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短編 洒落にならない怖い話

意味不明の日記【ゆっくり朗読】5700

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友人の話。

そいつはこの話を『絶対に人に言うなよ』の前提で教えてくれたが、俺に話すと言う事は『言っても良い』って事なんだなと解釈したので書き込みます。

その友人を誠司とする。

誠司の友人に義光という奴がいた。

と言っても2人が会ったのはつい数年前で、俺も2、3回会った事があるだけで、直接喋った事は無かった。

義光は、なんつーか「陰気」な雰囲気を持っていた。

そもそもこの話を聞いたのも「カイジ」という漫画に今出ているカジノの社長の顔がそいつにそっくりで、その事を友人に電話したのがきっかけだった。

ある時期誠司は義光と桃鉄が原因でちょっとした喧嘩をしてしまった。

それからしばらくは、なんとなく気まずくて会う事は無かったそうだ。

そんなある日、義光から電話がかかって来た。

「今から家に来ないか?」

誠司は胸のつかえが取れたと喜んでそいつの家に行った。

ドアをノックして中に入ると真っ暗、

「こっちだ。こっち」

義光の声に誘われて部屋に入る。

その部屋も何本かのローソクの明かりのみ、

誠司は「どゆ事?」と聞くと

「今停電してるんだよ、まあそこに座りなって」

ああそうかと誠司が座った瞬間、

「ポンッ」と回りの何本かのロウソクが音を立てて消えたそうだ。

「うわっ」と驚く誠司の目の前で義光が誠司めがけてロウソクを吹き消した。

次の瞬間、見えない何かが背中にズンと乗っかって来た後グニュウといった感じで自分の中に入り込んで来た感触があった。

そんな感覚に驚きながらも

「あぶねーな、テメーわ、よお」

ムッとして誠司が言うと、義光は部屋の電気を付けてニヤニヤ笑いながら

「馬鹿じゃねーの?お前」と態度が急変。

誠司は「はぁ?」と聞くと義光は

「今の儀式でお前に貧乏神がついたよ、いやあ、苦労したよ、こいつをこの部屋に連れて来てさあ、この部屋に閉じ込めるのは」

誠司は急激に腹が立って義光をぶん殴った。

「俺にいったい何をしたんだ!」

と怒鳴ると義光は鼻血をだしながら

「言ったろうがよ!オメーに霊をとりつかせたんだよ!オメーが土下座したら許してやんよ!オラ、さっさとしろクズが!」

と狂ったように叫ぶ、

「っの野郎…!」とまた誠司は義光を殴った。

何度も、何度も。

しかし義光の態度は変わらない。

誠司は最後に近くにあったPS2を思いきり義光に投げ付けて家に帰った。

その日から、夜中の3時近くになると頭痛と耳鳴り、そして気持ちが悪くなり何度も吐くといった日々が続く。

医者に行っても原因不明、薬を飲んでもまったく効かないそうだ。

義光の家に行っても誰もいない。

毎晩の吐き気で眠れない誠司は軽いノイローゼーになったらしい

「その時書いた日記もさ、訳わかんねえんだよ」

と俺に言ったので、是非にと誠司の家で見せてもらった。

2ちゃんに書き込むネタ発見!

「この日記帳少し貸してくれ」

とお願いしたのだが、

「お前に貸したら何されるかわからん」と固く断られた。

ならばと誠司が買い物に行っている隙に、何ページかをスキャンして自分宛にメールで送信してやった。

日記帳には次のような事が書かれていた

○月○日 あたり(←天気を記載する場所に書かれていた)今日からめんそ、げら、眠ることはやしけどそんあの ばかり だな。
恒久の平和崇高ゆうこさんからせんべいさんえび。。。
……………(読めない)あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あああがあああがっがああがああ?あ?むいりむりやっぱりなあそうだったか だらーうぜーくう……………
あかい月あかい日 やり ないふそらからびばああばば、痛いいたいい。
きつ月山日 板色 たすけてみてるみてるみてるみてるみえい。
あっ8たこそおかしくりはらえんが骨が出現みてない。
むけもむけてもだらだら流れりしてらんあい

……本当に訳わからん。

そして「このままじゃマズイ」と思った誠司は友人麻比古に相談した。

麻比古の実家は結構有名な神社の息子で霊感がある。

因にその神社には名のあるミュージシャンなどが祈願にやって来るそうだ。

「電話じゃ何だから」と麻比古は直接誠司に会った。

誠司を見るなり「ああ…、嫌な感じがするな、お前」と麻比古は言った。

「どうすればいいのかな?」

誠司が聞くと麻比古は

「取りあえず、その義光の家に案内してくれ」

そして2人は義光の家に、相変わらず人の気配は無い。

郵便受けには広告や手紙がつまっている。

「んー…」と麻比古は唸った後に「今から行くか」と、麻比古は誠司を自分の車に乗せた。

「どこに行くの」

聞く誠司に麻比古はタオルを渡して「それで目隠ししてくれ」と言う。

「え?何で?」

「いいから俺を信じろって、助けてやるからさ、着いたら起こしてやるし、しばらく寝てろ」

と麻比古が言ったので「じゃあ、そうするか」

と誠司はタオルで目隠しをして後ろの座席で横になった。

横になり目を閉じて車に乗っていると、なぜか子供の頃を思い出して懐かしい気分になった。

車は左右に曲ったり砂利の上を走ったり…、しばらくすると麻比古は携帯で何所かに電話をしている。

「今から行くから、ああ…」

その内誠司は妙な安心感からか眠ってしまった。

「おーい。着いたぞー」

その声で誠司は目覚めた。

反射的に目隠しを取ろうとする誠司を麻比古は

「まだ取るなって!」と、それを止めた。

そのまま誠司は何人かの人に腕を取られながら何所かへと連れて行かれた。

砂利の上を歩いているのが足の感触でわかった。

途中から靴を脱がされて建物の中に入って行く。

「久しぶり」と言う麻比古の声と「ああ、この子か」と低い誰かの声、しばらく行くと「着いたから座って」と麻比古に言われ、その場に座った。

床が冷たかった。

なにかお香のような匂いがする。

が、妙に落ち着き、そしてなぜか泣きそうになる匂いだった。

「目隠し取るぞ」

と麻比古が言ってタオルが外された。

暗い。

何本かのロウソク、まるであの時の義光の部屋のようだった。

上を見るとかなり高い天井から何本かのロープがぶら下がっている。

部屋の四隅にもロープやおサツ、目が馴れず上手く見えないので目を細めてジッと見つめようとすると「こんばんは」と低い声。

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見ると誰かが自分の前方に座っている。

見た目はヤクザ、その人は立ち上がり誠司に近付いて

「そのまま」と誠司の目を親指でアカンベーするように目の下の皮を引っ張った。

そして誠司の目をジッと見た後

「可哀想になぁ、今迄つらかったろ、よく頑張ったな」と優しく言った。

心身とも疲れていた誠司はその言葉を聞いてボロボロと泣いてしまった。

「うん、それでいい。とりあえず無理に泣き止もうとせんで力を抜いて感情に身をまかせりゃええでな」

と誠司が泣き止む迄ジッと待っていた。

誠司が泣き止むと

「息子から大体の事は聞いたが、君の言葉でもう一度、その時の状況を事細かに教えてくれんかね?」

というので誠司はそれに答えた。

するとその人は

「やはりな、お前さんに憑いとる霊はここにいてはいけない霊だでな、それはなあ、いわゆる自縛霊というもので、本来は人で無く場所に憑く霊なんだよ、だが君の友人があるやり方したもんで自縛霊を憑いていた場所から引き剥がして君の体を霊の憑く場所にしてしまったんだ。今から引き剥がすで、力抜いてそのままでな」

と、誠司の後ろに回って砂のようなものを首に擦り付けた。

その後お経のようなものを唱えながらシャンシャンと鈴の様なものを鳴らしはじめた。

誠司の体は一定の感覚でブルルッ、ブルルッ、と震えたそうだ。

その内頭がクラクラし、意識がもうろうとする。

最後に体が立ち上がる程ブルルルッと震え、何かが自分の体から抜けて言った。

その後そのまま車に乗せられて帰る事に、頭はボーッとしたままだ。

だが今度は目隠しは無し

「悪かったな、目隠ししちまって、あーゆーのはさ、場所とかの先入観無い方が成功しやすいからさ」

と遠くで聞こえる麻比古の声を聞きながら誠司は眠ってしまった。

気が付くと家の前、麻比古に起こされ目が覚めた。

外はすっかり夜になっている。

麻比古は「今日は俺が一緒に止まるよ」とデカイ荷物と共に誠司の家に上がり込んだ。

そして家の中をウロウロした後誠司の家の見取り図を紙に書いて「FAXある?」と聞いたので無いと答えると「それじゃあ」と麻比古はコンビニへ行きFAXをした。

誠司は麻比古に「何がはじまるの?俺はもう大丈夫なんだよね?」

と聞くと、麻比古は

「まだ終わって無いよ、きっとその内引き剥がされた霊がお前の所に戻って来る可能性がある。これからその対策をするのだ」と答える。

すると麻比古の携帯に電話が、どうやら麻比古の父かららしい。

麻比古は誠司の家の見取り図を見ながら

「うん…そう、そっちが北ね、ああ、やっぱりこのルートね」

と、ひとしきり喋った後電話を切り

「今から帰って来る霊を追い返す処置をするから手伝ってくれ、あ…、鏡が無いや、誠司の家って全身が映る鏡ある?」

「いや、無いよ」

「じゃ、買いに行くぞ」

そして近くのロヂャースで全身が映る姿見を買い、家に帰ると誠司の家の見取り図を見せて

「お前の家のここ、ここが霊道になってるのよ、霊道ってのはさ、もしお前の家に霊がやって来るとすんだろ?その場合霊が通る場所ってのがあるんだよ、それが霊道ね、いまからその道に障害物とかを置いて通行止めにするんだよ」

どうやら誠司宅の霊道は玄関から入り真直ぐ廊下を突き抜けて外に出るルートらしい。

「最良のルートだ」と麻比古は言った。

そして持って来た荷物の中から色々取り出して廊下の端に祭壇の様なものと日本酒の入ったコップ、そして廊下を塞ぐような形で姿見を置いた。

何でもこうする事により玄関から入って来た霊が鏡に映った自分を見て死んでいる事を気付かせる。

また鏡には色んなものを反射する力があるので、鏡にぶつかった霊は鏡に跳ね返されて戻って行ってしまうらしい。

「これを何日か続ければ霊は消えるか他の場所に行ってしまう」

と麻比古は言う。

その夜麻比古は色んな事を教えてくれた。

誠司を連れて言った場所が麻比古の実家、誠司の除霊をしてくれたのが麻比古の父であった事、義光の家は安易な行動の為に関係ない霊までが集まってしまっているのだが、恐らく間違った結界を貼ってしまった為に霊達があの場所から出るに出れない状況、それに耐えられず義光はあの家にいられなくなった。または死んでいるだろう、と。

結局その夜は何も起らなかった。

誠司は久しぶりにまともに眠れた。

次の日、誠司にお礼を言われた麻比古はそのまま仕事に行き、誠司はバイトに行った。

その際麻比古はいくつか誠司に注意をしていった

「日本酒は毎日取り替える事」

「鏡は出来れば動かさない事、特に夜は絶対にあの場所に置いておく事」

「出来れば塩も盛っておく事」等。

その事を誠司はキチンと守った。

そして何日後の夜、誠司はある物音で目が覚めた。

耳をすまして聞くと、ミシッ、ミシッ、と何者かが廊下を歩いている

「帰ってきやがった!」

そう思いジッとしていると

「ガン、ガシャーン!」と何かが落ちる音が!

「うわー」と震えていると何時の間にか物音は消えてしまった。

朝廊下に出てみると廊下の脇に置いてある洗濯機の上に置いてあった物が廊下に散らばっていた。

その日誠司と麻比古はファミレスで会う、誠司が昨晩の事を話すと

「ああ、そりゃあ、霊の奴がムシャクシャしてやったんだよ」

麻比古は笑いながら言った。

やな霊だな、オイ」

「ま、そんだけ効果があるって事だからね、出来るだけ廊下付近には余計な物置かないこった」

と麻比古は言って帰っていった。

さっそく廊下付近の物を無くし、廊下を歩く音にも馴れ、朝起きて夜ぐっすり眠るという普通の生活を取り戻し、ついに霊は現れなくなった。

麻比古も誠司の家に来て

「これならもう大丈夫、御苦労様でした」

と事件の終わりを告げた。

しかし、こうなると気掛かりなのは義光の行方。

麻比古に聞いても

「別に知ったこっちゃ無ぇんじゃね?まあ死んだ所で自業自得だしな」
と、全然気にしていない。

まあ、麻比古と義光は直接会った事も無いのでそんなもんなんだろう。

数日後誠司と義光の共通の友人勝男から義光の事を聞いた。

麻比古の言う通り義光はあの後すぐ実家に帰って、そこで暮らしていたそうだ。

その数日後、夜2階の部屋で寝ていた義光を義光の父が包丁でメッタ突きにして殺してしまったそうだ。

その後父は2階から飛び下りて骨を骨折、しかもその時の事は覚えて無いらしい。

ただ奥さんの話しだと、その夜は何か父の様子がおかしかったそうだ

「この世ではない物に腕を舐められた」

と訳のわからん事を言っていたそうだ。

(了)

 

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