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短編 r+ 集落・田舎の怖い話

川に棲むもの r+1986

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これは、幼馴染から聞いた話だ。

彼の故郷は、人もまばらな田舎で、夏の遊びといえばもっぱら川遊びだった。地元の川は上流に位置し、急な流れと荒削りな岩場が特徴的で、危険な場所だったが、子供たちにとっては格好の遊び場であり、いわば「度胸試し」の場でもあった。

彼が小学生の頃、この川遊びにはいくつかの「ルール」があった。飛び込みの際には、最高の岩場から飛ぶこと、体を縦にして落ちること、川に入ったら水の流れに逆らわないこと。そしてもう一つ、「水中で目を開けないこと」──誰もがこの四つ目のルールを当然のように守っていたが、理由を知る者はいなかった。

ある年の夏休み、彼の叔父がそのルールの由来を教えてくれた。

叔父の話によれば、三つ目のルールができたのは、叔父の一つ上の代の出来事がきっかけだったという。度胸試しの日、ある少年が川に飛び込んだまま中々浮上してこなかった。心配した仲間が声をかけ始めると、やがて彼はもがきながら水中から這い上がり、息を荒らげながらこう言ったのだ。「川底で『目』を見た」と。

その少年は、誰も見たことのない川底を一目見ようと、水中で無謀にも目を開けた。すると、そこには自分と同じくらいの大きさの『目』が、じっとこちらを見つめていたという。何かに見られている感覚から動けなくなったが、突然体の自由を取り戻し、全身に張り付いた視線を振り払うようにして泳ぎ出た。奇妙なことに、息苦しさは感じなかったという。

翌日、何人かの子供が再び挑んだが、『目』を見た者はいなかった。しかし、目を開けて潜った三人はその夜、急に高熱を出し、数日間病院に担ぎ込まれることとなった。「何かに見られている感覚があった」と後に彼らは語ったが、それが原因で高熱を出したかどうかは誰にも分からない。ただ、それ以来、「水中では目を開けないこと」が度胸試しの掟に加えられたのだった。

叔父の話を聞いた後、彼は久しぶりにその川の岩場へ向かった。水の中から得体の知れない視線が返ってきそうな気がして、思わずぞっとしたという。

思えば、子供たちの誰も川にゴミを捨てることもなく、自然と川に敬意を払うようになっていたのかもしれない。まるで、川の底から何かが見守っていることを本能的に感じ取っていたかのように。

それから彼は、もし子供ができたらその川へ連れて行き、この度胸試しを一緒にしてみたいと密かに思っている。そうすればきっと、川底の『目』がどんな存在かが少しは分かるかもしれない。

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