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付き合ってた彼は七年前に死んでた rw+3,367-0203

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あの人の声が、今でも耳の奥に残っている。

「俺を裏切った元カノはみんな不幸になってるんだ」

そう言って、彼は笑った。冗談めいた調子だったが、目だけが妙に乾いていた。

「前の前の彼女は、母親が死んだ。その次のやつは、親父が借金残して自殺してさ。今は風俗らしいよ」

自慢話のような口ぶりだった。私は一瞬、脅されているのかと思ったが、適当に笑って流した。深く突っ込むのが怖かった。

しばらくして、ある夜。
彼は急に真顔になり、独り言のように言った。

「俺、人殺してんだよ」

冗談だと思いたかった。でも、そのときの沈黙の重さは、冗談の空気ではなかった。
話を聞くと、中学の頃、無免許でバイクを運転し、後ろに乗せていた彼女を事故で死なせたという。凍った道でスリップし、彼女は頭を打って即死だったらしい。

「そのあと何度も、あいつが止めに来た。死ぬなって」

淡々と語る声に、感情はなかった。

私は、なぜか必死になって言った。

「でも、もう大丈夫。私は死なないよ」

今思えば、あまりに不自然な台詞だった。彼を慰めたつもりだったが、あれは誰に向けた言葉だったのか、自分でもわからない。

交際は二年続いた。
私の家族にも紹介した。彼は礼儀正しく、愛想も良かったはずだ。少なくとも、私はそう思っていた。

彼の家族には会ったことがない。ただ、電話越しに声を聞いたことは何度かあった。彼の実家の住所も知っていた。
彼の親戚が、私の実家の近くに住んでいると知ったとき、私は運命じみたものを感じていた。

終わりは唐突だった。

彼が関東の大学に合格し、遠距離が始まった直後、連絡が途絶えた。
電話は繋がらず、メールも返ってこない。

泣いたあと、私は妙な衝動に駆られた。
彼を困らせたい。苦しめたい。

思いついたのは、最低な悪ふざけだった。
死亡通知のはがきを作り、「別れを苦にして私が自殺した」という筋書きで送りつける。

私はそれを実行した。

数日後、母が無造作に言った。

「あんた、これ何?」

差し出されたのは、その死亡通知だった。
差出人は私。宛先不明で、実家に戻ってきていた。

おかしい。住所は間違えていない。以前、彼に手紙を送ったときは届いていた。

混乱している私に、母は続けた。

「ねえ、あんた。この人と付き合ってたの?」

「何言ってるの。二回も家に来たじゃん」

母は首を振った。

「誰の話? うちは誰も、そんな人に会ってない」

その瞬間、背中を冷たいものが流れ落ちた。

冗談だと思いたかった。でも、母の表情は本気だった。

それからだ。
何かが、少しずつ崩れ始めた。

彼と写っているはずの写真を見返すと、顔だけが曖昧だった。輪郭が合わない。
それでも記憶はある。手をつないだ道。川沿いのベンチ。春先の、焼けた草の匂い。

なのに、家族には彼の記憶がない。
手紙は届かず、痕跡だけが空回りしている。

私は、現実のほうがおかしいのではないかと思い始めていた。

ある夜、知人と飲んでいる席で、彼の話をした。
事故で元恋人を死なせたという話を、何気なく口にしたとき、近くにいた店員が言った。

「それ、本当にあった話ですか」

妙に引っかかる言い方だった。

翌日、私は図書館へ行った。
彼が「命日」だと言っていた十二月の日付を中心に、新聞をめくった。

事故の記事は、すぐに見つかった。

無免許の中学生が運転するバイクがスリップ事故を起こし、運転していた男子生徒が死亡。後部座席の女子生徒は、意識不明の重体。

……話が違う。

死んだのは、彼のほうだった。

名前を見て、息が止まった。
誠司。彼が名乗っていた名前と一致していた。

私は混乱した。
学生証を思い出した。確かに、彼は誠司だった。だが、それが本物だった保証はない。

彼が彼である証拠は、どこにもなかった。

思い切って、彼の実家に電話をかけた。
女性の声が出た。私は昔の同級生を名乗った。

「誠司くんと連絡を取りたくて」

少しの沈黙のあと、その声は静かに言った。

「ありがとう。でも……誠司は、もういないの。七年前に亡くなったわ」

その声は、覚えがあった。
私は確かに、以前もこの声を聞いている。

じゃあ、私は誰と話していたのだろう。

親戚の件を思い出し、母に確認してもらった。

「ああ、確かに誠司って子はいたよ。でもね、もうずいぶん前に亡くなってる」

私は携帯の写真を見つめた。
彼の顔を、中学の同級生に見せた。

「……見たことある気はする。でも、違う気もする」

彼は写真から目を逸らした。

今でも、その写真は残っている。
でも、そこに写っている顔が、誰だったのかはわからない。

あの二年間、私は誰と付き合っていたのか。

彼は言っていた。

「俺、人殺してんだよ」

あれは過去形じゃなかったのかもしれない。
あるいは、彼自身が誰かを殺し、その誰かとして生きていたのか。

それとも──
あのとき、確かに死んだのは、最初から私のほうだったのだろうか。

[出典:357:本当にあった怖い名無し New! 2006/07/02(日)22:18:36ID:ahDwViLx0]

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