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手記:山影に潜む異界の兆し r+1344

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『手記一』

山奥にある林業の町で暮らしている。

地元の面白い手記や記事を見つけると、時折抜粋して投稿している。(具体的な地名などはここでは伏せる)

以前「見慣れないもの」に関する投稿があったが、自分の体験もそれに近いものかもしれない。

平成七年、秋が深まったある日、普段は足を踏み入れない○○山を二つ越えた場所にキノコ採りに行った。そこは林道の裏手、西側にあるカラマツ林が広がる地域だ。下草は芝生のように背が低い草が一面に生えている。

その日、ショウゲンジなどを探している最中に、カラスの死骸を見つけた。それ自体は珍しくもないが、奇妙だったのは死骸の周囲に散乱した羽毛の下に、半径2メートルほどの円形の枯れた草地ができていたことだ。その部分だけ草が茶色く変色しており、中心にカラスの死骸が横たわっていた。

(人の立ち入らない山奥で農薬でも撒かれたのだろうか?)

さらにその近くで、見慣れないキノコのようなものを発見した。それはまるで干からびた脳のような形状をしており、サイズは10〜20センチ程度。下草に半ば埋もれるように生えていた。それはシャグマアミガサタケに似ているが、柄が無い点が異なる。ひっくり返してみると内部は乳白色の空洞で、パサパサとした質感。異様な悪臭を放っていた。

周囲をよく見ると同じようなキノコが点在しており、気づかないうちにひとつ踏み潰していた。驚き、思わず飛び退いたことを今でも覚えている。

長い間山に入ってきたが、こんなものを見たのは初めてだった。

しばらくこの体験を忘れていたが、○○山についての話題を目にして思い出し、投稿した次第だ。

以上が地元誌(十数ページの白黒印刷による地元情報誌)からの抜粋である。特集記事の合間に載っていた内容だが、折を見てまた面白いものがあれば紹介したいと思う。

『手記二』

この投稿を改めて振り返ると、「怖い」というよりは「山の怪異」に近い雰囲気だ。次の体験もその類かもしれないが、もう一つ話しておきたい。

「たまし」の炎

昭和最後の年、息子夫婦が帰省した際の出来事だ。

混み合う列車と夜行バスを乗り継ぎ、町の駅に到着したのは夜も11時を過ぎた頃。迎えを頼んでいた地元のタクシー運転手に連れられ、息子夫婦は峠を越える道を進んだ。駅から家までタクシーで約40分かかる山道だ。

その途中、細い川に架かる橋のたもとで、息子が不思議な光景を目にする。

オレンジ色の揺れる「炎」。

まるでキャンプファイヤーのような勢いで燃え盛る炎が、川沿いに揺れていたという。

「こんな時間に焚き火でもしているのか?それとも山火事か?」

タクシーを欄干に止め、「気味が悪い」と言う妻を車に残して、運転手と息子の二人は橋の欄干から炎を観察した。炎の高さは人の背丈ほどあり、周囲に人影はない。不思議なことに、焚き火に伴う火の粉も一切飛んでいなかったという。

二人が車に戻ろうとしたその時、炎はスーッと横に移動し、ふっと消えてしまったそうだ。

家に戻った三人は「狐火を見た!」と怯えた様子だった。

翌日、その話を町外れの薬屋のおじいさんにすると、「その炎はどんな色だった?」と問われた。息子夫婦はオレンジ色の風邪薬の箱を指し示し、「まさにこれと同じ色だ」と答えた。

するとおじいさんは、「それは“たまし(魂)の炎”だ。狐火なら青いはずだよ」とさらりと言った。そして、炎が現れたその辺りは昔から落人伝説や曰くつきの話が多い場所だと教えてくれた。多くの人が時折怪異を目撃する土地だそうだ。

『手記三』

遅くなったが、感想をありがとう。今回は「怪火」が現れた峠に関連する川の話をしようと思う。

「カラカサお化け?」

これは五年前の出来事だ。(投稿時は平成六年)

夜釣り好きのSさんから役場の会合で聞いた話である。

○○川沿いの峠を越えた先に△△湾が広がり、そこに△△漁港がある。その岬を回り込むと、○○川が流れ込む河口の岩場があり、そこはSさんにとって秘密の釣り場になっているらしい。

その日も深夜12時頃に家を出発し、峠を越えて現地に到着したのは午前1時半だった。

あたりは静まり返り、漁港の明かりが水面に揺れていたという。

Sさんはタバコを吹かしながら釣りの仕掛けを準備していたが、信じられない光景を目にしたそうだ。

「○○川の川面に沿って、赤銅色のカラカサが三つ、2メートルくらいの高さで並んでフワーッと浮かんでたんだ。まるで水銀灯みたいに光ってたよ」

その晩、風はなく、生暖かい雲が空を覆っていた。

「最初は何かわからなかったが、背筋がゾワッと凍りついたよ。橙色の光をぼんやり放つ傘が三つ並んでいて、下には青白い蒸気のようなものが垂れ下がってた。まるでカラカサお化けみたいだったな」

大きさは普通の傘ほどで、等間隔に並びながら音もなく川から海の上を滑るように移動し、最後は岬の木々の陰に消えたという。

「この時代にカラカサお化けなんて冗談だろう」と笑うと、Sさんは真剣な表情でこう言った。

「あの怪しい光を見たら、誰だって冷や汗をかくぞ…。十数年夜釣りをしてきたが、あんなものは初めてだ」

普段は強面のSさんが青ざめていたのが印象に残っている。

(了)

[出典:696 名前:山盛るだ[sage] :04/07/15 15:51 ID:n0G8mJbA]

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