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中編 r+ 山にまつわる怖い話

娘が連れて行かれそうになった話 r+5329

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あらすじ

主人公の男性が、家族で田舎の実家を訪れた際、小学生の娘が犬と共に散歩に出て行方不明になる。捜索後、娘は森の入り口で無事発見されたが、犬は見つからず、娘は「猿に連れて行かれた」と語る。これに実家の父親が反応し、「土地神」の存在を告げる。土地神は動物に憑依し、残虐な行動を取る存在で、猿の姿が頻繁に目撃されるとのことだった。

「寺前さん」という土地神に詳しい女性を呼び、家族と共に対応を相談。土地神から娘を守るため、母親が「代役」を務めることを決意し、儀式を行う。その晩、家の外で異様な鳴き声や現象が発生する中、家族は恐怖に震える。寺前さんの指示で声を出さず耐え、事態は収束。寺前さんは、「二度とこの土地には戻らないように」と忠告した。

その後、主人公が寺前さんを訪ねて聞いた話では、土地神は動物に憑依し腐敗する前に次の器を探す存在で、人間にも危害を及ぼす可能性があるという。現在、娘と妻に異常はなく生活しているが、主人公は山の神秘や恐怖に対する畏怖の念を抱いている。


俺の田舎には“土地神”がいると言われている。

「神様」と言っても、村人たちは決して崇めているわけではない。
むしろ、その存在を恐れ、敬遠していた。
「山を軽んじるなよ。山は山であって、俺たちのものじゃないんだから」
幼い頃、祖父がそう言ったのを覚えている。
でも、都会に出て家庭を築いた俺にとって、それは遠い昔の迷信話だった。

事件が起きたのは、娘が小学校に入学して間もない頃。
久しぶりに家族全員で、俺の実家に帰省したときのことだ。
田舎特有の静けさや、澄んだ空気に癒され、家族全員がリラックスしていた。
娘も久しぶりの祖父母との再会に喜び、庭を走り回っていた。
最初の一日は穏やかで、何事もなかった。

だが、二日目の夕方、娘がいなくなった。
「夕方5時までには戻るように」と伝えていたが、飼い犬と散歩に行ったきり帰ってこなかったのだ。
「ここら辺は人も少ないし、迷うことはないだろう」と油断していた俺が悪かった。
父親は即座に行動を起こし、母と嫁に「近所を当たれ」と指示を出した。
俺と父はトラックに乗り込み、手分けして探すことにした。

村中に声をかけて捜索が始まり、わずか30分後、娘は見つかった。
意外にも簡単だった。
近所の人が「森の入り口の小屋で寝ていた」と教えてくれたのだ。
その言葉に、俺は一気に胸をなでおろした。
しかし、娘と一緒だったはずの飼い犬だけは見つからなかった。

娘を抱きしめる嫁を見て、俺も安堵したが、その後の話が全てを変えた。
娘を叱りつけるつもりだった俺の前で、嫁が優しく問いかけた。

「ちーちゃん、なんであんなところで寝てたの?」
「うーん……わかんない」
「ワンコは?」
「お猿さんが連れて行った」

その瞬間、空気が凍りついた。
親父も母親も、俺たち家族以外の手伝いに来てくれていた人たちも、動きを止めた。

「お猿さん?」
「うん。お猿さんとワンコと遊んでた」

親父が、何かに取り憑かれたように娘に質問を浴びせ始めた。
「どんな姿やった!? 鳴き声は? 触ったか!?」
「おいおいおい!」
俺は思わず親父を制止しようとしたが、その顔は真剣そのものだった。
娘は怯えた様子で嫁の腕に飛び込んだ。

「アレが出よったかもしれん……寺前さんを呼べ」
親父が言うと、母親が慌ててどこかに電話をかけ始めた。

親父が猟銃を取り出し、塩と酒を家中に撒きながら言う。
「この土地には、昔から“土地神”がいると言われてる。そいつは神様っていうより化け物に近い。猿や猪に憑依し、他の動物を襲い臓物を喰らう。人間も例外じゃない……。ここ最近、出なくなったと思ったのに……」

正直、この時点で俺は親父が何を言っているのかわからず、ただ呆然としていた。
嫁も困惑し、娘を抱きしめながら泣きそうな顔をしていた。

30分後、寺前さんという女性が到着した。
品のある年配女性で、スーツを着こなし、落ち着いた雰囲気を漂わせていた。
しかし、その眼差しは鋭く、どこか人間離れした迫力を感じさせた。

「状況はわかりました。おそらく“アレ”ですね。幸いなことに、娘さんは直接触れてはいないようですが、安心はできません」
「娘は助かるんですか?」
「ええ。ただし条件があります。」

寺前さんは、娘の髪を切り分け、嫁の髪の毛と合わせて小さな袋に入れた。
「変わり身を作ります。これがなければ娘さんは無事では済まないでしょう。」
この説明に、俺は正直なところ胡散臭さを感じた。
しかし、普段冷静な嫁が真剣な表情で頷き、協力する様子に背中を押された。

深夜、異変が起きた。
「うぉもーす……うぉもーす……」
どこからともなく聞こえてくる低い唸り声。
その声が徐々に家に近づいてくると、寺前さんは低い声で言った。
「誰も口を開かないでください。娘さんの口も塞いでください。」

玄関先で鳴り声が止まり、「開けてー、あけてぇー」と楽しそうな声が繰り返し聞こえた。
その声に混じり、赤ん坊のような泣き声が響く。
俺は恐怖で震え、ただ玄関を見つめるしかなかった。

突然、家が静かになった。
「どうやら行ったようですね……」寺前さんが呟く。
彼女の言葉にようやく息をついたが、娘のことを思うと胸が締め付けられた。

それ以来、俺たちは実家には帰っていない。
しかし娘は時折、「お猿さんが遊ぼうって言ってる」と呟く。
そのたびに俺は、あの夜の恐怖が蘇り、身の毛がよだつのだ。

[出典:1 :名も無き被検体774号+:2012/09/24(月) 19:27:03.21 ID:vHQ+gBM/0]

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