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短編 奇妙な話・不思議な話・怪異譚 n+2026

在庫が塞いでいた部屋 nc+

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同人誌にまつわる、妙に後味の悪い話。

昔、同人界隈ではそこそこ名の知れた、いわゆる壁大手だった人がいた。
当時は商業もやらず、完全に趣味で18禁オンリー。
イベントのたびに刷る部数も多く、在庫の量が尋常じゃなかった。

住んでいたのは、古めのマンション。
角部屋で、その隣は長いこと空き部屋だった。

その人は、自室に入りきらない在庫を、
「どうせ誰も使ってないから」と、
隣の空き部屋の前の廊下に、ダンボールで山積みにしていた。

廊下は非常階段側で、人もほとんど通らない。
管理会社からも特に何も言われなかったらしい。

奇妙なことに、
在庫をそこに置いている間、何も起きなかった。

夜中に物音がすることもない。
隣室からの気配もない。
空き部屋らしい、ただの「無」だった。

それが変わったのは、
長年空き部屋だった隣に、入居者が決まったと知らされた日。

さすがにマズいと思い、
急いで倉庫を借りて、在庫をすべて移し替えた。

その日の夜からだった。

まだ誰も住んでいないはずの隣室から、
四六時中、物音がするようになった。

家具を引きずる音。
壁を叩くような音。
夜中になると、天井裏を這い回るような音。

最初は気のせいだと思った。
古い建物だし、空き部屋でも音は鳴る。

だが、ある夜、
寝ていると隣の壁から「引っ張られる」感覚があった。

目を覚ますと、
壁紙の継ぎ目から、
指のようなものが出てきて、腕を掴んでいた。

悲鳴を上げて電気をつけると、
それはもう消えていた。

翌日から、
在庫を置いていたあたりの廊下だけ、
妙に空気が重くなった。

誰もいないはずの隣室から、
生活音のようなものが聞こえることもあった。

怖くなって管理会社に連絡すると、
「まだ入居者は引っ越してきていない」と言われた。

結局、その人は部屋を引き払った。

引っ越しの直前、
倉庫に移した在庫を確認していると、
一箱だけ、毎回フタが少し開いていた。

ちゃんと閉めても、
次に来ると、また同じ隙間ができている。

中身は、
例の廊下に一番長く置いていた在庫だった。

後から誰かが、冗談めかしてこう言った。

「生きてる人間のエロパワーは、
オカルトを蹴散らす威力があるらしいね」

でも、その人はもう、
在庫を家に置かなくなった。

「守ってくれてたのが、
どっちだったのか分からないから」

そう言って、笑わなかった。

(了)

[出典:18 :名無しさん@どーでもいいことだが。:2017/04/04(火) 01:53:53.66 ID:eY5advSo.net]

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