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【語り継がれる怖い話】カン、カン……【前編・後編】r+5702

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あらすじ

主人公が幼少期に家族と暮らしていたアパートで経験した不可解な出来事が物語の発端。消灯後、金属音に誘われた主人公と姉が目撃した白い着物姿の女性。以降、家族には異常な現象が繰り返し発生する。姉は絶交状態となり、母親は夜中に奇行を繰り返すようになる。年月を経ても恐怖は消えず、呪いの根源と思われる存在との接触が主人公や家族の精神に深刻な影響を及ぼしている。現状打開のため、アパートの引き払いを検討するも……


私は幼い頃に経験した恐ろしい出来事を話そうと思う。

小学生の時、私は母、姉、妹と共に小さなアパートに住んでいた。家族で畳の部屋に布団を並べて寝る、どこにでもあるような家庭だった。

ある夜、母が体調を崩し、私が消灯を任されることになった。家中の電気を消し終えた後、布団に潜り込んだが、普段より早い就寝だったせいか眠れなかった。天井をぼんやりと眺めていると、突然「カン、カン……」という奇妙な音が響いた。

音の正体が分からず身を起こしたが、部屋には何もいない。再び音が鳴り、今度は居間からのようだった。隣に寝ていた姉も「今の音、聞こえた?」と囁く。空耳ではないらしい。

音の正体を確かめようと、姉と一緒に寝室を出て居間に向かった。キッチンの陰からそっと覗くと、居間のテーブルの上に何かがいた。それは長い髪を持ち、白い浴衣のような着物を纏った女だった。彼女は背筋を伸ばして正座し、背中だけをこちらに向けて動かない。

恐怖で体が震える中、私は耐え切れずに叫び声を上げ、寝室へ逃げ込んだ。母を叩き起こし、「居間に人がいる!」と泣き叫んだ。

しかし、母と姉と居間に戻ると、その女の姿は跡形もなく消えていた。テーブルの上には何もない。ただ、姉は無言でテーブルを見つめており、その目は虚ろだった。母の問いに姉は「女の人がいた」とだけ答え、何事もなかったかのように寝室に戻った。

翌日、姉に再度問いかけても、彼女はほとんど何も語らず、ただ小さな声でこう呟いた。
「あんたが大きな声を出したから……」

その日を境に、姉は私に冷たくなり、二人の関係はぎくしゃくしたまま月日が流れた。

再び現れた「音」

中学生になった頃、私は受験勉強に励みながらも、あの夜の出来事を徐々に忘れつつあった。姉は県外の高校に進学し、家族との距離ができた。そんなある晩、机に向かっていると、微かな「カン、カン……」という音が聞こえた。

居間で聞いたあの音と同じだった。恐怖が蘇り、私は隣の部屋で寝ている妹を起こそうとしたが反応がない。家族全員が眠っている中、音はさらに近づいてくるように感じた。

ついに扉の向こうに音の発信源があると確信し、震える手で扉を開けた。暗闇の中、居間には淡い月明かりが差し込んでいた。そして、テーブルの上にまたあの女がいた。

あの時と同じ白い着物、同じ正座の姿勢。今度は女からはっきりと「カン、カン……」という音が聞こえてきた。

私が声を上げた瞬間、女はゆっくりと振り返った。目には大きな鉄釘が刺さり、口元には不気味な笑みが浮かんでいた。そしてこう言った。
「あなたも……あなた達家族もお終いね」

気がつけば私は自分のベッドに横たわっていた。しかし、家族に昨夜のことを尋ねても誰も知らないという。妹に至っては、「寝ぼけてただけでしょ」と笑う始末だった。

家族の異変

その日の夕方、学校から帰ると家は真っ暗で、誰もいないように思えた。玄関を開けた瞬間、「カン、カン……」という音が再び聞こえ、私は恐怖のあまり家を飛び出した。

スーパーで母を探し回った後、家に電話を掛けてみると、母の声が応答した。だが、居間にしかない電話を母が取れるはずがない。それでも確かに聞こえる母の声に、私は混乱と恐怖を覚え、震える声で訊ねた。
「あなたは、誰なの?」
すると、受話器の向こうから乾いた笑い声と共にこう返された。
「あなたのお母さんよ。ふふふ」

現在の私

あれから8年が経過し、私は大学に通いながら一人暮らしをしている。実家には母と妹が住んでおり、姉は遠方で働いている。母からの帰省の誘いを断り続けていたが、今年は父や姉も集まると聞き、しぶしぶ実家に戻った。

母は元気そうだったが、姉が思いがけないことを告げた。
「あんたのこと無視しててごめん」

驚く私に、姉は続けた。
「あの音、うちでも聞こえたの」

姉の告白

姉の話は衝撃的だった。彼女の住む家でも、あの「カン、カン」という音が聞こえたのだという。

「その日は夜遅くに仕事から帰ってきて、部屋でテレビを見てたの。そしたら、風呂場の方からカン、カンって聞こえたんだ。子どもの頃に聞いたあの音だって、すぐ分かったよ」

姉は恐怖に駆られ、急いで部屋を飛び出し、近くに住む同僚の家に逃げ込んだ。その後も、同僚の家にいる間に風呂場の方から同じ音が聞こえたという。

「結局、警察も呼んで家を調べてもらったけど、何も見つからなかった。でも……確かに聞こえたんだよ、あの音が」

姉の話を聞くうち、私は8年前の記憶が鮮明に蘇ってきた。真っ暗な居間、テーブルの上に座る白い着物の女、不気味な金属音……。

ただ、姉の話には8年前とは違う点もあった。姉は「白い着物の女」を見たわけではなく、ただ音だけが聞こえたという。しかも、音の発生源は居間ではなく風呂場だった。

「それ、本当にアレだったのかな?」
そう問いかけようとした瞬間、姉は突然泣き出した。

母の異常な行動

姉を慰めようとした私に、彼女は涙ながらに言った。
「あんた、お母さんのこと、美香(妹)から聞いてないの?」

母に何かあったのかと問い返すと、姉は少し躊躇した後でこう言った。
「時々、夜中に家をこっそり出て行ってるんだって。詳しいことは美香に聞いて」

その話を聞き、私はすぐ妹に確認しに行った。妹はあっさりと認め、さらにこう提案してきた。
「本当に見たいなら、今夜一緒に見ようよ」

母の異様な姿

夜中の1時過ぎ、妹と共に母の動向を見張っていると、母が玄関に現れた。ブーツを履き、鍵を持つこともなく、無言で外に出て行った。

私たちはそっと後を追った。家から少し離れた電柱の下、街灯に照らされた母は、信じられないような行動をしていた。

母は電柱の周りを異様な速さでぐるぐると回り続けていたのだ。顔は般若のような険しい形相で、昼間の優しい母の面影はどこにもなかった。

妹が「あと10分くらいで終わるから、帰ろう」と言ったが、私はその場に立ち尽くし、動けなくなっていた。

居間で再び

家に戻った私は、母の行動の異様さにショックを受けながらも、現実感を持てないでいた。居間に明かりをつけようと手探りでスイッチを探し当てた瞬間、「カン、カン……」という音が耳元で響いた。

咄嗟にスイッチを押し、居間を明るくすると、そこにはまたあの女がいた。テーブルの上で背筋を伸ばして正座している姿は変わらない。

私は言葉を失い、ただスイッチを切るようにして居間を再び暗闇に戻した。その瞬間、玄関の方からガチャリとドアが開く音がした。

妹が帰ってきたのかと思ったが、振り返ることはできなかった。廊下から聞こえる足音と、居間で鳴り続ける「カン、カン」という音が重なり、全身が震えた。

その直後、背後にいた何者かに肩を掴まれた感触を覚えた。次に目を覚ますと、私は姉の部屋で横になっていた。

母の謎、そして呪いの再来

翌日、妹に話を聞くと、母はまだ帰ってきておらず、誰も私を起こしたり肩を掴んだりしていないという。

さらに妹は、母の奇行は未だに続いており、これまでに何度も精神科に相談したり、お祓いを受けたりしたが効果はなかったと話してくれた。

その話を聞いた時、私の中である確信が芽生えた。
「あの女のせいだ」

あの女が現れて以来、家族の周囲で起こる異常な出来事の全てが繋がっているように思えた。

妹も姉も、そして母も何らかの形でその影響を受けている。あの「カン、カン」という音、不気味な白い女、母の深夜の行動……すべてはあの時の呪いの続きなのだ。

恐怖と不安を抱えながらも、私は家族と相談し、この家を引き払う準備を進めることを決めた。あの女が放った「家族がお終い」という言葉が、これ以上現実にならないようにするためにも。

それでも、家族全員がこの呪いから逃れられるのかどうかは分からない。だが、私にできることは、少しでも早く安全な場所に移ることだけだった。

(了)

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