短編 家系にまつわる怖い話

苗字の由来【ゆっくり朗読】9300

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自分の苗字由来の話。

田舎の方に行くと、地域に同じ苗字の家が密集してる集落なんてのは割とよくあると思う。

で俺の住んでた地域も二、三種類の苗字が大半を占めていてました。

俺の苗字は『末吉』です。

よく『すえきち』と呼ばれますが『すえよし』です。

九州の方に割と多い苗字みたいですが、九州出身ではないです。

ほんで、周りの家は同じ苗字ばっかりなのに自分んちだけ末吉。

小さい頃は郵便物が間違えて配達されたりせんで便利だなーとか、割と最近になって引っ越してきたんかなー?ぐらいにしか思っていなかった。

中学の頃、苗字の由来に関するテレビ番組を見た俺は、じぃちゃんに

「うちの苗字に由来とかあるん?」って何の気なしに聞いてみました。

するとじぃちゃんは何故か少し困った様な顔をしました。

そしてしばらく考えた後、「お前にも関係のある話だから……」と少しずつ話し始めました。

昔々、まだ農民が苗字を持っていなかった頃。

住んでいる集落は山間部のため農作物の育ちは悪いが、自分たちが食っていく分ぐらいは何とかなっていたらしい。

しかしある年から凶作が続き、次第に飢餓で亡くなる者も出てくるようになった。

そこで集落の人達は藁にもすがる思いで祈祷師に豊作の祈願をしてもらうことにした。

その祈祷師は豊作を望むのなら、

「この集落で家で嫡子となる子が生まれたら、その子の首をはね、体を集落にある一番高い木のできるだけ木の高いところへくくりつけ、頭は根元の土を掘り埋めなさい」

と集落の人々に告げた。

そして祈祷師は続けて、

「一度始めるとその家系は代々嫡子を生贄にしなければ再び凶作になるので、途中でやめてはならない」

と警告をした。

その後、間もなくして嫡子が生まれたのが我が家の先祖様、という訳らしい。

ご先祖様は当然最初は渋っていたらしいが、集落の人達からの説得もあって渋々承諾したようです。

そして翌年、今までになく豊作となった集落はその後、飢餓で亡くなる者もなかった。

またご先祖様夫婦にも新しく子供もでき、集落の人達から感謝されながら暮らしたそうだ。

しかし、その夫婦の嫡子(二人目の男子)も結婚し、嫁が妊娠した頃、祈祷師が再びやってきて、集落の人達に

「忘れてはいないだろうな、代々続けなければならん」

と伝えた。

そして、そのご先祖様夫婦も集落の人達に説得され、生まれてきた嫡子の首をはね生贄として体を木に吊るし、頭を埋めた。

その後、何代もこの生贄は続いたらしいが、幸か不幸か家系は途絶えることはなかった。

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そして何代か後のご先祖様の頃、この生贄を止めようと言う人があらわれた。

集落の人々はなんとか説得して続けさせようとしたが、このご先祖様は承諾しなかった。

集落の人々も何代にも渡って犠牲になってきた家系に、これ以上負担を負わせるのに引け目を感じたのか、このご先祖様の言う通り、生贄は止めることになった。

しかし、祈祷師の警告も無視できなかった集落の人々は、生贄を止めるにあたって別の祈祷師を呼び助言を求めた。

その祈祷師が言うには、

「この儀式の呪は非常に強く簡単には解けない。解けたとしても、生贄のことを忘れることは、これまで生贄になってきた子の怨念で家系に不幸が起きる」

とのことだった。

祈祷師はひと通りの祈祷を行い、生贄を吊っていた木は切り倒された。

そしてその年、凶作とはならなかったが、ご先祖様夫婦の長男は死んだ。

その後、何代かにわたってうちの家系は本来嫡子となるべき長男は死産、もしくは若くして亡くなり次男が家を継いできた。

実はじいちゃんも父も次男で本当なら兄がいるはずだが、どちらも若くして亡くなっている。

俺は長男でまだ生きているが、結婚もせず、弟は結婚して子供もいることから、呪はまだとけてないのか?

それはそれとして苗字の由来の話に戻ります。

人々が苗字を名乗るようになった頃。

ご先祖様は生贄のことを忘れないように苗字を『末吉』にしました。

木の上に体を吊るして『末』

土の下に頭を埋めて『吉』

これが我が家に伝わる苗字の由来です。

うろ覚えなとこもあるけど大体こんな感じだったはず。

小さい頃ちょっと過保護気味に育てられたのも、このせいかもしれんと今更になって思う。

(了)

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