先日、なんだか不思議で面白い出来事があったので、その話を書いてみる。
都心の方で仕事の関係者たちと居酒屋で飲んでいたときのことだ。ふとした流れで、ゴミ出しの話題からカラスの話になった。恐ろしいとか賢いとか、懐くと可愛いなど、カラスの話題で妙に盛り上がり、ついでに自分の経験を話すことにした。
小学校時代の同級生に「カラスと話せる」という噂のあった子がいたこと、それから、独り暮らしのお年寄りがカラスにエサをあげていた葬式の日に起きた話だ。
自分は小学校の途中まで日本海に面した町に住んでいたが、そこに噂の「カラスと話せる女の子」がいた。彼女が幼稚園の頃、迷子になって泣いていると、一羽のカラスが降りてきてこう言ったという。
「おまえの父さんは向こうだ」
カラスが嘴で方向を示すのに従って進むと、本当に父親がいたらしい。そのことを父親に話すと、「カラスさんにお礼を言おう」と戻ってみたら、例のカラスが塀の上にとまっていたそうだ。親子で頭を下げて「ありがとうございました」と言うと、カラスは「よし」と一言残して飛び去ったという話だった。
それ以来、その女の子はカラスに挨拶したり話しかけたりするようになったらしい。ただ、小学校一年のとき、同級生にからかわれてからはその話をしなくなったそうだ。ちなみに、彼女をからかった子たちは、翌日まで大量のカラスにつきまとわれ、結局彼女に謝罪したという。
自分は別のクラスだったので、ただ登校時に学校の周囲がカラスだらけで怖かった記憶しかない。
この話をすると、一緒に飲んでいた若い女性がこう言った。
「私も同じ県出身だけど、カラスにまつわる高校の伝説があったよ」
彼女が語るには、その高校には「カラスの神様」が住んでいて、女生徒の中から一人を選んで友達にするのだという。選ばれた生徒はカラスと話せるようになり、神様の話し相手を務める代わりに、三年間災いから守られ、成績も良くなる。ただし「彼氏ができなくなる」という呪いがついてくるため、あまり羨ましくはないとのことだった。
その話が終わると、隣の席の見知らぬサラリーマンが急に話しかけてきた。
「俺、その高校出身なんだが、カラスと話せた小学生ってⅩⅩって名前じゃなかったか?」
残念ながら名前までは覚えていなかったが、話しているうちにそのサラリーマンが自分と同学年であることが判明。すると彼は、こんなことを語り出した。
高校時代、同級生に「カラス使い」と呼ばれる女生徒がいたらしい。おそらく自分の同級生と同一人物だろうとのこと。彼女は地味で頭の良い生徒だったが、いじめたりするとカラスに襲われるという噂があったらしい。
中学の修学旅行では、迷子になった生徒を現地のカラスを使って見つけ出したという伝説まであるとか。
さらに、高校で起きたある出来事が、その伝説の元になったのではないかという話をしてくれた。
それは体育の授業中、教室の手すりにびっしりとカラスが止まり、教室内を覗き込んでいるのを生徒たちが見つけて大騒ぎになったという。異様な光景に授業が中断され、みんなで教室に戻ったところ、廊下には大量のカラスが入り込んでいて、男子生徒が一人カラスに囲まれて腰を抜かしていたそうだ。
騒ぎに驚いたカラスは窓から外へ飛び去ったものの、外の木や電線にもびっしり止まってこちらを見ていたという。その男子生徒は、授業を抜け出して教室に忍び込んだところ、突然カラスに取り囲まれたらしい。
しかし、その生徒はすぐに転校してしまい、教室に入った理由も曖昧な説明しかされなかったそうだ。「ラブレターを置こうと思った」と釈明していたが、それ以前から着替えがなくなるなどの噂もあり、犯人だったのではないかと言われていたという話だった。
そんな不思議で少し怖い話が続き、気づけば飲み会も盛り上がりは最高潮だった。
(了)
[出典:2014/02/08(土) 10:06:33.56 ID:Z8KJTMc8O]