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歌のあとに残った物 rw+1,414
これは、去年の五月頃に私が体験した奇妙な話だ。 その夜、私は自室でパソコンに向かっていた。時刻は深夜二時を少し回った頃だったと思う。外は風もなく、遠くを走る車の音すら聞こえない、妙に静まり返った夜だっ ...
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開けなかった理由 rw+8,593-0111
塩の味が水になる 10月の終わりから、体が変だった。疲れが溜まってるのは自覚していた。 教習所に通い始めて、バイト先では同い年の男が遅刻と無断欠勤を繰り返して、俺が一人で早朝を回す日が増えた。レジが落 ...
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チェックアウト不可 nc+
陽炎の轍 今でも、夏の終わりに特有の、あの甘く饐えたような草の匂いを嗅ぐと、掌がじっとりと湿ってくる。 あれは十数年前、私がまだ二十代半ばの頃のことだ。地方の営業回りで、私は使い古された社用車を走ら ...
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入口のない部屋 rw+4,300
家屋の解体作業をしていると、時折、普通では考えられない造りの家に出くわすことがある。 行き止まりになっている階段や、袋小路のように突き当たりで終わる廊下。増改築を繰り返した結果だろうと考えれば、まだ納 ...
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物置ではない rw+3,963
これは、かつて地方の小さな町で育った男から聞いた話だ。 彼が小学生だった頃、その町には「子ども会」という集まりがあった。地域の子どもたちが集まり、区長の家を拠点に遊んだり、行事を行ったりする、ごくあり ...
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お遍路と人形 r+5,473
去年の夏、田舎に向かう途中の体験だ。 車で二時間半ほどの道のり。さすがにずっと運転するのはしんどいから、途中のコンビニで休憩を取ることにした。駐車場で軽く体を伸ばし、目薬をさしてお茶を飲む。そうしてい ...
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数えられる朝 rw+866-0109
2025/12/09 -中編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, ほんのり怖い話
ネットで有名な怖い話昔、半島の先にある小さな漁村で、ひとりの老人から聞いた話だ。 今では夏になると観光客で賑わうその浜も、かつては祈りと生活が曖昧に混じり合う場所だったという。漁師たちは日の出前、仕事に出る前に必ず海へ入 ...
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白い顔の退職者 rw+3,627-0110
私の職場に、突然人格が変わってしまった者がいる。 私たちの会社には、年次有給休暇とは別に、一週間の特別休暇がある。ただし必ず連続で取得しなければならないため、役職が上がるにつれて使う者はいなくなる。彼 ...
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笑い女の呪縛 r+2,828
2025/11/24 -短編, r+, ほんのり怖い話
ネットで有名な怖い話先週の金曜日、会社の先輩である大村が亡くなった。 マンションの自室で、両耳にボールペンを突き刺した状態で発見されたという。警察は、彼の手がしっかりとペンを握っていたことから事件性を否定し、自殺とすぐに ...
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完成しつつある顔 rw+4,681-0102
2025/11/22 -短編, r+, ほんのり怖い話
ネットで有名な怖い話俺は来年、二十歳になる。 これまで平穏に生きてこられたのは、たまたまだと思っている。理由は単純だ。今も終わっていない出来事があるからだ。 これは、俺がまだ物心もはっきりしない頃、夏祭りで見つけた一軒の ...
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闇に浮かぶ顔は、誰のものか r+1,400-2,114
大学四年の夏、就職が決まって、友人たちは海だの合宿だのと騒いでいた。 だが私は急に空いた時間を持て余し、ふと思い立って母方の田舎に住む祖父を訪ねることにしたのだ。 山の奥、地図で見れば灰色の国道から脇 ...
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見られていた側 rw+2,674-0107
私の中学校の同級生に、左眼だけが赤い生徒がいた。 君島典子という名前だった。入学式の日から、その赤は否応なく目を引いた。充血や病気というより、色そのものが違う。暗いところでも鈍く残る、濁った赤だった。 ...
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戦火の残響と夏の怪 r+2,728-3,125
僕の友人に、オカルト愛好家で霊感がそこそこ強いKという男がいる。 ある日、彼に「今までで一番怖かった体験って何だ?」と聞いてみた。 Kは少し考えた後、微笑みながらもどこか遠くを見るような表情で答えた。 ...
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ケン君のいる部屋 rw+4,216-0107
2025/11/14 -短編, r+, ほんのり怖い話
ネットで有名な怖い話この話を思い出すたび、体の奥に冷たいものが沈殿する。寒かったからではない。あの夜の空気が、いまだに抜けきらないだけだ。 これは、大学時代の知人Aから直接聞いた話である。酒の席でもなければ、盛って語る性 ...
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抱き寄せられた夜 rw+2,213-0107
今でも、あの夜の冷えた空気を思い出すと、背中の奥に細い針を一本ずつ差し込まれるような感覚が蘇る。 寒さではない。皮膚の表面ではなく、もっと内側、骨と神経の境目を正確になぞられるような冷えだ。 三年前の ...
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記憶を借りた宿泊者 rw+2,210-0122
ある知人から聞いた話を、私は何度も繰り返し思い出している。 正確に言えば、「思い出している」という感覚すら曖昧だ。あの夜の出来事は、最初から自分の記憶だったようにも思えるし、誰かの体験を借りているだけ ...
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二人のNさん r+2,827
あの出来事を誰かに話さずにはいられない。 罪悪感がずっと胸に居座って、今でも眠れない夜が続いている。 ――あのコンビニは、今年の春にオープンしたばかりだった。場所は悪くない。大通りの近く、高級マンショ ...
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姉として、生きた r+2,416
引っ越したのは、保育所に通い始めたばかりの頃だったと思う。 段ボールの匂いがする新しい家に着くなり、母に言われた。 「今日から、女の子になってね」 言葉の意味は、よくわからなかった。でも、母がそう言う ...
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視られる森と、帰らない視線 r+3,779
俺がまだ大学生だったころの話だ。 真っ赤な制服を着たキャンペーンレディが、紙袋にモデムを入れて配ってた時代。フレッツADSLって知ってる? まあ、そういう時代だ。 俺はWEBチャットに入り浸ってて、そ ...
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骨の下の家 r+5,264
解体の現場は、たいてい埃まみれで、どこか陰気な空気がある。 でも、あの日は最初からどこか違っていた。重機が不要なくらい小ぶりな家で、古い蔵を改築した造り。二間とキッチンだけの平屋で、現場入りする前は「 ...
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蘇生されたもの r+5,424
以前勤めていた病院の話だ。 救急の夜勤シフトだった。夜中の一時を回ったころ、救急車のサイレンが近づいてきた。運ばれてきたのは六十代後半の男性。名札のないジャージに裸足。心停止状態だった。 いつも通りの ...
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撮れない教室 rw+12053-0124
2025/07/29 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, ほんのり怖い話, ヒトコワ・ほんとに怖いのは人間
★人気ベスト300俺が小学校六年だった頃の話だ。 あの年の記憶は、今でもやけに湿っている。 夏の終わり、蝉の声が途切れる瞬間があるだろう。あの間が来ると、決まって思い出す。汗とは違う、背中の内側からにじむような濡れた感 ...
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あの夜、市民病院で会いましょう r+3,790
2025/07/25 -短編, r+, ほんのり怖い話
ネットで有名な怖い話あれは、オレオレ詐欺なんて言葉がまだ世間に馴染んでなかった頃のことだ。 だから今思い返しても、あれが一体なんだったのか、さっぱり分からないままでいる。 金曜の夕方だった。会社で打ち合わせ中、スマホに親 ...
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喪われた顔 r+2,906
2025/07/16 -中編, r+, ほんのり怖い話
ネットで有名な怖い話あの人の声が、今でも耳に残っている。 「俺を裏切った元カノはみんな不幸になってるんだ」 そう言って、彼は平然と笑った。「前の前の彼女のお母さんは死んじゃったし、その次の子は親父が借金残して自殺して、今 ...
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地下二階 r+4,043
――あれは十年以上も前のこと。 まだ俺が、エレベーターの保守点検の仕事をしていた頃の話。 都内の、繁華街のど真ん中に建つ八階建ての雑居ビルだった。駅前で人通りも多く、テナントもギュウギュウに詰まってる ...
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天井裏の囁き、訪問販売員の悪夢 r+2,255
かつて私が身を置いていた訪問販売の会社には、まことしやかに囁かれる一つの怪談があった。 それは、ある優秀な若手営業マンを襲った、悪夢のような出来事の記録だった。ここでは、その話を小説風に再構成してお伝 ...
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星型の手紙 r+5,133
中学のとき、学校にほとんど来ない女子がいた。 別にいじめられていたわけでもない。非行に走っていたわけでもない。ただ来なかった。登校日より欠席日のほうが多かった。その子に関する噂はあまり広がらなかったし ...
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何でも屋始末記 r+4583
以前、都内の飲み屋で一緒に酒を飲んだ男がいる。 元・何でも屋、という触れ込みだったが、話しているうちに、それが単なる便利屋なんて生易しいものじゃないと気づいた。 曰く、依頼の九割はどうでもいい雑用だと ...
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恨みの本 r+4334
幼少期から、私は怪談に強い関心を抱いていた。 そのため、書籍や人づてにさまざまな情報を収集していた。 ある日、「決して聞いてはならない話がある」という噂を友人から耳にした。 「誰がその話を知っている ...
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姉さん団地 #9,370
【ゆっくり怪談】姉さんビル つくば市に昔《姉さんビル》とか、《姉ビル》と言われている建物がありました。 十何階か建ての公務員官舎で、同じ形をした建物が何件も建っています。 そのうちの一棟の壁いっぱいに ...