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薄暗い道に現れた母の影 r+3529

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これは、友人から聞いた話だ。

彼の弟は、まだ小学生だったある日、下校途中でひき逃げに遭った。誰もが薄暗い夕方の小道に突然現れた車のスピードに驚いたが、あまりに一瞬の出来事で、現場にいた者たちは声も出せなかったという。現場にいた目撃者たちの話を聞くと、運転していたのは30代か40代くらいの女性だったらしい。弟が轢かれた後、彼女は驚いた様子で車を止め、ドアを開けて出てきたが、すぐに逃げ去る様子でもなかった。

その女は、まるで何かを確認するように弟の体にしゃがみ込み、彼の体のあちこちを撫でるように手で触れていたらしい。まぶたの辺りや、頭や腕、足……、事故直後の恐怖に凍り付いていた目撃者たちは、その様子にますます奇妙な印象を受けたという。そして、彼女は「ごめんね」と小さくつぶやくと、何事もなかったかのように再び車に乗り込み、すぐにエンジンをかけて去ってしまったのだ。

弟はそのまま救急車で運ばれ、近くの病院で精密な診察を受けることになった。幸い、命に別状はなく意識もあったが、医師は彼の体の状態を見て奇妙なことを口にした。「骨折した痕跡があるが、骨自体はしっかりと正しい位置に収まっている。しかし……」医師が気味悪そうに首をかしげながら続ける。「特に顔の目の周りの筋肉や脂肪がズレていて、まるで何か下手くそな手術でも施されたかのような歪みがあるんだ」

それだけではなかった。弟の体にはひどい擦り傷が無数にあったが、そのすべてが不自然なほど清潔に保たれており、傷口には砂や泥の痕跡が一切なかったという。普通ならば路上で擦れた傷は汚れで染み付き、簡単には消えないはずだが、弟の傷はまるで誰かが丁寧に洗い流し、消毒でもしたかのようだった。それでも、血液が皮下に溜まっているかのように見える部分が体のあちこちにあり、皮膚の下にできた出血の痕が異様な形で残っていた。

事故当日に救急処置を担当した救急隊員も、こうした症状に困惑していたようで、病院のスタッフと何度も意見を交わし、「この子は、いったい現場で何があったんですか?」と、妙な疑問を投げかけてきたという。しかし、目撃者たちが見たのは、ただあの女が弟をしばらく撫で、謝罪の言葉を残して立ち去った場面だけだった。

数日間の入院で弟は無事に回復し、体の痕跡も次第に消えていったが、いくつかの不可解な疑問が残った。あの女はなぜ、その場で謝罪の言葉だけを残して去っていったのか。そして、あの異常な「治癒」のような痕跡は何だったのか。

事故後の捜査は進み、警察も目撃情報を頼りにあの女の足取りを追っていたが、肝心の車のナンバーも特定できず、身元もわからなかったため、結局犯人は捕まらなかった。

ただ、後日、この一連の出来事を調べていた警察が興味深い話を持ち帰ってきた。事故現場近くの住宅街にかつて住んでいた「ミキ」という女性についての噂だ。20年ほど前、当時まだ若い母親だった彼女が車で事故を起こし、幼い我が子を不幸にも失ってしまったという。その日以来、彼女は心を病み、息子の姿を幻視するようになったらしい。彼女は常に車を運転しながら、まるで誰かを探し求めるかのように、子供の姿を探していたと聞く。

事故からしばらく後、再び現場に現れた彼女の車が目撃され、薄暗い道端に佇む彼女の姿を見た人がいたという。しかし、周囲に声をかけられると、彼女はすぐに車に乗り込み、夜の闇の中へ消えていったそうだ。

弟の身に起こった不思議な「治癒」の痕跡や、あの時現場で彼を撫で続けたというあの女性は、果たしてこの「ミキ」だったのだろうか。

その答えは、今も誰も知らないままだ。

[出典:822 :本当にあった怖い名無し:2011/10/08(土) 23:27:45.06 ID:ixs3+wQ60]

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