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【実話】南中山のぐるぐる様の正体 rw+3,385-0215

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十年ほど前、小学五年のときの話だ。

あの頃、俺の通っていた小学校で「南中山にぐるぐる様が出る」という噂が流れた。六年生が肝試しをした夜から広まったらしい。特徴は、身体のどこかが回っていること。全身が黒いこと。それだけだった。

俺は興味がなかったが、姉は違った。

「あんた、今夜行くよ」

晩飯のあと、そう言われた。夜の十一時。両親には内緒だった。

自転車は一台。俺が漕ぎ、姉は後ろに乗った。二十分ほどで山の入口に着いた。階段を上がると、空気が急に冷えた。虫の音が遠くなり、自分の呼吸だけがやけに大きく聞こえた。

噂では北側に出るらしい。

姉は懐中電灯を振りながら進んだ。「最近の噂ってね、形が定まらないの」と言った。「でも、年寄りに聞いたら昔から似た話があるって。黒くて、ただ立ってるだけだって」

そのとき、視界の端が歪んだ。

黒い塊が立っていた。

近づいたわけでもないのに、そこにあった。頭から腰までが螺旋状にねじれている。回っているのか、止まっているのか分からない。見ていると、自分の目の奥が引きずられる感覚があった。

声が出なかった。

「ライト貸して」

姉が言った。俺は渡した。姉はそいつの前まで歩いていった。黒いものは動かない。だが、近づくほど、姉の輪郭が揺れた。

「消して」

俺はライトを消した。

闇が落ちた。

何秒だったのか分からない。足元が柔らかくなった気がした。遠くで、布をねじるような音がした。自分の身体の内側が、どこか一箇所だけ回っている感覚があった。

「もういいよ」

姉の声がした。

ライトをつけると、姉だけが立っていた。黒いものはいなかった。

「どこ行ったんだよ」

俺は聞いた。

「さあ」

姉は地面を見ていた。「足、見えたよ」

「足?」

「うん」

それ以上は言わなかった。

帰り道、姉は妙に静かだった。家の近くまで来たとき、突然叫んだ。

「平和に感謝しろよ」

理由は言わなかった。笑ってもいなかった。

翌日、俺は学校で噂を広めた。ぐるぐる様は北側に出る。黒くて、足がある。見ているだけだ、と。

その日から、噂の形が変わった。

腕が回っていると言うやつがいた。顔が裏返っていたと言うやつもいた。触ったと言うやつも出た。見たという報告が増えた。

俺は何も言わなかった。

十年後、Kの部屋でその話を聞き返したとき、俺は軽い気持ちで言った。

「ぐるぐる様って、結局なんだったんだ」

Kは笑わなかった。

「本当に怖かったのは、そのあとだ」

「親に怒られた話か」

「違う」

Kはグラスを置いた。

「あれから、姉貴、身体のどこかが時々回るって言うんだ」

冗談だと思った。

「どこが」

「決まってないらしい。その日によって違うって」

Kは自分の胸に手を当てた。

「昨日は、ここが回ってたって」

部屋の蛍光灯が一瞬だけ明滅した。

そのとき、俺の視界の端で、Kの肩の線がわずかに歪んだ。

回っているのは、最初から向こうだったのか。

それとも、俺たちだったのか。

あの夜、ライトを消したのは、誰のためだったのか。

[出典:http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/study/9405/1401772436/]

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