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旧看護婦寮 r+1724

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これは、とある古びた寮での恐怖体験を語る一人の男性の話である。

数年前、彼がまだ日本に住んでいたころのことだった。就職が決まり、会社の近くに引っ越そうとしたが、家賃が高く、なかなか良い物件が見つからなかった。そこで、食品会社の社長が紹介してくれたのが、取り壊し予定の「元看護婦寮」だった。古いが広々とした寮は、壊されるまでの間なら自由に使って良いと言われ、彼は喜んでそこに住むことに決めた。

初めてその寮を訪れたとき、広い敷地内に静まり返った建物がひっそりと立っていた。壁に走るひび割れが、年月の経過とともに刻まれた「記憶」を感じさせる。埃まみれの廊下を歩きながら、どことなく薄気味悪さを覚えつつも、一人で暮らせる解放感が彼を安堵させていた。

だがその晩、異変が起きた。どこからともなく耳鳴りが聞こえ始め、寝ようと目を閉じても、不気味な重みが体にのしかかり、まともに眠ることができなかった。翌日には友人たちが引越しの手伝いに来る予定だったが、深夜に事故に遭い、引越しは彼一人で行わなければならなくなった。その夜、寮に戻った彼は、得体の知れない圧迫感に胸を押しつぶされ、何かに見つめられている気配に苦しんだ。さらに不気味な気配は日に日に増していき、いつしか胸の上に何かが乗っていることに気づいた。

数日後、ついに彼はその「何か」をはっきりと目撃することとなる。夜中、胸の上に正座をしている髪の長い女と、天井近くに浮かぶ老婆の影。彼らはまるで彼に何かを訴えかけるように、じっと睨みつけていた。その視線の冷たさに耐え切れず、思わず目を瞑った。翌朝、彼の胸には、青黒い四本の指の痕がくっきりと残っていた。

さらに調べると、寮の角部屋にだけ、異様な新しさがあった。日当たりが良く、壁紙や畳もきれいに整えられた部屋だが、畳を剥がすと床には円形に拭かれた痕が浮かび上がっていた。その中心には、何かがこびりついた黒い染み。あれはおそらく、血の痕だったのだろう。彼はその場所から逃げるようにして去り、二度とその寮に戻ることはなかった。

彼はその後、就職も辞退し、寮の存在を自分の記憶から消し去ろうと努めた。そして、ある日ふと「この話はもう過去のこと」と思えるようになり、この体験をこうして記録に残すことを決心した。

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