-
-
針山の奥 iwa+
2026/10/18 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, 怪談, n+2026, オリジナル作品
母の裁縫箱に残った針山。抜いた針の穴が塞がらず、布の下のものが針を手放そうとしない。独立した創作怪談。
-
-
雨樋の順番 iwa+
2026/10/17 -短編, 怪談, 不動産・物件の怖い話, n+2026, オリジナル作品
雨がやむと、四本の雨樋が決まった順番で鳴る。最後の音を止めたあと、音の場所だけが変わり始めた。独立した創作怪談。
-
-
消灯確認票 iwa+
2026/10/16 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, 怪談, n+2026, オリジナル作品
週に二度、小さな集会所の閉館を任されていた。 夜の利用者が帰ったあと、机を拭き、忘れ物を確かめ、部屋の電気を消す。鍵を掛ける前に点検票の四つの欄へ印をつける。会議室、和室、調理室、廊下。それで終わる仕 ...
-
-
📖前任者への連絡は不要|作品案内・全12章 iwa+
志那羽岩子『前任者への連絡は不要』の作品案内と全12章。閉鎖を控えた共同作業室。書類整理を引き受けた「私」に渡されたのは、二本の鍵だった。
-
-
前任者への連絡は不要|第一章 閉鎖までの仕事 iwa+
志那羽岩子『前任者への連絡は不要』、第一章 閉鎖までの仕事。最初に渡された鍵は二本だった。
-
-
前任者への連絡は不要|第三章 杉浦の控え iwa+
杉浦千里さんは、作業室を離れて六年たっても、手帳を捨てていなかった。 近所の喫茶店で会うと、彼女は最初に、私の依頼が佐伯さんから来ていることを確かめた。閉鎖すると聞き、残したものが気になっていたとい ...
-
-
前任者への連絡は不要|第四章 六畳と台所 iwa+
成瀬さんの家は、作業室から歩いて十分ほどのところにあった。 細い道の奥にある平屋で、玄関の庇だけが薄いトタンだった。引戸の脇に曇りガラスの窓があり、内側のカーテンが途中まで閉まっていた。 家主の片 ...
-
-
前任者への連絡は不要|第五章 黒田の修繕 iwa+
黒田恒一さんは、作業室をやめた理由から話し始めた。 勤め先が変わり、以前の時間に来られなくなった。もともと長く続けるつもりはなく、野間さんが引き受けると言ってくれて助かったという。 「何か、渡し忘れ ...
-
-
前任者への連絡は不要|第六章 一人分の空欄 iwa+
十一月十二日、私は四枚の紙を作業台に並べた。 成瀬さん、杉浦さん、黒田さん、野間さん。それぞれについて、資料と証言から確認できた行動だけを書いたものだった。 調査のための作業表であり、作業室の正式 ...
-
-
前任者への連絡は不要|第七章 最初の六週間 iwa+
最初の引継ぎは、青灰色のファイルには入っていなかった。 杉浦さんが持ってきた大学ノートの、裏表紙につけた封筒にあった。レシートや部品の注文票と一緒に、四つ折りになっていた。 十一月十四日、杉浦さん ...
-
-
前任者への連絡は不要|第八章 連絡のつかない人 iwa+
成瀬さんの連絡先は、二つあった。 一つは作業室の古い連絡帳に載っていた携帯電話で、現在は使われていなかった。もう一つは私宅の固定電話だった。電話機そのものが、もう家に残っていなかった。 片桐さんは ...
-
-
前任者への連絡は不要|第九章 本人の所在 iwa+
成瀬さんの現在の勤務先は、紙製品を扱う小さな発送作業所だった。 夜の裏口には、無地の灰色の金属扉があった。その上の白い灯りが、雨の上がったアスファルトに細く映っていた。扉の脇には、畳んだ段ボールの束 ...
-
-
前任者への連絡は不要|第十章 返す相手 iwa+
立会いの日までに、用事を三つへ分けた。 作業室の仕事。 成瀬さん本人が決めること。 他の人が、すでに自分の判断で続けていること。 第三の区分には、名前をつけるのが難しかった。私用の代行と書けば ...
-
-
前任者への連絡は不要|第十一章 本人立会い iwa+
十一月二十九日の朝、片桐さんは先に玄関を開けていた。 空は明るかったが、風は冷たかった。トタンの庇から、前の晩の水が一滴ずつ落ちていた。 私が着いたとき、成瀬さんは道の入口に立っていた。約束の時刻 ...
-
-
前任者への連絡は不要|第十二章 引き継がなかったもの iwa+
作業室は予定どおり、十一月末で閉まった。 引戸の内側にあった利用時間の紙が外され、ベージュの書棚は空になった。作業台は建物と一緒に残された。 私は分類した記録を佐伯さんへ渡した。会計として保管する ...
-
-
📖下りだけの道|作品案内・全12章 iwa+
下りだけの道:全十二章 帰らない姉と、二十一年前の記録 石積みから樺平まで、ずっと下りだった。樺平から石積みまで、ずっと下りだった。 姉に頼まれた山道の絵。向かう先の違う二つの記録をたどるうち、二十一 ...
-
-
下りだけの道|第一章 逆向きの下り iwa+
石積みから樺平まで、ずっと下りだった。 樺平から石積みまで、ずっと下りだった。 別々の筆跡を読み、僕が書き出した二行だった。二枚とも、向かう先は違うのに、足元は下っていた。最初の人が勾配を誤ったの ...
-
-
下りだけの道|第二章 母のいない写真 iwa+
翌朝、姉の店へ行くと、入口の自動ドアに紙が貼ってあった。開きにくいときは一歩下がってください、と丸い字で書かれている。僕が言われたとおりに下がるより早く、奥から姉が出てきて、手でドアを押し開けた。 「 ...
-
-
下りだけの道|第五章 待っていた場所 iwa+
翌九日、姉が帰ってきたとき、僕は食卓で橋の絵を直していた。霧生山とは関係のない町の観光冊子で、川沿いの遊歩道から見る古い橋だった。先月撮った写真には工事用の足場が写っていて、依頼主からは完成後の姿にし ...
-
-
下りだけの道|第三章 二人の先頭 iwa+
古賀七重さんは、訪ねてきた僕より、姉に多く話しかけた。 「写真は来月まで飾るの」 「まだ日にちは決めてないんです。直人の絵が間に合えば」 「その言い方は、頼む前から遅れる人にしてる」 七重さんが笑う ...
-
-
下りだけの道|第四章 七百メートル iwa+
十月八日の朝、姉は玄関で僕の靴を見て、紐の先がほどけかけていると言った。山へ行くからというより、小学校へ送っていた頃の口調だった。僕が結び直しているあいだに、姉は車の助手席へ荷物を置いた。紺の上着に灰 ...
-
-
下りだけの道|第六章 下山予定 iwa+
十二日の朝、姉から、冷蔵庫に残っている煮物を父と食べておいてほしいという連絡が来た。僕は自分の部屋にいたので、父さんに言って、と返した。姉は「あ、そうだった」と送ってきた。数日実家で過ごしただけで、家 ...
-
-
下りだけの道|第七章 追いつくまで iwa+
十四日の朝、父は湯を沸かす前に、食卓の紙を全部持ち上げた。輪染みを作らないためだった。姉の予定表、写真の控え、僕が印刷した古い記録。それらを一束にして台所の棚へ置き、茶碗を三つ出しかけたところで、一つ ...
-
-
下りだけの道|第八章 道を外れた人 iwa+
小屋跡で待った時間が、何分だったのかは覚えていない。佐井さんの時計を一度見て、僕の電話と少し違うと思った。その差を確かめる必要があるような気がして、画面を開いたり閉じたりした。そこへ戻ってきた隊員の人 ...
-
-
下りだけの道|第九章 黄色い背中 iwa+
姉の上着は濡れていた。僕が肩をつかむと、痛い、と言った。力を緩めても、姉は僕を見ていた。こんなところまで来て何をしているのか、と言いたそうな顔だった。僕は同じことを聞きたかったが、最初に出たのは、何で ...
-
-
下りだけの道|第十章 上がる足 iwa+
姉は長いあいだ、立とうとしなかった。僕は急がせたかったが、急がせるたびに足を痛めることが分かった。動かす前に言って、と姉に叱られ、僕は自分の膝の位置を変えるときまで説明するようになった。姉は鬱陶しいと ...
-
-
下りだけの道|第十一章 言わなかったこと iwa+
父に、姉も僕も下りた、と伝えた。父は、どっちが怪我をした、と聞いた。姉の足だと言うと、医者へ行くんだな、と確認した。行くと答えた。父は分かったと言い、それから黙った。電話が切れていないことは、息の音で ...
-
-
下りだけの道|第十二章 紙の中の道 iwa+
一月に入って、姉から額の寸法が送られてきた。 店の奥に飾る写真をようやく決めたらしい。僕が描くはずだった展示に添える絵は、まだ仕上がっていなかった。姉は急がなくていいとも、もういらないとも言わなかっ ...
-
-
📖無音の試聴室|作品案内・全12章 iwa+
無音の試聴室:全十二章 八人が振り向いた。私のヘッドホンでは、何も鳴っていなかった。 会館の記録映像に残された四十三秒。字幕を作る「私」は、聞こえた声と録音の食い違いをたどっていく。 第一章 四十三秒 ...
-
-
無音の試聴室|第一章 四十三秒 iwa+
八人が振り向いた。 私のヘッドホンでは、何も鳴っていなかった。画面の手前に座っていた女性は、膝の鞄を押さえながら振り返った。隣の男性は天井を見て、そのあと左側の通路へ顔を向けた。奥の六人にも少しずつ差 ...
-
-
無音の試聴室|第二章 八人の向き iwa+
舟橋会館の前庭には、植えたばかりの低い木が並んでいた。 建物の外壁は薄いベージュで、入口の大きなガラスだけが午後の日を強く返していた。旧館を覚えていない私にも、すべてが新しくなったわけではないことは分 ...
-
-
無音の試聴室|第三章 第二試聴室 iwa+
その日のうちに、沖野さんが古い室名表を探してきた。 問題の部屋は第二試聴室で、二階の調整室横に第一試聴室があった。第一のほうは録音したものを少人数で聞く部屋として使われ、現在も名称が残っていた。舞台下 ...
-
-
無音の試聴室|第四章 三つの返事 iwa+
三月九日の午前、沖野さんから届いた一覧表には、音の種類を書く欄がなかった。 保管箱の番号、媒体、表面に記された題名、データの長さ。その四つだけが、細い罫線で区切られていた。二月に資料のデジタル化を請け ...
-
-
無音の試聴室|第五章 雨の日の声 iwa+
伊原千鶴さんは、私たちが玄関に入る前に、傘をどこへ置くか教えてくれた。 雨はやみかけていたが、沖野さんの長い傘の先から、水がぽたぽた落ちていた。千鶴さんは古い鉢の受け皿を持ってきて、これなら倒れてもい ...
-
-
無音の試聴室|第八章 外されなかった線 iwa+
三月十六日、沖野さんは再開館式で歴史映像を上映しないと決めた。 映像全体を捨てるわけではなく、出演した人へ返す作業や、記録としての整理は続ける。当日は同じ場所に写真を掲示し、舞台上の催しを紹介する短い ...
-
-
無音の試聴室|第六章 待たされた人 iwa+
神尾忠さんが会館に来ることになった三月十三日、私は午前中から打合せ机で古い映像を見ていた。 同じ日付の資料に含まれる、上映には使われなかった長い撮影記録だった。再生の速さは変えず、確かめたい動作の手前 ...
-
-
無音の試聴室|第七章 確認の丸印 iwa+
三月十四日、私の作業机には、同じ三つの言葉が違う場所に置かれていた。 会館の作業票に印刷されたもの、千鶴さんの練習録音から私が書いたもの、神尾さんが昨日の聞き取りで言及したもの。付箋には、作業票、私物 ...
-
-
無音の試聴室|第九章 廊下の合図 iwa+
三月十八日の十一時二十二分に、私は会館の通用口へ着いた。 受付の代わりに置かれた長机には、工事担当者の名前と、出入りした時刻を書く用紙があった。井草さんの名前の横に、十一時〇七分とあった。私は自分の時 ...
-
-
無音の試聴室|第十章 訂正の日 iwa+
宮坂さんは、その日のうちに帰宅した。 膝の打撲について治療を受け、ほかに急いで処置する異常は見つからなかったと、本人から連絡があった。なぜ立ちくらみがしたかについては、本人も結論を聞いていない。私への ...
-
-
無音の試聴室|第十一章 再開館 iwa+
三月三十日、舟橋会館の入口には、来場者が傘を持たずに並んでいた。 朝の雨が上がり、前庭の新しい植込みに水滴が残っていた。子供の発表に来た家族、昔から会館を利用していた団体の人、散歩の途中に寄ったらしい ...
-
-
前任者への連絡は不要|第二章 水曜日の食事 iwa+
志那羽岩子『前任者への連絡は不要』、第二章 水曜日の食事。小野寺というのは、作業室から駅へ向かう途中にある食堂だった。お
-
-
無音の試聴室|第十二章 空室の記録 iwa+
四月十二日、私は舟橋会館へ最後の確認用原稿を持っていった。 表紙には「内覧時の音声と旧第二試聴室に関する記録」と書いた。仮に付けていた「音声事故」の題名は、その下に残した訂正履歴の中にある。 原稿に ...
-
-
空の重量 iwa+
2026/10/15 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, 怪談, n+2026, オリジナル作品
昼だけ開く食堂で、洗い物の仕事を始めた。 客席は十二席で、店主の奥さんが注文を取り、店主が厨房に立つ。私の仕事は、戻ってきた食器を洗い、閉店前に残ったご飯を小分けにすることだった。 一人前は百八十グラ ...
-
-
光の角度 ncw+451-0121
夜の工事現場で倒れていた男は、俺の懐中電灯の光を避けるように目を細めた。 当時、俺は新米の現場監督だった。先輩と二人で、仮囲い、型枠置き場、資材ヤード、飯場の外周を順に見回っていた。作業用のライトは消 ...
-
-
備品庫から戻ってきたもの nc+
2026/10/13 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026, オリジナル作品
真夏の昼、私は沿岸の気象観測所に応援として放り込まれた。 台風期の欠員を埋めるための短期配置で、期間は三か月の予定だった。港から船で一時間ほどの小島で、観測塔と事務棟と宿舎が一体になった、要するに逃げ ...
-
-
靴べら iwa+
2026/10/13 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, 怪談, n+2026, オリジナル作品
靴を脱いだあとの玄関で、もう一度だけ踵が鳴った。 右の靴を引き抜いたばかりで、私は椅子に腰を下ろしていた。両足はタイルから浮いていたし、階段を上がってくる人もいなかった。壁に掛けた金属の靴べらが、揺れ ...
-
-
🚨火曜日の❌️ nc+
2026/10/12 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026, オリジナル作品
この話を最初に耳にしたのは、ある研修の懇親会だったという。 酒の勢いもあって、誰かが「県立図書館って、閉架書庫が迷路みたいだろ」と軽口を叩いたとき、隣にいた中年の女性職員が、ほんの一瞬だけ箸を止めた。 ...
-
-
折り返し iwa+
2026/10/12 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, 怪談, n+2026, オリジナル作品
父から引き継いだ洋服直しの店で、カーテンの丈直しも引き受けている。 駅へ抜ける商店街の端にある、間口二間ほどの店だ。ズボンの裾上げを待つお客さんには入口の椅子へ座ってもらい、その場で仕上げる。夕方にな ...
-
-
🚨声のない水位 nc+
2026/10/06 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026, オリジナル作品
録音の仕事を請けたのは、まったくの偶然だった。 古い市民ホールの閉館に合わせて、最後の音響テストを記録してほしいという依頼だった。舞台は解体が決まっていて、すでに客席の大半は撤去され、壁の吸音材も剥が ...
-
-
🚨影だけが残る村 nc+
2026/10/04 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, 民俗, n+2026, オリジナル作品
この村には、年に一度だけ時間が止まる日がある。 誰も畑に出ず、誰も鍋をかき回さず、子どもでさえ走らない日だ。その日は「影を返す日」と呼ばれている。太陽がもっとも高く昇る季節、正午のひとときに、村全体が ...