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短編 ほんとにあった怖い話

廃村にある異形の一軒家【ゆっくり朗読】6200

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去年の夏の話。

250 :本当にあった怖い名無し:2008/01/03(木) 23:19:12 ID:8iK5R4kZO

職場の先輩から電話で、「肝試しにドライブ行かないか?」とのお誘いが。

どっちも大好きな俺は、喜んでテンションを上げながら迎えの車を待った。

先輩の車が俺のアパートに着き、助手席には先輩の彼女信子さんが。

後部座席のドアを開けると俺のテンションはMAXまで上がった。

そこには信子さんの友達、芳子さんが足を組んで座っていた。

芳子さんは俺より二歳年上で、小柄で童顔ながらお洒落な女性。

だが、話しをする時は何だか全てを見透かされているような、常に人をからかうような笑顔を浮かべた(しかし不快ではない)なんとも言えず魅力的で、俺がしきりにアプローチをかけている女だ。

信子さんが言うには、第六感が強く霊感はもとより予知夢も見るとか。

特別美人という訳ではないが、隣にいるだけで……しそうになるタイプ。

俺は喜び勇んで車に乗った。

先輩いわく、そう遠くはない山中の廃村に行くとの事。

俺はそれより芳子さんを口説くのに必死だった。

そうこうしてるうちに廃村の入口付近の荒れ果てた一軒家に着いた。

そこで芳子さんが、いつもの人を小馬鹿にしたような笑顔を浮かべたまま、

「私は車で待ってるから」と言った。

それを聞いた信子さんも何かを感じ取ったのか車に残ると言い、結局男二人で一軒家へ向かった。

玄関の引き戸はもちろん鍵なんか掛かっておらず、簡単に中へ入れた。

狭くて古い、二階建ての一軒家。

玄関を入ると左壁面が台所。

そして間仕切りのない居間。

台所の向かいの壁面中央あたりに階段。

しかしなんだか妙な感じがした。

生活感があるのだ。

外観は今にも朽ち果てそうだが中は割りと綺麗で、ヌイグルミやカーペットなんかが、ついさっきまで人がいた気配を漂わせている。

空気の乱れとでも言うのか。

俺は初めてだったが、この廃村は割りと有名な心霊スポットだ。

そこに人が住んでる?

室内は外よりもヒンヤリして心地良いし、浮浪者なら住み着いていてもおかしくはないか。

先輩も同じ事を考えていたらしく、顔を合わせ白けたように、

「出ようか」と言って、玄関に向かった時、ギシッ!と階段から音がした。

反射的に振り向くと、階段に十歳前後の女の子が立っていた。

女の子は無表情に俺達を見た。

俺達は驚き、とにかく家から出ようとすると、その子が大きな声で二階に向かって

「お母さん!お母さ~ん!!」と叫び始めた。

あせった俺達は急いで外に出て、車に転がり込んだ。

通報されて逮捕される!!

そんな感じで先輩も急いで車を発車させようとしてた。

だがそこで芳子さんが、「大丈夫よ、女の子がいたでしょ」と言った。

俺と先輩は顔を見合わせ、同時に芳子さんを見た。

そんな俺達を見て芳子さんはいかにも楽しそうにキャッキャと笑った後、

「大丈夫。あの女の子は生きてないから」

確かに、女の子があれほど騒いだのに灯かりもつかず、物音もしない。

「もう一回見てきなよ」

相変わらず楽しそうに芳子さんが言った。

芳子さんに言われるとそうしなくてはいけないような気になる。

先輩と二人でもう一度見に行くと、先程とは全く見る影もない荒んだ家。

カーペットもヌイグルミもそこには無かった。

芳子さんはいつもと変わらない。

俺と先輩は無言で放心状態。

信子さんはそんな俺達をニヤニヤ眺め、先輩と運転を変わって帰路についた。

先輩いわく、芳子さんと信子さんのコンビは色々と面白い話があるとの事。

確かに芳子さんと出会ってから、不思議な体験をいくつかしたような。

事の起こりは俺が妹から受けた相談を、会社の先輩に話した事から始まる。

相談とは、妹の彼氏の身の回りにやたらと不幸が続いているという内容。

彼氏の職場での事故。彼氏兄の交通事故。

彼氏母の病気。彼氏父の左遷。

内容的には関連は全くなく、不運な偶然だとしか言いようがないが、妹が気にしているのは、彼氏の家で霊のようなものがよく目撃されている事。

彼氏は実家住まいだが、オープンな家庭で、彼氏の友達のたまり場になっているらしく、これまでに彼氏の友達二人と彼氏姉が目撃したらしい。

妹と彼氏は若干DQN気味だが彼氏はいい奴だし、真剣に結婚も考えていると以前から聞いていたので、力になりたくオカルト好きな先輩に意見を求めた。

先輩は

「俺はそういう話は好きだがなんの能力もねーよ」

とかいってその場は流されたんだが、夜に先輩から電話がかかってきて、

「週末の夜、空けとけ。会わせたい奴がいる。妹も連れて来い」

とのこと。

先輩いわく、霊感の強い女友達がいて、アドバイスくれるかもしれん、と。

……それが芳子さんだった。

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約束の夜、時間は十九時過ぎだったと思う。

季節は初夏。暖かい日だった。

妹と共に先輩の車に乗り、助手席にいた先輩の彼女信子さんを紹介された。

そして芳子さんを迎えに行くとのこと。

信子さんと高校からの親友らしい。

向かう途中で信子さんが芳子さんの能力や今までのオカルティックな体験話をしてくれた。

芳子さんは霊感が強いのと、軽い予知能力もあり、予知夢も見るらしい。

先輩が「仕事終わりの芳子を拾ってそのまま彼氏宅に行く」と言った。

しばらくして車はファッションビルが立ち並ぶ、日本最大都市のど真ん中。

その街を代表するファッションビルの前に、芳子さんが立っていた。

漠然とTVで見る霊能者タイプをイメージしていた俺は拍子抜けした。

車に乗ってきたのは小柄で可愛らしい女の子だったからだ。

そのビルのアクセサリーショップで店長をしているという芳子さんは、センスも良く、なにより薄着から覗く谷間に釘付けになってしまった。

こんな人が霊能力を持っている?

疑いたくなる程意外なタイプだった。

全員が揃い、問題の彼氏宅に着いたのは二十一時近く。

山側で暗い住宅街だ。

彼氏宅に着いてすぐ、芳子さんが二階の窓を指差して言った。

「あそこ。女の子が立ってる。金髪っぽい長い髪。まだ十代の今風のコ」

そして妹を見て、

「あんたみたいな系統の女の子。でももう少し若いかもね」

それを聞いて妹が軽い悲鳴を上げた。

実は彼氏宅で目撃された霊というのが、まさに芳子さんの言う通りの若い今風な女の子で、彼氏姉が見た時は廊下の水槽の前に佇んでいて、彼氏姉は俺の妹がそこに立っていると思ったらしい。

だがこの話は先輩にはしていない。

芳子さんが知る筈はなかった。

そして芳子さんが指差した窓は、女の子を見かけた水槽のある廊下の窓だった。

車内は芳子さん信子さん以外はみんな鳥肌MAXだったよ。

しかし芳子さんは、その女の子が直接影響してるわけではないと言う。

そう言った後、芳子さんは暫く腕を組み無表情に黙り込んだ。

そして唐突に話出した。

「壁が板張りの部屋がある。床が見えないくらい乱雑で汚い。ポスターが異常な程貼ってある。壁に赤い傷?か落書きがある」

そして妹に「彼の部屋?」と聞いた。

「そうです」

「だらしない生活を送っている人は、心の中もだらしなく隙だらけ。霊はそういう心の隙につけ入ってくる。彼の部屋は居心地がいいみたい。ポスターなんかも、霊ってヒトガタのものに近寄ってくるから」

妹すでに半ベソ。

「だけど、根本はお兄さんの車みたいよ。事故車なのかはわからないけど。男の人が乗ってる。その車が好きみたい。彼がリーダー格みたいだから車をお祓いすればいい」

そして、こう続けた。

「一連の不運は確かに霊の影響もある。霊が側にいると、知らず知らず運気や生気が擦り減っていくから。だけど、この家の人達は彼氏だけじゃなくみんながだらしない。このあたりは山も近いし、色んなものが流れてくる。だから、身の回りを常に整理し明るく保つ。庭に明るいお花を植える。玄関回りを片付ける。車の彼以外はそれだけでいなくなる程度のもの。それだけで防げたものだから」

そう言うと芳子さんは腕を上にあげて伸びをした。

その後、彼兄と彼姉だけに事情を話し、車はお祓いしてもらい、彼母が入院してる間に彼姉や妹も手伝い、彼宅を大掃除。

荒れ果てた庭を手入れしたのがきっかけで彼姉はガーデニングにハマったらしい。

芳子さんの後日談

「身の回りを綺麗にする事は変な者を寄せ付けない為に確かに大事な事。だけど彼母の病気はたぶんノイローゼ的なもの。原因まではわからなけど。退院してきて家が明るく綺麗だと良くなるのも早いと思って」

……と言っていました。

(了)

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