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こどくな隣人の秘密 r+7819

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友人の宮崎は、アパートの一階角部屋に住んでいる。

彼の部屋のベランダを柵越しに乗り越えると、裏口へと続く細い通路がある。裏口を使う人はほとんどおらず、各部屋のガラス戸にはカーテンが掛かっているため、外から覗かれることもないはずだった。

ある日、宮崎が布団を干そうとベランダに出ると、異様な臭いが漂っていた。それは、子供の頃にカブトムシを飼っていた際、死骸を放置してしまったときの臭いに似ていた。しかし、それよりもさらに強烈で、腐敗したものが発するような、鼻を突く悪臭だった。

気になった宮崎は、ベランダの柵越しに隣を覗いてみた。すると、隣のベランダには黒い布をかけた箱が置かれていた。不審に思い、隣の部屋を見てみると、カーテンは閉め切られ、室内は暗闇に包まれていた。隣人が留守だと踏んだ宮崎は、軽い好奇心から布を少しめくってみた。

その瞬間、思わず「ヒッ!」と声を上げてしまった。

箱の中には、うごめく黒い塊があった。無数の虫が蠢いている。バッタ、ゴキブリ、ムカデのようなものが絡まり合い、共食いをしているようだった。ぎょっとして布を元に戻し、ゾッとした宮崎がふとガラス戸を見上げると、隣人がカーテンの隙間からじっとこちらを見ていた。

慌てた宮崎は「へへへ、すいません、洗濯物飛んじゃって……」と適当に言い訳した。すると隣人は無言のまま、スッとカーテンを閉めた。

嫌な空気を感じた宮崎は、その場を離れようと裏口から建物を出て、正面玄関から部屋に戻ろうとした。しかし、鍵が開かない。自分がベランダから出たのだから当たり前だった。仕方なく、再び裏口を通ってベランダから戻ろうとした。

……しかし、隣のベランダにあったはずの黒い箱は消えていた。

妙に思いつつ自分の部屋へ戻ろうと柵を越えようとした宮崎は、そこで言葉を失った。

自分のベランダに、さっきの箱の中身がぶちまけられていた。

無数の虫の死骸が床を覆い尽くし、まだ生きているものも蠢いている。思わず「ふざけんな!」と叫んだ宮崎は、大家を呼んで片付けてもらった。隣人についてそれとなく話してみたが、大家は特に気にする素振りも見せず、適当に流されてしまった。

その後も、宮崎は何事もなかったかのように住み続け、隣人も相変わらず姿を見せることはなかった。

ーー余談だが、この話を聞いたとき、俺はふと思った。

「それ、蟲毒(こどく)の呪いじゃないか?」

宮崎にそう言うと、「コドク? 独りぼっちの呪い? なんじゃそりゃ」と笑い飛ばされた。

蟲毒とは、密閉した容器の中に大量の毒虫を閉じ込め、共食いをさせ、最後に生き残った一匹を呪術に利用するという、古来より伝わる呪法だ。

あの箱は、まさに蟲毒そのものだったのではないか?

隣人は宮崎が箱を覗いたのを知っていた。そして、その中身をわざわざ宮崎のベランダに撒いた。

もし、それが本当に呪いの儀式だったとしたら……。

宮崎は今も何事もなく暮らしているが、今後、何かが起こるのではないかと考えると、背筋が寒くなるのだった。

(了)

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