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奇妙なオフ会【ゆっくり朗読】

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ネットで知り合った八人の若い男女がオフ会をやる事になった。

213 名前:あなたのうしろに名無しさんが…… 投稿日:01/12/04 16:23

ほとんどがリアルでの面識は無い者ばかりで多少の不安もあったが、結局、みんなで集まって遊園地で遊ぼうという事になった。

そして当日になり、待ち合わせの場所に次々と参加者が集まってきたが、タケシという名前の男がなかなかやって来ない。

仕方がないので七人で行こうかという事になった時、いつのまにか一人の若い男が近くにいるのに気づいた。

そこで、もしかしたらと思い、声をかけると、「じゃあ、行きましょうか」と言って彼は立ち上がった。

やけに不自然な言動だったが、その時はみんなじれていて、大して気にも止めなかった。

お互いに簡単に自己紹介をした後、みんなで遊園地へ入り、最初の内はぎこちなかった彼等も、やがてワイワイと賑やかに遊ぶようになった。

だが、タケシだけはどこか打ち解けないところがあった。

普通に話はするし、他の人に話題を振られても反応はするのだが、どうも相手を見下して馬鹿にしてるような雰囲気があった。

チャットや2chでは、もっと積極的に話を盛り上げるキャラだったはずなのに、そのリアルでの性格のギャップにみんな不審を抱いていた。

しかし、ネット上でもタケシは自分の事だけはあまり語らなかったので、一体どういう人物なのか誰にもよく分からなかった。

その為、一度は盛り上がった場も、なんとなくしらけてしまい、日が暮れて、今回はこれでお開きにしようという事になった。

ところが、それぞれが別れて帰るという時になると、タケシは、

「僕と同じ方向へ行く人がいたら車で送りますよ」と言った。

ほとんどの人は電車で来ていたが、タケシは車で来ていて、近くに止めているらしかった。

確かにこれまでのタケシの冷めた調子には気に食わないところもあったが、彼の言葉に甘えれば電車賃がタダになる。

結局、カズオという男と、杏子という女がタケシの車に便乗させてもらう事になった。

こうして初対面三人の夜のドライブが始まった。

タケシの車は中古らしいが、かなり手入れがゆきとどいていた。

カズオと杏子は後部座席に座り、タケシの運転を見守っていたが、タケシは変にかっこつける事もなく、安全運転を心がけていた。

車はやがて郊外に入り、片側二車線の道に入った。

まだそんなに遅い時間でもないのに、彼等の乗った車以外はほとんど無く、窓の外には明かりがほとんど見えず、時折ガソリンスタンドや自販機の光が見えるばかりだ。

車内でカズオと杏子はたわいない雑談をしていたが、タケシは自分からは何もしゃべろうとはせず、時々話を振っても軽く受け答えするだけだった。

窓の外は暗い林がずっと続いている。

よく見ると、たくさんの石の地蔵が並んでいる。

ライトの光に浮き上がるそれはひどく異様だった。

頭が酷く欠けているもの、口に亀裂が入って不気味に笑ってるように見えるもの、顔が真っ二つに割れているもの、一つとしてまともなのが無いのである。

異様な光景に気づいたカズオと杏子は気分が悪くなり、さらに嫌な予感がした。

「この辺りは結構出るそうですよ」

珍しくタケシが自分のほうからボツリと言った。

「……出るってなにが?」

「出るんだそうです」

「……だから、何が?」

カズオが尋ねてもタケシは何も言わない。

「あのう、この車、さっきから同じところを走ってませんか?」

窓の外を見ていた杏子が言った。

「ほら、あのガソリンスタンドと自販機、さっきも通りすぎましたよね」

確かに彼女が指差す先にはそれらの明かりが通りすぎてゆく。

「そんなことはないですよ」

答えたのはタケシだった。

抑揚のない棒読み口調だった。

「この道路は一本道ですからね、曲がってもいないのに同じところは走れませんよ。郊外の道なんてみんな似てますからね。気のせいですよ」

タケシは初めてと言っていいくらいペラペラとしゃべり、最後にヒヒヒッと低く笑った。

その笑い声を聞くと、カズオも杏子もそれ以上何も言えなくなった。

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しばらく沈黙が続いた後、タケシは手をのばして何やらゴソゴソやるとテープを取り出した。

「何かかけましょうか」

タケシはテープをカーステレオに押し込んだ。

ところが、音楽が流れてこないのである。二、三分たっても、まったく何も。

沈黙と圧迫感に耐えかねたカズオが口を開いた。

「……何も聞こえないんだけど」

「…………」

「……ちゃんと入ってるの?」

「…………」

「……ねえ?」

「聞こえないでしょう? なんにも」

「……ああ」

「深夜にね、家の中でテープをまわしておいたんですよ。自分は外出してね。家の中の音を拾うようにテープをまわしておいたんです」

「……なんでそんなことしたわけ?」

「だって、留守の間に何かが会話しているのが録音できるかもしれないでしょ」

「……何かって……なんだよ?」

「…………」

カズオは初めて相手が答えなくて良かったと思った。

それ以上、タケシと会話してはいけないと思った。

すると杏子が突然悲鳴をあげた。

窓の外にはまたあの不気味な地蔵が並んでいたのだ。

「おい、とめろ!」

カズオが叫んだが、タケシは何も言わない。

「とめろ!」

さらにカズオが叫ぶと、静かに車は止まった。カズオと杏子は転がるように車から降りた。

車はすぐに再発進して遠ざかっていった。

残されたカズオと杏子が辺りを見まわすと、二人は顔を見合わせて顔面蒼白になって震えた。

そこには石の地蔵など無く、それどころか彼等が遊んだ遊園地のすぐ近くだった。

一本道をずっと走ったのに、どうやって戻ってきたのか全く分からなかった。

それだけではなかった。

あとで他の参加者に連絡を取ろうとしたら、なんとタケシは時間を間違えて待ち合わせの場所へ来て待ちぼうけを食らって、そのまま帰ったといういうのだ。

だとしたら、オフ会に参加したあの男は一体何者だったのか?

後日、カズオはほとんど同じ道をたどる機会があったが、道路の何処にも石の地蔵など無かったという……

(了)

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