これを書いたら、昔の仲間なら俺が誰だか分かると思う。
ばれたら相当まずい。まだ生きていると知られたら、また探される。
それでも書く。俺が黙っていれば、あの場所は完全に闇に埋もれる。
文章は上手くない。長い。
怪談でもない。
ただ、事実として起きたことだ。
今から数年前、俺は東京で、ある個人に使われていた。
表向きは何の変哲もない仕事だ。花の配達。
ワンボックスで花屋を回り、代金を払い、それをキャバクラや高級クラブに届ける。
帰りに集金する。それだけだ。
だが、金の流れが異常だった。
花屋に払う額の三倍から五倍。
誰も文句は言わない。払えない店は、自然に消える。
警察が介入してくる前に、関係ごと切られる。
俺はその仕事を真面目にやった。
値切らせない。条件を飲まない。
暴力は使わないが、譲らない。
そのやり方が気に入られた。
ある頃から、夜中に呼び出されるようになった。
積み荷は見ない。
車から降りない。
後部は目張りされている。
俺は運転するだけで、前を走るベンツについて行く。
何を運んでいたかは知らない。
知る必要もない。
一度の仕事で、花配達の一か月分以上の金が出た。
ある夜、様子が違った。
呼び出された先にいたのは、いつもと違う顔ぶれだった。
空気が張り詰めていた。
無言の時間が長く、誰も俺を見なかった。
その夜は、後ろに人が乗った。
初めてのことだった。
首都高に入った。
理由は分からない。
トンネルの中で、前のベンツが止まった。
指示されるまま車を寄せ、ライトを落とした。
そこは、柱に囲まれた場所だった。
外からは、ほとんど見えない。
荷物を下ろすよう言われた。
黒い袋だった。
中身は考えないようにしていたが、重さと形で分かった。
金網の扉を開け、さらに奥へ進んだ。
鍵は複数あった。
構造は素人目でも分かるほど厳重だった。
地下に下りる階段。
広い通路。
古い表示。
帝国陸軍第十三号坑道。
現役の施設と、廃棄された名前が混在していた。
説明はなかった。
疑問を口にする空気でもなかった。
途中で袋が暴れた。
顔が見えた。
生きていた。
その後のことは、細かく書かない。
ただ、生きたまま袋に戻され、運ばれた。
さらに奥へ進み、別の表示があった。
帝国陸軍第百二十六号井戸。
部屋の中央に井戸があった。
鉄の蓋。
鎖と滑車。
蓋を開けた。
袋は、そのまま落とされた。
水音はしなかった。
乾いた音だった。
ライトで覗いた。
底は見えた。
袋とは別のものがいた。
数は分からない。
顔の形をしているが、人間ではなかった。
その時、上から声がした。
責任者だった。
蓋を閉めろと言われた。
余計なことを考えるなと言われた。
戻った。
その夜で、仕事は終わった。
数日後、その場にいた人間は全員消えた。

理由は聞かなかった。
俺には連絡が来た。
姿を消せと言われた。
それから、俺は移動を続けている。
人の多い場所を選び、長く留まらない。
この文章は、あるネットカフェで書いている。
接続が切れれば、それで終わりだ。
あの場所が何だったのかは分からない。
今も使われているのかも分からない。
ただ、鍵は存在していた。
管理している人間がいた。
偶然ではない。
ここまで書いた。
それ以上は残さない。
[出典:902:本当にあった怖い名無し:2008/01/21(月)00:52:13ID:wohjQNUp0]