「民俗」 一覧

🚨影だけが残る村 nc+

この村には、年に一度だけ時間が止まる日がある。 誰も畑に出ず、誰も鍋をかき回さず、子どもでさえ走らない日だ。その日は「影を返す日」と呼ばれている。太陽がもっとも高く昇る季節、正午のひとときに、村全体が ...

🚨逆さの器 nc+

この村では、家に死者が出ると七日間、すべての食器を逆さにして食事をする。 皿も椀も杯も、口を下に向けたまま使う。魂が器の内側に溜まらないようにするためだと伝えられている。誰が言い出したのかは分からない ...

🚨振り向いた名 nc+

この土地では、子どもが五歳になると二つ目の名を持つ。 ひとつは日常で呼ばれる名。もうひとつは「川名」と呼ばれる名だ。 川名は戸籍に記されない。学校でも使われない。家族以外は知らない。五歳の誕生日を迎え ...

🚨境界守の家 nc+

夜の塩撒き競争は、冬至の夜に行われる。 村に移り住んだ最初の年、私はその名を聞いて拍子抜けした。競争といっても、騒ぐわけでも走るわけでもない。ただ各家が黙って塩を撒く夜だと説明された。誰も詳しい理由は ...

🚨誰が聞いているのか nc+

村の外れ、山へ続く細い道の途中に、その木は立っている。 杉でも楠でもない。名を与えようとした者がいなかったのか、あるいは与えられなかったのか。幹は異様に太く、根は地表を押し割るように広がり、雨の後には ...

🚨まだ関わっていない者 nc+

村に入ったのは、誕生日の習わしを記録するためだった。 民俗学の調査という名目だったが、正直に言えば、私はこの村の風習を「倫理的でよく整った儀礼」だと思っていた。未来の子孫のために席を空け、誓いを残し、 ...

🚨燃え残った言葉 nc+

嘘を燃やす夜は、年に一度だけ訪れる。 収穫が終わり、山から乾いた風が下りてくる頃、村の広場に大きな焚き火が組まれる。その夜だけは、誰もが嘘をついてよいとされている。大げさであるほどよい。自分が王だと言 ...

三隣亡の家~さんりんぼう信仰 #7,578

さんりんぼう信仰【ゆっくり朗読】 うちの親父は水道技術者なので特に夏場は忙しく、どこにも連れてって貰えない なので、親戚の家に十日位泊るのが小学生の頃の夏休みの恒例だった。 ある時、叔父さんに卵、キュ ...

ワラスッコの宿帳 rw+3,176-208

中学の頃まで過ごした故郷は、岩手県二戸市金田一という小さな町だった。 山の匂いと湿った土の感触が、今でも鼻の奥にこびりついている。 この町には、昔から妙な宿がある。緑風荘。 表向きは座敷童子の出る宿と ...

継がせる家 rw+5,747

十年前、従弟が事故で死んだ。 夜の街道でカーブを曲がり損ね、ガードレールを越えて落ちたという。即死だったと聞いた。都会で働き、本家とは距離を置いていた男だった。 葬式の夜、本家の叔父が言った。 「お前 ...

戻してはいけない腕輪 rcw+7,984

【ゆっくり怪談】髪被喪(かんひも) 僕の母の実家は、長野の山奥にある。信州新町からさらに奥へ入った、地図の端に追いやられたような集落だ。 あの腕輪を見つけたのは、小学校四年の夏だった。親の都合で、半ば ...

見てしまった者 rcw+270

祖母の葬式の日のことだ。 あれから長い時間が経った。けれど、あの日の一場面だけは、古い写真のように色も動きも変えず、頭の奥に貼り付いたまま残っている。思い出そうとしなくても、ふとした瞬間に勝手に浮かび ...

猿喰いの家 rw+218

2026/08/07   -短編, r+, 土着信仰, 民俗

正直、今になっても、あれが夢だったんじゃないかと思うことがある。 けれど、口の奥に残った苦味と、鼻の奥を焼くような焦げ臭さだけは、どうしても現実だったと俺に思い出させる。 俺の実家は山の奥にある。奥と ...

沈黙しているだけ rw+6,122

三年ほど前のことだ。 実家を解体した際、業者が困ったような顔で俺に声をかけてきた。 「……床下から、変なモノが出てきまして」 差し出されたのは、やけに古びた、そして不自然にきれいな桐の箱だった。円筒形 ...

記録されないもの rw+4,8970

文化人類学の講義に出ていた先輩から聞いた話だ。 中部地方にある大学の民俗学研究室で、憑き物筋をテーマにしたフィールドワークが行われた。指導教官はその分野では名の知れた教授で、過去にも何度か調査報告を学 ...

トウビョウ持ちの家 rw+4,971-0428

台所の床下から瓶が出たと聞いたのは、伯母の家を取り壊す前日のことだった。 伯母は十年以上前に亡くなっていた。子供はいなかったので、空き家になったまま放置され、雨漏りが始まり、隣家から苦情が来て、ようや ...

戻したもの rw+4,970-0405

2026/04/05   -中編, r+, 民俗
 

小学校の低学年の夏だったと思う。 子供の頃の記憶はわりとはっきり残っているのに、その夏だけは妙に靄がかかっている。夢だったのかもしれないし、本当にあったことなのかもしれない。ただ、思い出そうとすると、 ...

土の匂いのする末子 iwa+

その家は、いつからか「陽の射さぬ家」と呼ばれていた。 三代続けて男子が生まれず、家の中には絹の擦れる音と、低く湿った女たちの声だけが満ちている。大工の名跡は残っているが、先代の残した借財が梁のように重 ...

山形の民間霊能者「オナカマ」とは何か nc+

山形県の「オナカマ」は、主に村山・最上を中心に確認される、盲目女性を担い手とする口寄せ(死者の呼び寄せ)・加持祈祷・卜占などの「巫業(ふぎょう)」の担い手である。 ※PDF資料⇒山形県における「オナカ ...

先に拾ったというだけだ rw+1,910

2026/02/02   -短編, r+, 民俗

これは、海を専門に研究している民俗学教授から直接聞いた話だ。 場所は大学の研究室で、窓の外には内湾が見えた。潮の匂いが微かに漂っていたのを、今でも覚えている。 教授は、海にまつわる死者の扱いについて語 ...

泣いていたのは rw+6,018

【ゆっくり怪談】喜界島廃病院 それは、おじいがまだ子供だった頃の話だ。 逆算すると、終戦からあまり時間が経っていない頃になるらしい。 場所は沖縄の宮古諸島、伊良部島という小さな島だ。 当時は玩具などな ...

『おじろく・おばさ』山村に生きた忘れられた人々の物語 #228,495

長男以外の子供は一生結婚も許されず、世間との交流を絶たれ、家のためだけに働き続ける――。二十世紀まで日本に存在した「おじろく・おばさ」と呼ばれる因習。その背景には、山村特有の厳しい生活環境と人口制限の ...

初夜権の研究(処女権・股の権利についての考察)#8,292-0215

2025/12/26   -中編, r+, 民俗
 

初夜権とは [フランス出身の画家ジュール・アルセーヌ・ガルニエ(Jules Arsène Garnier、1847年 - 1889年)が1872年に発表した絵画「初夜権(Le Droit du Sei ...

山の人生[完全版]~柳田國男【青空文庫・ゆっくり朗読】#4,014

【柳田國男】山の人生~前編【青空文庫・ゆっくり朗読】 【柳田國男】山の人生~後編【青空文庫・ゆっくり朗読】 自序 山の人生と題する短い研究を、昨年『朝日グラフ』に連載した時には、一番親切だと思った友人 ...

ヒダル神 #5,000

昔、ゲゲゲの鬼太郎の実写版みたいので見た…… 山を歩いてるとき急に腹が減って、動けなくなることがあって、妖怪の仕業なんだけど、何か少し食べるとすぐ治るのね。 目に見えない餓鬼の仕業だって。 159 : ...

庚申原の白い供物 rw+5,541

今でも、春の宵に山から吹き下ろす風を聞くと、あの声を思い出す。 あれがただの風音だったのか、それとも山中を歩き回る何かの囁きだったのか、いまだに判別がつかない。私は広島の御調郡久井町に生まれ、この盆地 ...

外に出られる条件 rw+15,992-0102

【ゆっくり怪談】秘密結社~クロ教(クロ宗)の鉄の掟 大学院に在籍していた頃、民俗学の調査名目で甑島(こしきしま)を訪れたことがある。 それまでにも山間の隠れ里や、過疎化した漁村に残る土俗信仰をいくつも ...

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