私の高校の知り合いの話。
770 :長文ごめんなさい:04/01/11 22:37
彼は一人で山に登るのを趣味としていました。
ある日、いつものように土日を使って山登りをしていた時のこと。
その日は天気も良くて、彼は昼の休憩の時に飲んだビールの酔いもまわったせいか、かなりご機嫌で山道を歩いていたそうです。
そのうち山道が少し狭くなって、片側が急な崖になって突き出している所にさしかかりました。
下の方には大きな岩盤があって、知り合いは酔っ払い特有の好奇心で、何となしに崖から身を乗り出して見たそうです。
で、結果彼は足を滑らせて下に落ちました。
右足と胸のあたりからものすごい激痛が走って、体がしびれた様になって動けず、声もろくに出せない状態で、しばらく岩盤に横たわっていたそうです。
そのまま時間は過ぎて、日はどんどん傾いていきます。
上の方で登山者も何人か通っているはずなんですが、気配も感じられず。
どうやら彼がいる場所が見えにくいらしく、誰も覗き込んできたりしてくれないままです。
するとどこからか複数の人の話し声が聞こえてきたそうです。
「これが最後のチャンスだ」
そう思った彼は、必死にかすれ声で助けを呼ぼうとしました。
しかし奇妙な事に気がつきました。
話し声が聞こえてくる方向が明らかにおかしいのです。
本来なら彼のいる岩盤の遥か上の崖の上から聞こえてくるはずの話し声。
それが岩盤の下の方から聞こえてきたのだそうです。
岩盤の下はまた急な崖になっていて細い川が流れているので、人が通れない場所のはずです。
段々話し声が近くなってきたことに恐怖感を感じた知り合いは、怪我をしてない右手を動かして、リュックの脇に付けてあったお守りをぎゅーっと握り締めて、
「こっちに来ないでくださいこっちに来ないでください」と心の中でひたすら呟き続けたそうです。
しかもそのまま気を失ってしまったそうです。
気がついた時彼は病院のベッドにおり、崖の上から写真をとろうとした人に助けられた事がわかったそうです。
あんなに握り締めていたお守りは、手の平に爪が食い込んで傷になっていたくらいだったのに、どこかにいってしまっており、病院の人に聞いてもそんな物持っていなかったと言われたそうです。
この話を病室で聞いたとき、私は思わず「それって助けてくれた人達の声だったんじゃん?」と突っ込みました。
すると、彼は「発見してくれた人は一人だった」と言った後に、少し黙り込んでからこうつぶやいたのをよく覚えています。
「すっごい怖かったのが、その話してる人達の声ははっきり聞こえるのに、何を言ってるのか全然わからなかったんだよ」
日本語なのはわかるのに意味がわからず、方言みたいな、頭に響いてくる言語ですごく気持ちが悪かったと言っていました。