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地主のお婆さん【ゆっくり朗読】6700

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ウィンドウズ95が発売されて世間が浮かれていた頃、俺は小学四年生だった。

俺の地元は山形県の中でもさらに田舎なところで、ご近所さんはみんな親戚みたいなものだった。

おおげさじゃなく、顔を見ればどこの誰だかわかるような、戸締りをする習慣すらないような地域だった。

そんな中で、突然殺人事件が起きた。

第一発見者は隣のおじさんだった。

早朝、沢にわさびを取りに行ったところ、沢のさらに上流で倒れていた被害者を発見したんだと聞いた。

被害者は同じ地域に一人暮らしをしていたおばあちゃんだった。

よく、うば車を押して散歩していて、あいさつをするとニコニコ笑って「天気がいいね~」なんていうやさしそうな方だった。

事件当時、俺はまだ小学生だったが、テレビでしか見たことがない殺人事件が、こんな身近で起こるなんて信じられなかったし、すごく怖かった。

田舎で起きた事件ゆえに、本当に町の大人たちが蜂の巣をつついたような大騒ぎをしていたのを覚えている。

巡査さんが一軒一軒聞き込みにいっていたが、犯人がわからずにいた。

大人たちの多くは、県外からきた通りがかりの犯行だったんではないかとウワサした。

そして3ヶ月が過ぎようとした時、犯人が捕まったんだ。

巡査さんだった……

借りていたお金と土地を返す返さないで口論になり、その場にあったナイロンテープで絞殺して、沢に投げこんだということだった。

だけど、俺は知っていた……

聞き込みに来ていた巡査さんの顔が、すごい形相でにらむおばあちゃんの顔と重なって見えていたから……

でも、それだけじゃないと思うんだ。

ここからは憶測だけど、巡査さんは確かにお金に困っていたらしい。

でも、借りていたのはそのおばあちゃんからだけじゃないんだ。

ギャンブル好きな人だったらしいのもあり、自宅の建て直し代、親の葬儀代、借りている田んぼの地代など、地域のいろんなところから借りていたらしいんだ。

だから、巡査さんは肩身の狭い立場だったらしい。

そして、そのおばあちゃんはいわゆる土地持ちの人。

その土地を無償で、地域の人たちに貸してくれてたらしいんだ。

で、事件当時、その土地を県外の業者に言われるがままに売却しようとしてたらしいんだ。

それでは困る人が、少なからずいたということ。

そして、葬式の後、その土地は借りていた人たちがそのまま使っているということ。

永久借地権のような書類があったとのこと。

俺は十八で東京に出てきてから、一度も実家に帰っていない……

(了)

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