短編 洒落にならない怖い話

殺人者の告白【ゆっくり朗読】4850

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俺の親戚に元刑務官って人がいる。

その人が言うには、刑務官の仕事というのは受刑者を監視する事じゃなくて、

『受刑者に人の温かみを教える』のが本当の仕事らしい。

そんな叔父は時間があれば、受刑者の話を聞いていた。

話す内容のほとんどは、受刑者の犯した罪についてがダントツで、

自首した受刑者なんかは、どうして自首するにいたったかを話すらしい。

その中で、特に印象に残った話。

その受刑者をAとして話を進めます。

Aは元々は普通のサラリーマン。

その彼が刑務所にいる理由は殺人。

殺害されたのはこの人の奥さんで、殺害後、遺体の処理に困ったAは自宅の冷蔵庫にバラバラにした奥さんを保存していた。

会社から帰ってくると、冷蔵庫から身体を一部を出し、肉は細かく切り、骨はミキサーで粉々にして、部屋のトイレから流していった。

そんな日々が何日か続いて、身体のほとんどがトイレから流れていった。

最後に残ったのが頭部で、やはりこれを細かく刻むのに踏ん切りがつかなかったらしい。

頭部だけが冷蔵庫に残された状態が、何日か続いたある日、Aは夢を見た。

その夢の中で、殺した奥さんが部屋のテーブルにうつむいて座っている。

かなり深くうつむいているらしく、表情はうかがえない。

でも、テーブルに置かれた手が、カタカタと左右に震えていた。

次第にその震えかたが素早くなっていき、爪が、そして指がテーブルの周りに飛散しはじめた。

みるみる内に肘から先がなくなり、ちぎれた腕からは真っ赤な血がほとばしり、骨がカタカタとテーブルを叩いていた。

そこで目が覚めたAは全身を汗でべっとりと濡らし、あまりのショックに身動きが取れなかった。

ようやく落ち着き、リビングへと向かう。

すると冷蔵庫が少し開いておりそこから首だけの奥さんが睨みつけていた。

驚いたAは冷蔵庫と閉じ、扉をガムテープで閉じた。

この時にはまだ、Aは自首を考えなかったらしい。

その日、冷蔵庫の中にある頭部の処理に手つかずのAは、仕方なく新しい冷蔵庫を購入することにした。

一人用の小さい冷蔵庫なので、店からの配達は頼まず持ち帰ったので、ガムテープ付きの冷蔵庫の存在がおおやけになることはなかった。

その日の夢も同じ場所で奥さんが座っていた。

違ったのは昨日の終わった時点から夢が始まっていること。

テーブルについている奥さんの腕からは真っ赤な血がしたたっている。

今度は足が床を蹴っていた。

その動きが激しくなり、床をける音も

『ドン・ドン・ドン・ドン・ドンドンドンドンドドドドドドドド!!』

と激しくなっていく。

次第に床に血がにじみはじめ、足の肉が飛散しはじめる。

テーブルの上では、腕が振り回され血をまき散らしている。

Aの頬にも血が飛んでくるが、身動き一つ取れずにその光景を見ている。

頭の中では「はやく目覚めてくれ」と叫んでいたが、夢が終わることがなかった。

部屋中に飛び散った血がいやらしく光っていた。

突然、四肢が動きを止めたと思うと、うつむいていた顔が少しずつ上がりはじめた。

垂れていた前髪が頬にへばりついていく。

髪の隙間からは、上目遣いでAを睨む目が見える。

顔が完全に上がったとき

「ああああぁぁぁぁぁぁぁっ、私の、からだを、返せぇぇぇぇぇぇぇ」

と絶叫が響いた。

この声にAはようやく目を覚ますことができた。

やはり全身に汗をかいていた。

この時、Aは冷蔵庫にある頭部の処理をしようと腹をくくったらしい。

ベッドから飛び出し冷蔵庫の前に行くと、その気持ちが完全に消えた。

あれほど頑丈に止めていたガムテープが全て千切れ、奥さんの頭部が冷蔵庫から転げ落ちていた。

その目は見開かれ、Aを睨みつけていた。

ここでAは逃げられないと観念したらしく、自首したそうだ。

叔父曰く

「殺された方の無念はいつまでも生きてるもんだ……」

(了)

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