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短編 r+ ヒトコワ・ほんとに怖いのは人間

電池のない声 rw+6,982

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これは、大学時代の知人から聞いた話だ。

彼が大学三年になり、一人暮らしを始めて半年ほど経った頃のこと。生活に慣れるにつれ気が緩み、外出の際に鍵をかけない癖がついていた。やがて鍵そのものを部屋に置いたまま出かけるのが当たり前になったという。

ある日、外出先から戻ると玄関の扉に鍵がかかっていた。鍵は持っていない。隣家の大家に頼んだが、マスターキーは紛失中だと言われた。残る一本は実家にあるだけ。彼は夜道を一時間歩き、実家で鍵を受け取り、ようやく部屋に入った。

おかしいのはその後だ。部屋の床に、彼の鍵が落ちていた。大家は触っていないと言い切る。つまり彼の不在中、誰かが中に入り、内側から施錠したことになる。

嫌な予感がして、彼はクローゼットを開けた。中に、若い女が身を縮めて座っていた。見覚えがあった。半年前、突然告白してきた女だ。断ってもしつこく、やがて姿を消したはずの相手だった。

問いかけても女は何も答えない。彼は警察を呼び、女は連行された。事件はそれで終わったかに見えた。

翌日から彼は必ず施錠した。それでも落ち着かなかった。事件の翌夜、部屋で微かな声を聞いた。耳を澄ますと、女の声だった。彼の名を呼んでいる。壁越しではない。部屋の中から聞こえる。

友人を呼び、二人で確認することにした。クローゼットに近づくと、確かに声がする。扉を開けたが、誰もいない。声は止まらない。

床の隅に小さな黒い物があった。ICレコーダーだった。再生すると、女の声が流れた。彼の名を呼び、同じ言葉を繰り返している。

友人が手に取り、裏蓋を開けた。電池は入っていなかった。

その瞬間も、声は続いていた。友人にも聞こえている。二人は無言になった。友人はレコーダーを床に叩きつけた。音が割れたのに、声だけが残った。クローゼットの中からではない。部屋全体に、近すぎる距離で響いていた。

二人はそのまま部屋を出た。廊下に出ても、声は途切れなかった。階段を下り、外に出たところで、ようやく聞こえなくなった。

彼はすぐ引っ越した。新しい部屋では異変は起きなかった。ただ、鍵だけは絶対に忘れなくなったという。

理由を尋ねると、彼は言った。

あの声は、部屋に残っていたのではない。鍵が閉まる場所に、いたのだと思う。

今でも夜、鍵を回す直前、背後で誰かが息をする気配があるのだそうだ。

(了)

[出典:823 : 本当にあった怖い名無し : 2013/12/01(日) 00:38:14.05 ID:Btpm3SeY0]

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