幼少期から、私は怪談に強い関心を抱いていた。
そのため、書籍や人づてにさまざまな情報を収集していた。
ある日、「決して聞いてはならない話がある」という噂を友人から耳にした。
「誰がその話を知っているのか?」と尋ねると、友人は「今の担任の先生が詳しいらしい」と教えてくれた。私は興味を抑えきれず、直接先生に話を聞きに行くことにした。
職員室で先生に尋ねると、最初は一蹴された。しかし、執拗に頼み込んだ結果、先生はしぶしぶヒントだけを与えてくれた。
「私がこの小学校に赴任した当初、放課後も教室で業務を行っていた。だが、ある同僚から図書室にまつわる話を聞いた後、下校後は職員室で作業するようになった」
「なぜですか?」
「それは言えない。ただ、図書室で恐ろしい出来事があったんだ」
それ以上、先生は何も語ろうとしなかった。
その後、私は小学校を卒業し、中学校へ進学した。ある日、昔の友人と再会し、図書室の件について尋ねた。
「図書室? あぁ、あの話か。あそこは昔、外側からしか施錠できなかったが、今は内側からも鍵をかけられるようになっているだろう?」
「どうして?」
「理由はな……昔、夏休み前に図書室で熱心に本を読んでいた女子生徒がいた。夏休みに入ると、図書室は利用されなくなるため、警備員が施錠しに来た。
室内を確認したが誰の姿もなかったため、警備員は扉を閉め、鍵をかけた。だが、実際には少女は柱の裏におり、読書に没頭していたため、施錠されたことに気づかなかった。
彼女が異変に気づいたのは、本を読み終えた瞬間だった。しかし、その時には既に日が暮れていた。
両親は娘の帰宅が遅いことを不審に思い、警察へ捜索願を提出したが、誰も学校の図書室内にいるとは想像しなかった。
そして夏休みが明け、警備員が図書室を開けた際、少女の遺体が発見された。遺体はすでに腐敗が進んでいた……」
友人の話を聞き、私はひとつの疑問を抱いた。
「だが、お前はなぜそんなに詳しく知っている?」
友人は薄ら笑いを浮かべ、続けた。
「この話には続きがある。人間は飲食ができなくても、すぐには死なない。では、彼女は死を迎えるまでの間、何をしていたと思う?」
私は息をのんだ。
「彼女は《恨みの本》を書いていたんだ。読んでいた本の余白に、鉛筆で閉じ込められた瞬間から死に至るまでの状況を詳細に記していた。
文字と文字の間の空白に、小さな字でぎっしりと……。
そして、その本は今でも図書室にあるらしい。彼女がなぜそんなことをしたのか……彼女自身も自分を閉じ込めた人物が誰なのかわからなかった。しかし、彼女は強い憎悪を抱いていた。
だからこそ、《恨みの本》の最後には、こう綴られていた。
『この本を読んだ者は、私に代わり、私を閉じ込めた者を殺してください。さもなくば、あなたは夢の中で私に殺されます』
……と」
私は戦慄した。
「お前、まさか……その本を読んだのか?」
友人は不敵な笑みを浮かべた。
「いや、私は先輩から聞いただけだ。でもな、この話は誰かに語るだけで伝染するらしい。
だから、これで俺はもう大丈夫だ」
その瞬間、ようやく私は「聞くと後悔する話」の真意を悟った。
当時の私はこの話を信じ込み、周囲の人々へ盛んに語ってしまった……。
(了)
[出典:269 名前: 本当にあった怖い名無し 2006/08/12(土) 23:52:33 ID:EzfVqt9c0]