知人から聞いた話
友達の宮崎は一階の角部屋に住んでるんだけど、ベランダから柵を乗り越えると裏口への通路になっている。
裏口に続く道みたいのはベランダに面しているので、各部屋のベランダとガラス戸は丸見えになっているが、まあ普通裏口は使わないし、大抵カーテンがかかっているので別に危ないことはない。
んで、ある日布団干しにベランダに出たそうな。
するとなんか変な臭いがする。
なんか子どもの頃に、カブトムシ入れっぱなしにしてたら、死んじゃってた時のひどいバージョンみたいな。
なんか気になってベランダを越えてキョロキョロしてみると、隣のベランダに黒い布をかけた箱があったそうだ。
部屋を見てみるとカーテン閉まってるし、真っ暗だから隣人が居ないと踏んで、ちょっとした好奇心から布をまくってみた(柵越しに)
覗いた瞬間「ヒッ!」って声あげてすぐ布を離したらしい。
宮崎が言うには、なんか黒い塊でたぶん虫がいっぱい入ってた、とのこと。
もぞもぞしてるし、たぶん共食いとかしてたっぽくて気持ち悪かった、と言っていた。
虫飼うの趣味で結局放置しちゃってんかな、とか思ってふとガラス戸を見ると、隣人がカーテンの隙間からこっち見てたらしい。
へへへ、すいません、洗濯物飛んじゃって、とか言い訳したら無言でスッとカーテン閉じられてしまったそうな。
やべーと思って足早に裏口から出て、正門に入って部屋に入ろうとしたら鍵が開かない。
宮崎はベランダから外に出たんだから当たり前。アホである。
また裏口通ってベランダから入ろうとしたら……、隣の部屋から謎の箱消えてるし。
自分が見てたから家の中に入れたんかな?
って思って自分の部屋の柵を越えようとしたら、自分ちのベランダに、例の箱の中身がぶちまけられてたそうな。
ふざけんなよ!扱い切れなくなった虫の死骸を人んちに!と言って宮崎は憤慨していた。
気持ち悪かったんで、大家さんを呼んで片付けていただいたらしい。
一応、隣人のことをそれとなく言ってみたがスルーされ、普通に宮崎も隣人も引っ越していない。
今までどおり近所付き合いも皆無だそうだ。
余談
宮崎に、それ蟲毒(こどく)の呪いかなんかだったんじゃ……
と言ったら、「コドク?独りぼっちの呪い?ってことか?なんじゃそら」と言われた。
説明もめんどかったから、それ以上特に何も言わなかった。
(了)