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短編 ヒトコワ・ほんとに怖いのは人間

捕獲された少年【ゆっくり朗読】6200

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俺は昔、小学校低学年の頃まで県営住宅に住んでて、よくその県営住宅の同学年の子達5~6人と遊んでた。

その時はRCカーやミニ四駆が流行ってて、ちょっと裕福な子は、RCカーを持ってたので、その子のRCカーを使ってよく県営住宅のエントランスとか共用廊下で遊んでた。

その際に友達や俺の親から

『7Fの東条さんちの前では遊ばないこと。通る時も静かに通りなさい』

と言われていた場所があったのだが、そこの前で少し騒ぐと東条のおばさんに追いかけられるので、子供の俺達にとってはそこはいい度胸試しポイントになっていた。

で、ある日もいつも通りみんなでRCカーを追いかけてキャッキャしてたらガキ大将的ポジションの子が『東条さんちの前の廊下でRCカー走らせてみようぜ』と提案してきた。

みんなはわりと乗り気だったのですぐにやろうとなったが、チキンだった俺は怒られる自分を想像して嫌だなーと内心へこんでいた。

そして結局あれよあれよと事が進み、東条さんちの前をRCカーを走らせながら騒いで走り抜けるという遊びがさっそく決行された。

俺は乗り気ではなかったのでみんなが走る一番後ろを走っていたのだが、これがマズかった。

みんなが声を上げて東条さんの家の前を走り抜けた直後、東条さんちの扉が開き東条さんが猛然と追いかけてきた。

いつもは走って逃げるだけで捕まったりはしなかったのだが、この日は俺の目の前にRCカーを走らせていた子がおり、その子が階段の前でRCカーの回収に手間取り、俺は階段前で停止せざるを得なくなった。

そしてその子が回収し終えて階段を下り始め、よし俺も!と思った矢先、後ろから腕を捕まれた。

「捕まえた」

みたいなことを全くの無表情で言われ、俺はビビって動けなくなってしまった。

動けなかったのは東条さんの表情のせいもあったけど、おばさんは手に包丁を持っていたので、その時は完全に身体が固まってた。

それでおばさんちまで連れ込まれて軽く監禁された。

こっからは記憶があいまいだからあまり詳しい描写は出来ないんだが、連れ込まれてからしばらくは布団だけが四方にうずたかく積み上げられて、日の光が入らない仏間のようなところに閉じ込められた。

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そこで延々と泣いていたら握り飯を一つ渡されて「食え」と言われた記憶がある。

味が全くしなかった。

たかが一つの握り飯を食いきれなくて畳の上においておいた記憶もある。

どれだけの時間がたった時か分からないけど、一度母が東条さんの家に来たらしく玄関から母の声がするなーとぼんやり聞いてた覚えもある。

あと東条さんの家にはもう一人若いお姉さんも一緒に住んでたらしく、母の声を聞いたしばらく後に『もう帰してあげようよ』と東条さんに言っているのをふすま越しに聞いた。

その時はまじでお姉さんが救いの神のように感じた。

で、ここからさらに記憶が飛んで一気に終わりに近づいちゃうんだが、気付いたらおばさんが騒いでる声が聞こえて、後から警察官数人と母が入ってきた。

とにかく助かったっていう気持ちでワンワン泣いたわ。

あの時は何日たっていたのか記憶もあいまいだし、時計もなく日の光もなかったから分からなかったけど、学校の授業がちょっと進んでたのと、しばらくカウンセリングで保健室通うように言われていた点から、数日間は監禁されていたと思われる。

自分としてはもう過去のことなのであまりトラウマでもないし平気なのだが、母にこの話を振るといまだに苦しそうな顔をするので、詳しい話は聞けない。

(了)

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