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子どもたちは、風の中からやってきた r+3,487

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職場の休憩室で、何気ない流れから自分の過去の話をすることになった。

子どもの話。ちょっと不思議で、でも妙に納得がいく話たち。いま思い返せば、あれは「始まり」だったのかもしれない。

私は四十代の女性で、三人の子どもがいる。七歳の長男、六歳の長女、そして四歳の次女。いずれの妊娠・出産にも、言葉では説明できない何かがあった。

……

最初に「違和感」に気づいたのは、末っ子がまだ生まれていなかった頃。あれはたしか四年前、上の二人が三歳と二歳で、私はリビングでテレビをつけながら横になっていた。二人は家の中を元気に走り回っていて、その様子はいつものことだから、特に気にも留めていなかった。

しばらくして、うとうとと眠ってしまった。ほんの数秒だったと思う。だけどその一瞬のまどろみの中で、私は「これ、知ってる」と強烈な既視感に襲われた。

十年ほど前、独身で地方に出張していた頃のことだ。まだ結婚もしておらず、あの頃は毎日が徹夜のようなものだった。週末にはたった一人のアパートで、まとめて食事を作っては、どっと疲れて倒れ込むように寝ていた。

その日も同じように、リビングでまどろんでいた。すると、どこからか子どもの声が聞こえてきた。キャッキャと無邪気に笑い合う声。開け放した窓の向こうで、近所の子どもたちが遊んでいるのかと最初は思った。

でも、よく聞くと部屋の中……自分のすぐそばから聞こえている。二人か三人、間違いなく複数の声だった。けれど、私は一人暮らし。鍵もかけていた。なのに、子どもたちが楽しそうに走り回る足音と笑い声が、私の耳のすぐ横で響いていた。

不思議なことに、怖くはなかった。体が動かなかったのは確かだけれど、金縛りのような嫌悪感や恐怖ではなかった。なんというか、懐かしさと安心感があった。目を開けた瞬間、すべての音が消えた。でも、あの感覚だけは鮮明に残った。

――あれは、まだ生まれていなかった私の子どもたちの声だったんじゃないか。

そんな突拍子もないことを考えたのは、今の生活の中で再び「同じ音」を聞いたからだ。三歳と二歳だった上の子たちが、私のまわりで走り回っていた、あの時とまったく同じ音。それが、記憶の奥底からあの日の幻を引きずり出してきた。

……

次に不思議なことがあったのは、末っ子を授かる直前だった。私は子宮内膜症を患っていて、妊娠以外の薬は効かず、医者からは「もう排卵を止める薬を使った方がいい」と言われていた。

三人目の子どもが欲しかった私は、必死で耐えていた。けれど、もう限界だった。毎月、二週間近く痛みに耐え、何の希望もないまま薬を飲み続ける生活は、あまりにも消耗する。

夫と相談して、「もう諦めよう」と決めた日の夜。眠りにつくほんの直前、私は夢とも覚醒ともつかない状態で、これまでにない幸福感に包まれた。身体のすみずみにまでしみわたるような、多幸感。言葉にはできないけれど、はっきりと「赤ちゃんが来た」と思った。

その感覚のまま目覚めた朝、夫と顔を見合わせて笑った。「きっと誰かに赤ちゃんができたんだね」「いい夢だったね」と。

それから一週間後、妊娠が判明した。あれほど薬も効かず、計算も合わなかったのに。不思議としか言いようがなかった。「来るべくして来た子」――今ではそう思っている。

……

最後に、長女の話をしたい。ある日、彼女が五歳の頃、突然こんなことを言い出した。

「ママを選んだのはね、やさしくて可愛かったからだよ」

私は笑った。「優しくなんてないけどねぇ、残念だったね!」

すると彼女はまっすぐな目で、こう続けた。

「でもね、マミはね、一回じゃわからないことがたくさんあるの。だから、いっぱい教えてくれるママのところに来たの。怒りながらでも、ちゃんと教えてくれるから」

五歳の口から出たとは思えないような、妙に大人びた言葉だった。私は高齢出産だったし、いつか自分が先にいなくなることを考えると、つい厳しくしてしまう。だけど、そんな自分を「選んで来た」と言われたら、涙がこぼれそうになった。

彼女はさらに言った。

「雲の上で遊んでいたの。兄妹も一緒だったよ。先生みたいな人はいなかったけど、みんなで“いつ行く?”って決めてた。やっと来れた時、ママに“ありがとう”って言ったの」

私は信じたいと思った。子どもたちはどこかで、すでに出会っていたんだと。

……

三つの出来事を、こうして書いてみて気づいた。もしかすると、子どもたちは「来るべくして来た魂」だったのかもしれない。そして私は、それを「迎える」ためにここにいるんじゃないかと。

不思議なことは、まだ終わっていないのかもしれない。

(了)

[出典:800 :本当にあった怖い名無し:2015/05/10(日) 06:25:49.43 ID:qBFYWh2c0.net]

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