短編 洒落にならない怖い話

予備自衛官補【ゆっくり朗読】2500

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当時、自分は予備自衛官補だった。

179 :1:2019/10/20(日) 10:29:43 ID:3kMAWXUP0.net

予備自衛官補とは、社会人や学生をしながら自衛隊員になれる制度。

駐屯地に泊まり込み、訓練を受けてお給料を貰えるという軍事オタ垂涎のバイトのようなものだ。

一応機密事項なので具体的に何をするか書けないが、朝は6時にラッパの音がスピーカーから爆音で流れるので飛び起きて、迷彩服に着替えて外に出て点呼する。

モタモタしてたらめっちゃ怒られる。

その後シーツなど畳んでベッドメイキングする。これも適当だとめっちゃ怒られる。

そのあとは、自衛隊の軍練をする。

部屋は相部屋で、ベッドがギッシリ並んでいる。最大10人くらいが一緒の部屋で寝泊まりして行動を共にする。

その日は5人が一緒の部屋だった。

一応自衛隊なので、本当の自衛隊と同じ時間やスケジュールをこなす。

普段運動してないオタクなので、トレーニング系の訓練だとヘトヘトで、消灯後は皆すぐに寝た。

朝、ラッパの音が鳴った瞬間に飛び起きて、横に吊るしていた迷彩服を引っつかんだ。

前述したように、朝はラッパの音が鳴ったらすぐに朝礼に行かなければいけないので、服はベッドサイドに吊るしておいたのだ。

ところが、皆が起きてこない。

というか、ラッパの音が鳴っていない。

寝ぼけて起きてしまったのかと思ったら、1人だけ同じ様に起きている人がいた。

2つ先のベッドの人が、すでに起きてシーツか何かをゆっくりゆっくり畳んでいる。

でも、そのベッドには誰も寝ていないはずだった。

自衛官補には、1人本職のリーダー的人がついて色々教えてくれるのだが、その人が入ってきて何か作業しているのかと思い、「おはようございます!」と声をかけた。

しかし、完全に無視したまま、ゆっくり布を畳んでいる。

変だなぁ、と思って、手につけてたGSHOCKの光を付けて時間を確認した。

まだ朝の5時だった。

時計にめっちゃ顔を近づけて時間を見ていた時に、そういえば眼鏡を付けていないことに気づいた。

自分は眼鏡の度数が-8.00くらいの近視で、真っ暗な部屋の二個先のベッドの人なんて確実に見えないはずだった。

何でシーツを畳んでるってわかったんだ?

というか、何で今シーツ畳んでるの?

もう一度、起きている人を見た。

昔のダビングしたビデオみたいに、ザラザラした様に見えるけど、真っ暗な部屋で淡々と何らかの作業をしてるTシャツ姿の人だけが、眼鏡無しでもハッキリ見えた。

皆が起きてない時間に起きてる知らない人がそこに居た。

自分は声を掛けてしまった…

そっとベッドに入り、今更寝たフリをした。どうかこっちに来ませんように…

朝6時、本当のラッパが鳴るまで地獄の様な一時間を過ごした。

翌日、靴磨きをしている時にリーダーにその事を伝えたら、「あー、やっぱり出るんだ…」と言われた。

「お前達の隣の部屋、誰も使ってないだろ?あそこあかずの部屋なんだよ」

「あれ見てみろ、あそこの3階の窓だけ、鉄格子付いてるだろ、あそこの部屋だけ飛び降りる人が多いから付けてるらしい」

「あそこの納屋、首吊り自殺した人の幽霊が出るんだって」

と、ついでの様にとんでもない数の怖い話をされた。

駐屯地という閉鎖的な所はやっぱり自殺が多いのかね…

それ以来、訓練には行けなくなり、無事三年の任期を終えました。

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