもその場所にいたみんなだ。

変な空気に割って入るのには嫌だったのだが、8月なのでとてつもなくあつい。溶ける。

早く帰って冷房を効かせた自室に戻りたいと思い「おーい。迎えに来たぞ。のって。」と窓を開けてばあちゃんに言う。

ばあちゃんは地域の人に挨拶をして車の方へ杖をついて歩いてくる。

ばあちゃんが車に乗るのを手伝ってやろうと、車から降りてばあちゃんのところへ行くと、なにかうしろめたそうな顔をして、ありがとうといった。

家までの車中、ばあちゃんになんであんな怖いかをで話をしていたのか聞いてみた。

でもばあちゃんは、何も言わなかった。

それでも気になった俺は、ばあちゃんを問い詰めた。何があったのか。

するとばあちゃんは、「御神体が…なかったんど。」

俺は内心、そんなことか…と安堵した。

てっきり俺は誰か具合が悪くなって、その人の心配でもしていたのかなとか予想していた。

しかしばあちゃんはこう続けた。

「確か40年前だったかや。前にもなくなったことがあったんど。」

俺は気になったので、「それで?」と聞き返していた。

「その年の一二月の一二様の日かねや。集落の小野寺さんが失踪したんど。それでな、最後に目撃したって人は祠の近くを歩いてたってがぁだ。…警察も探したんだどもとうとう見つからんがぁてや。ただ、不思議だってがは、御神体がちゃーんと祠にもどってたんど」

俺はこういった。

「じゃあまた誰かいなくなるの?」

ばあちゃんはもう喋らなかった。

……あと二ヶ月である。

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