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居間の真上 rw+4,278

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俺がまだ小学校低学年だった頃、母は俺たち兄妹三人を連れて父と離婚した。

行き先は、母の実家だった。地方都市では名の知れた家で、母はそこに戻れば、以前と同じ暮らしができると信じていたらしい。だが、現実は違った。祖父母は母の決断を許さず、一年も経たないうちに縁を切られ、俺たちは追い出された。

次に母が選んだのは、地元で評判の良くない土建屋の男だった。派手な身なりで金遣いが荒く、口も悪い。だが、行くあてを失った母には、その男が頼もしく見えたのだと思う。再婚が決まり、ホテル暮らしを経て、俺たちは男の家に移り住んだ。

家は奇妙だった。古い和風の家に、後から何度も何かを継ぎ足したような造りで、廊下が途中で折れ、天井の高さも部屋ごとに違う。子供だった俺たちは、ただ広いというだけで喜んでいた。

引っ越してすぐ、男の息子、義理の兄が家を出て行った。理由は知らされなかった。俺たちに優しかった兄がいなくなったことだけが、妙に胸に残った。

それから数年、家は表向き穏やかだった。だが俺が中学三年になった夏、居間で家族が過ごしていると、二階から「ドンッ」という音が落ちてくるようになった。男は「ネズミだ」と言い、母も何も言わなかった。

音は増えた。夜になると、赤ん坊の泣き声が混じった。

泣き声は、居間の真上から聞こえた。そこには、男が立ち入りを禁じている二階の一室があった。鍵がかかり、誰も中を見たことがない。俺たちは次第に居間に集まらなくなり、それぞれの部屋で食事を取るようになった。

卒業間近のある日、俺が一人で留守番をしていると、玄関が開き、義兄が入ってきた。久しぶりだった。思わず、二階の音のことを話すと、兄はしばらく黙り込み、居間の棚から鍵を取り出した。

「誰にも言うな」

それだけ言って、俺を二階へ連れて行った。

禁じられていた部屋は、拍子抜けするほど普通だった。ただ、仏壇の前に並べられた人形の数が異様だった。三十体以上はあった。襖の裏には、御札が重ねるように貼られていた。

「誰の仏壇なんだ」

そう聞くと、兄は短く答えた。

「俺の姉らしい」

それ以上、詳しいことは話さなかった。ただ、ここには近づくな、とだけ言った。

兄は帰り際、俺に言った。

「高校を出たら、この家を離れろ」

それきり、兄は姿を消した。

その後、家には見知らぬ坊主のような人間が出入りするようになり、線香の匂いが家中に染みついた。夜になると、何かを唱える声が壁越しに聞こえた。夏の終わり頃、二階の音は消えたが、誰も安心しなかった。

居間は使われなくなり、家族は顔を合わせなくなった。

高校卒業を前に、俺は弟と妹に、見たことだけを話した。理由は説明しなかった。母と男の間で何が話し合われたのかは知らない。気がつくと、母は家を出る準備をしていた。

俺は大学進学を機に戸籍を抜けた。

最近、祖父の葬儀の席で聞いた話がある。あの男は、例の家で死んだという。場所は、二階だったらしい。

どの部屋かまでは、誰も知らないそうだ。

(了)

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