短編 ほんのり怖い話

封印された地下世界【ゆっくり朗読】3000

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昔、エレベーターの点検員をしていた時の話。

2009/04/03(金) 09:11:11 ID:izdGgRdHO

駅前のお客の雑居ビルに、先輩と二人で向かった。

とりあえず管理人に挨拶して、各階のドア前に点検中の表示札を貼って点検開始。

ピット(空洞)内の底面に入って掃除するために、エレベーターの箱を二階に移動させた。

ところが、扉を開けてびっくり。

底面がはるか下にあるのだ。

通常なら底面は扉を開けてすぐ下にある。

その雑居ビルは八階建てで、エレベーター箱内のボタンは一階から八階まで計八つ。

俺はてっきり地下がないと思い込んでいたのだ。

もちろん、エレベーター以外に階段などもない。

だがその建物は地下二階まであった。

先輩は俺を驚かせようとしたみたいで、何も言わなかった。

エレベーター箱内の操作盤の下には鍵穴が付いて、開けられるようになっており、点検する時は、点検員しか持っていない鍵でそこを開ける。

そこには、手動でエレベーターを上げ下げできるスイッチが付いている。

安全のため超スロースピードでしか動かないようになっている。

本来、ボタンがない地下一階と地下二階に行く方法は、その点検用ボタンを押して行くしかないのだ。

そして、ボタンを押して地下二階まで下がって行った。

地下二階は異常にひんやりしていて、地下なので窓などもちろんなし、文字どおりなにも見えない真の暗闇。

地上の他のテナントが入って人がたくさんいるフロアとはうってかわり、ライトで照らすと、コンクリートむき出しの異様な雰囲気だった。

通常はエレベーターを一人が地下一階に上げ、もう一人が地下二階に残り、扉を開けピットを掃除するのだが、先輩は勘弁してくれた。

どうせ管理人にわからないし、流石に気味悪すぎて、みんなやらないらしい……

俺もわずか時間でもあの空間に取り残されるのは勘弁だ。

なぜ地下一階と二階の有効なスペースを整備してテナントに使わないのか?

エレベーターに地下一階と二階のボタンを付けないのか……?

実は工事途中に事故があって、地上から下は封印されていた。

階段もビルの経営者が埋めてしまったらしい。

だから取り残されたら脱出不可能。

エレベーター呼びボタンは回路切ってある・階段ない・携帯圏外。

そもそも一般人は地下の存在すら知らないし、ミイラになるまで取り残されるかもしれん……

あんな場所犯罪に使われたら……

都内の繁華街の駅前の、何の変哲もない雑居ビル。

賑わった地上と裏腹に、こんな誰も知らない地下世界があると思い出すと、今でもゾッととする。

(了)

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