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奇妙なバイト【ゆっくり朗読】4000

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今勤めているコンビニでバイトしはじめた頃~現在までのお話しです。

604:2016/05/25(水)22:23:08.80ID:/W6ABRRk0.net

店長が気さくな人で、なんでも相談しやすいというか「給料あげちくり~」なんて相談にも乗ってくれたりとか、気のいい人なので「今月だけな。みんなには内緒だぞ」なんて言いながら一万円上乗せしてくれたりする人でした。

私は友人から借りた車をこすってしまい、お金が必要なので給料を上げてほしいと言いました。

店長は「一万円くらいなら……」と言うのですが、七万円くらい欲しかったので、シフトをもっと増やす方向へ話を進めようとしたのですが、学生たちの時間もあるので増やせませんでした。

「じゃあ……」と店長が実家のバイトを紹介してくれました。

内容は船でどっかの島へ行って『シャシャク』という花と『サカキ』という花を大量に持ち帰る事。ただこれだけ。

花と言っても実際は木のような感じでただの葉っぱです。

ちなみにたったこれだけで日給一万円~十万円。

取る量と質と車を運転したかどうかで変わります。

後日、店長に運転してもらい港まで向かいました。

船に乗ったところで一旦お別れ。二時間ほどで現地へ。

何もない無人島でした。

現地につくなり、運転手と私だけだと思っていた船から、やしきたかじんを女にしたようなおばあさんが出てきました。

今回の雇い主だそうで、船の運転手はその旦那さん。

自己紹介が終えたところで仕事の説明がはじまり、仕事の説明はサラっと終わったのですが、注意事項が長くとても怖いものでした。

「上から物が降ってきた時にはキツネではない事を確認して、貸し出すカッターで首を刈る」

「下から何かにつかまれた時は貸し出すカッターで突き刺す」

「私以外の人間が山にいたら、貸し出すタバコに火を点けて歩く」

「獅子の頭が浮遊しているのを見たら怖がらずにおがむ」

「襲ってくるもんは全部殺せ」

「お祓いに行けと言われたら絶対にこっちが定めた祓い屋に行く事」

「お互いを見合わせた時に、キツネのしっぽで目を覆われていると判断したら、首をなでながらそっと剥がし、山に帰す」

「道に迷ったらタバコ吸え」

「ヘビのようなキツネに出くわしたら、正座でおがみたおして通り過ぎるまでおがんで、急いで宝くじ買え」

その時は仕事そっちのけで本土へ宝くじ買いに向かうらしい(笑)

もっとあったような気がするが、覚えているのはこれだけ。

超ビビリながら仕事に取り組んだが何事もなく無事に終了。

次は2週間後に仕事を回すと言われ、自宅についたら玄関の扉を開ける前に塩を頭からかぶれと言い渡され、店長の迎えが来て自宅についてその通りにした。

二週間後は違う島に行きました。

そこでは前回の注意事項はいっさい必要ないとの事。

その日も無事に仕事を終えました。

そこでは大量に花が取れたので、もう目標額にはよゆうで到達していたのですが、店長から

「あの仕事続けたいなら、うちのバイトそっちのけでやってくれてもいいぞ」

と言われたのでシフトを減らして続ける事にしました。

シフトを減らしたのには理由があって、大量に花が取れた日は下山するのに最大で一時間かかるような、道なき山をめちゃくちゃでかい荷物を背負って降りていかなければなりません。

多い日はそれを三往復します。

普通の体力ではやってられないくらいキツイ仕事になります。

やしきたかじん似のばあさんは荷物を持ったりしてくれません。

私が切った木から使える花を選別して袋に詰める専門みたいな役割です。

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一年ほど花摘みを続けた頃に県外の島へ泊まりで行くことになりました。

慰安旅行をかねた船旅ということで、気を使ってくれたやしきたかじんに感謝。

ご飯はうまいし景色も最高で『天然温泉ではありません』というプラカードが貼られた温泉も気持ちよかったです。

しかし楽しいだけというわけにもいかず、仕事はあります。

その日はゆったりと寝て次の日の仕事に備えました。

次の日は雨でした。

この仕事、雨だろうが台風だろうがあります。台風の日はやしきたかじん似のばあさんがが住んでる島で適当に花を摘みます。

その時は日給2,000円です。

島の運送業者に軽トラを借りての仕事でした。やしきたかじんはやることがあるとかで、真っ先に山のてっぺんまで登るというのですが、70近いばあさんを一人にするわけにもいかないのでついていきました。

頂上付近には一体だけポツンと置かれた土偶のようなハニワのような物。

それに向かってやしきたかじんはおがんでいました。

その島は、やしきたかじんが嫁ぐ前に住んでいた生まれ故郷だというのをその場で聞きました。

その土偶のさらに上には祖母が守っていた祠があって、うちは代々巫女の家系だという話をしている途中で、ばあさんは何かに気づいたようで海の方を指さし

「アレ、なんや?」と言いました。

私には何も見えなかったので「え?どれ?」と言いました。

「あの茶色いの!アレなんや?」

私には何も見えません。ですが指差す方向、2kmほど離れたところでしょうか、雨が人の形に避けられているような巨大な何かを確かに見ました。

推定で50mほどの高さに30mほどの横幅の空間だけ雨が降っていないんです。

その物体は動きませんし、特になにをするわけでもなかったのですが3分くらい眺めていたら消えました。

その後は何もなく、普通に仕事に取り掛かって無事に終えました。

宿に戻り、帰るために荷造りしていたらばあさんが、かばんの中にあった数珠をゴミ箱に投げました。

「じゅず投げるとかあかんやろー(笑)」と私が言ったのですが、ばあさんは

「それはわたしのじゃないからな」と言うんです。

以前にもそんな事が故郷へ帰った時にあったらしく、詳しい話は聞けなかったんですが、私がこの仕事をやめる時に数珠の話と、店長がなぜこの仕事をやめたのかを話してくれると言われはや七年。

まだこの仕事を続けています。コンビニのバイトも。

変わったことも多いこの仕事ですが給料は多いし楽しいです。

(了)

[出典:http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/occult/1462242375/]

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