中編 集落・田舎の怖い話

絶対に入ってはいけない温泉【ゆっくり朗読】5270

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俺の地元は温泉で有名な所なんだが、そこに一ヶ所だけいわくつきというか絶対に入ってはいけないとされる温泉がある。

540 :温泉:2012/08/29(水) 18:36:54.01 ID:mEGWTIIw0

なんでも昔そこで掘削作業中に事故があったとか、まあそこで起こった話。

当時都会の大学に通ってた俺は某県の田舎の実家に帰り集落に残って農家を継いでいた岡田と地元の大学に進み同じく帰省していた矢倉と再会した。

小学校時代から幼馴染だった俺らは二十歳を超えて始めて会うこともあり酒も入って夜中まで騒ぎまくってた。

午前二時を回りさすがにトーンダウンしそろそろ解散するかと言い始めた頃、突然俺の頭の中に例の温泉のことが思い浮かんだ。なぜだかは分からない。

小学生の頃に岡田の言いだしっぺで一度だけ近くまで三人でその温泉の近くまで行ったことはあった。

入ろうとしたところをたまたま山道をトラックで降りてきてたおっさんに見つかって怒鳴られたんだが、その場でトラックに乗せられ

「あそこは入っちゃいかんだろうと親から教わらなかったか!」

と何度も怒鳴られ、山を降りると電話で親を呼ばれお袋が引き取りに来た。

お袋が迎えに来て勿論家に帰っても親父と一緒に散々叱られるんだが、どうしても納得できなかった俺はその晩寝る時にお袋に「大人になったら入ってもいいの?」と聞いた。

お袋は「あんたが大学に行くくらい大きくなったらね」とだけ言った。

勿論寝る前に発した冗談だったのだろうがその一言を俺はなぜか忘れることが出来なかった。

なぜかあの温泉に行きたくなった。

あのお袋の一言を信じるわけではないが、また三人で昔みたいに冒険したくなった。

帰り際二人にその話をぶっちゃけると意外にも承諾してくれた。

二人とも昔みたいにみんなで冒険したいのだと。

しかも岡田によれば今は昔ほどタブーな地ではなくなってるらしい。

周囲の山道が整備されたのか一年に数回は勘違いした観光客が温泉につかるまではいかなくても足を踏み入れてしまうらしい。

勿論彼らの身には特になにも起こってない。

地元の連合がしつこく電話して確認してる。

ただ今から行くのはさすがに気が引けるので三日後の昼間に行くことで二人とその晩は別れた。

出発当日。

その温泉がある山に足を踏み入れた俺たち。

山道をアスファルト道に整備する過程で木を大分伐採したのか、小学生の頃よりは日光が入ってくるようになっており暗さからくる怖さはだいぶ安らいでいる。

2kmほど歩くと例の温泉に入る山道が見えてきた。

山道の入り口の“この先危険、入るな”という木の立て看板を無視し、ずんずんとその山道を歩く俺たち。

○○温泉と消えかかった文字で書かれた木の看板が見えると、ついに脱衣場になるように作ったであろうスペースに到着した。

かなり昔のものだから蜘蛛の巣が這ってるわ足場は悪いわで無茶苦茶。

だが肝心の温泉はちゃんと湧いておりぎりぎり奥が見えるかどうかの透明感がある。

ただ管理されてないだけあって温度は50℃~60℃だろうか、相当熱かった。

さすがに入浴するのは無理なので足湯だけで済ますことにした。

足湯でくつろいでる途中、一番この温泉の歴史、怪奇現象に詳しい岡田が色々と話してくれた。

その昔この町が温泉バブルに沸き、いい湯が湧き出てるとされるこの地も整備しようという話になったこと。

整備は順調だったが、ある日掘削機器の不備による事故でかなりの死傷者が出たこと。

その後作業を再開しなんとか完成にこぎつけたものの、作業中は怪我人や体調不良になる者、怪しい人影等を見た者が多発し散々だったこと。

完成し営業を始めたはいいものの、怪奇現象が多発したこと。

・入浴してるといきなり湯の中から足を掴まれる。

・いきなり作業着を着たおっさんが入ってきてそのおっさんと目があうとのぼせ気味になり失神する。

・いきなりお湯の温度が上がり、湯船から出ようとするも金縛りにあったように動けず大やけどを負う
・髪を洗ってると肩に誰かの手の感覚、だが振り向くと誰もいない。

結局重傷を負う人も出てきたので町が強引に閉鎖させたらしい。

だが俺たちがいる間はそのような現象も起こらず、もう事故から何十年も経ってるから祟りも薄まってきてるんだろうなあということで笑いながらその温泉を後にした。

だがその晩俺が家の風呂に入ってる時から事態はおかしくなっていく。

その晩いつも通り風呂に入ってくつろいでた俺。

髪を洗おうとシャンプーを頭の上で泡立ててた時だった。

頭の上で増えていく泡に違和感を感じた。

明らかに手の平の上にとったシャンプーの量に比べて泡立ちすぎなのだ。

よく泡立つシャンプーにでも変えたのかなと俺が思ってるうちに泡は異常な速度で増えていく。

異常を認識し、目をあけた瞬間、風呂中に泡立った泡が俺の顔を覆いつくしてしまった。

いざ泡に囲まれてみるとが分かるが、圧迫感が凄く息が出来なくなってしまうのだ。

泡一面の中なんとかドアに手を掛けようとするも目がやられてしまい中々手が届かない。

やっとのことで手が届いたものの今度はドアが動かない。

家の風呂のドアに鍵などついてないというのに、完全に手詰まりになり命の危険を感じ始めた俺は必死に親父やお袋のことを叫び始めた。

そして足をばたつかせなんとか自力でもドアを開けようと試みる。

その時誰かが俺の脚を掴み、ドアとは反対側の方向へ引っ張り始めた。

冷たい手だ、間違いなく風呂の中に誰か他にいる。

家の風呂は俺がギリギリ横になれるくらいの広さしかないのだが、その時は長い間足を掴まれ引きずられた記憶がある。

その手の主は俺をどこに連れて行こうとしてたのか、数秒後叫び声を聞いて駆けつけた親父によって失神した俺が救出された。

ただ現場を見たはずの親父によれば大量の泡なんて全くなかったし、勿論風呂の中には誰もいなかった。ただ俺がそこに失神してただけだということだった。

約一時間後、意識を取り戻した俺はこれは間違いなくあの温泉の祟りだと確信した。

すぐに岡田と矢倉に連絡を取り岡田とは連絡がついたが、矢倉宅に掛けるととんでもないことになっていた。

電話に出た矢倉の妹が言うには矢倉が風呂で滑って転び頭を強く打ち、ドアのヘリの部分に打ちつけ意識がないのだと。

すぐに二人で病院に行き一晩中病院で過ごしたものの結局矢倉の意識は戻らなかった。

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次の日の夜矢倉は死んだ。

昼間には俺たちの問いかけに反応するまで回復したのだが夜になり容態が急変、そのまま亡くなった。

岡田に俺の経験したことを伝えこれは間違いなく祟りだろうと伝えた。

岡田は昨日の晩風呂に入る前に俺から電話が掛かってきて助かってたが祟りだろうという認識は一致した。

しかも岡田は矢倉の妹からとんでもないことを聞いていた。

矢倉はあの温泉に行って足湯につかった時、何者かに足を掴まれていたという。

矢倉は俺らを不安に思わせないよう黙っていたのだろうか。

岡田と俺は強い責任を感じた。

タブーではなくなっているというデマを教えてしまった岡田、そもそも最初に行こうと言い出した俺。

結局それで一番関係のない矢倉を巻き込み死なせてしまったのだ。

矢倉の家族にこのことを伝えたらどんな顔をするだろう、岡田と俺は然るべき時が来るまで黙っていようということで一致した。

しかし矢倉の妹が誰かに吹聴したのだろうか、矢倉が例の温泉の祟りで死んだということは田舎のこの町に噂としてあっという間に広がっていった。

それは勿論あの日俺が風呂で失神していたのを救出した俺の両親に耳にも入ることになった。

しつこく問い詰められた俺はついに、あの日三人で例の温泉に行ったことを白状することになった。

すぐに岡田の家族、矢倉の家族、俺の家族と地元の温泉連合の人たちが集まることとなった。

矢倉の母親は俺と岡田を白い目で見つめていた。

連合会長の爺さんに会合が始まるや否や「お前はあれほど立ち入るなと言ったのに!」と怒鳴られた。

連合の人たちから「あの温泉の怨念は弱まるどころか年々高まっており、観光客が立ち入ってしまうのもそのためだ。

立ち入った観光客は何者かに引き寄せられるかのようにあの温泉に入ってしまったと皆話している」と聞かされた。

そしてあの温泉の名はこちらの地方の古い方言で「二度目、再び」という意味であり、祟りも二度あの温泉に立ち寄ったものに降り注ぐというのだという。

会長さんは「矢倉は一度目か二度目か知らないがなにかあの温泉の霊たちにとって気分を害することをしてしまったのかもしれない」と言った。

更にお袋からもとんでもないことを聞かされた。

小さい頃俺らが温泉に入ろうとしてたまたま通りかかり俺らを連れ戻したトラックに乗ったおっさん。

あの人はてっきり地元の人だと思っていたが、お袋によればあんな人は見たことなく、当時も岡田と矢倉の母親と不審に思っていたという。

そして連合の人に相談しもしやと思い例の温泉の事故によって亡くなった人の写真を見ていくと、おっさんとよく似た人物がいたのだとか。

「あの温泉に立ち入るなとわざわざ警告してくれた……それなのに……」お袋は泣き崩れた。

連合の人によればこの地からなるべく離れること、お祓いされた桶を渡すからそれを風呂場だけではなく事故の危険がある水場の近くに行く時はなるべく持ち歩くことが祟りを絶つ方法だと教わった。

俺と両親はこの地を離れる覚悟をした。

これで大体の経緯は終わりです。

岡田もあの土地を離れようとしたのですが、両親から

「代々農家として暮らしてきた私達もあんたも都会に出て暮らせるわけがない」

と猛反発を受け結局残ることになってしまいました。

そして周りからの避けるような視線、矢倉を死なせてしまったことへの責任感、いろいろなものが積もっていたのでしょう。

数回その土地から離れたところで岡田と会ったのですがその苦悩はよく分かりました。

自分も岡田だけに矢倉死亡の事故の責任を取らせまいと必死に励ましたのですが岡田は昔から悩みを自分だけで抱え込みやすいタイプなので中々事態は進展しませんでした。

自分も岡田がこのままではどうにかなってしまうのではないかと思っていたのですが、ちょうど就職活動で多忙なこともあり最後の一年は結局岡田とは会えずじまいでした。

岡田が自殺したと連絡を受けたのはなんとか就職も決まり、もう一度岡田と会おうとしようとしていた矢先のことでした。

葬式には勿論出させてもらえなかったので断片的にしか情報はありませんが、風呂の中でリストカットし死亡してたとのことでした。

その場にお祓いされてた桶があったかどうかは分かりません。

ただ岡田自身の意思で自殺という選択肢を選んだとすれば、それは最早祟りとは関係なくなってしまいます。

ただ何者かに引き寄せられるように風呂での死を選んだとしたら……

やはり祟りということになってしまいます。

死亡に至る経緯はどうあれ結局自分は二人の親友を亡くしてしまいました。

この事件のきっかけを作ったのは自分です。

そして矢倉がそのあおりを食らった形になって死にました。

そして自分だけ逃げることができる立場なのをいいことに岡田を放置して結局岡田も死なせてしまいました。

桶のお陰か今でも周りに不可解な現象はあまり起きません。

しかし最近自分は最早、○○温泉の霊よりも岡田と矢倉の二人に祟られてるような気がしてきました。

今でもあの温泉はあるのでしょうか、自分にはよく分かりません。

(了)

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