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短編 山にまつわる怖い話

雲取山の闇【ゆっくり朗読】3280-0103

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1992年(平成4年)頃、奥多摩日原の雲取山に登ろうとしたときの話だ。

雲取山(くもとりやま・くもとりさん)

夜に登って、山頂で朝日が昇るのを見ようと思ったのだ。

俺は山には慣れていたので、夜でも登ってた。

夕方になって東日原のバス停に到着。

あいにく雨がしとしと降っていたが、山の上は雲を抜けて晴れている事が多い。

だからそのまま進んだ。

今でもそうだが、日原の集落を過ぎると、一本の街灯も無い。

しかも雨が降る=雲っているので、星明りも無い時は、ライトが無いと本当に何も見えない。

いや、見えないというレベルではなく、質量を持った『闇』というものが、周囲から自分を包むと言うか、そんな感じ。

ライトの向きによっては、自分の手や足が無くなったんじゃないかと思えるくらい。

はっきり言って怖い。

夜の山に慣れていると言っても、大抵は晴れているから、東京の光で物が薄っすらと見える。

しかし、こういう時は違う。真っ黒な『闇』しか見えない。

そんなわけで、たまに自分の手足を照らしたりして、林道を進んでいったのだが……

「あれ?」

今、自分の手首が無かったような……

今度は まじまじと長袖の先を照らしてみる。

やっぱり、無い。

「ええっ!?」

怖いと言うより、理解不可能な状況に、その場に尻餅をつく。

雨ガッパズボンを通って伝わる雨水の冷たさに我を取り戻し、起き上がろうとする。

起き上がれない。

「?」

下半身を照らすと、足首が無い。

「!?!?!?」

もう、どうしようもないので、そこに座りこんだまま一夜を過ごす。

折りたたみ傘をザックに刺しているので、上からの雨は半分寝てても防げる。寒さであんまり寝れなかったけど。

朝、明るくなると……何の事は無い、手首も足首もある。

何だったんだろう?

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140 :本当にあった怖い名無し:2007/09/17(月) 01:37:34 ID:37y6TRpk0

雲取山の話を聞いて、昔聞いた恐ろしい話を思い出した……

計算するともう二十年位前になるけど、中学生三人が親に内緒で、雲取山の山頂で朝日を見る計画で夜に山に入り、最終的には一人だけが生還。

懐中電灯のみで意気揚々と夕暮れから登山したものの、夜が更けあまりの闇の深さに震え上がり、

一時しのぎで農作業小屋のようなところに逃げ込んだが、

『闇』のせいか、一人が精神的におかしくなり、格好付けで持ってきた鉈を振り上げ、一人に襲い掛かってきたらしい。

彼はその仲間を突き飛ばし、荷物もおいて闇の中を走って何とか下山。

翌朝、半信半疑の住民・警察と現場を訪ねたが、

鉈を振り回した仲間も、何事も無く寝袋で寝ていたもう一人も、

荷物(靴も残っていたらしい)を置いたまま忽然と消えていたそうだ。血痕も何もなし。

結構な捜索をしたらしいが、この話を聞いた時点では二人は見つかっていなかった。

別に滑落したわけでもはぐれた訳でもない。

今考えても、恐ろしいというか不思議な話。

(了)

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