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短編 r+ ヒトコワ・ほんとに怖いのは人間

マジでやばい占い師 r+8233

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ご存知の方もいるかもしれないが、これはあるスタジオミュージシャンがラジオ番組で語った話である。

このミュージシャンは、家族ぐるみで付き合いのある占術師と交流があった。

とはいえ、彼女を霊能者としてではなく、近隣の親しい年長者として認識していた。しかし、彼女が「近いうちに大きな仕事が入るわよ。私が少し力を入れておいたからね」と告げた数日後に実際にCMの依頼が舞い込むことが数度あり、ある種の信頼を寄せるに至っていた。

こうした仕事が増えたことで、彼は収入を安定させ、ついにマンションを購入することとなった。中古とはいえ、立地や環境は申し分なく、彼は満足していた。

ただ、契約時に少し奇妙な出来事があった。売主は急いで売却したがっており、詳細を尋ねると「この部屋にはもう長く住めない」とだけ答えたという。また、引っ越し当日、エレベーター内で出会った隣人が「よくここに決めましたね」と意味深に微笑んだのが気になった。

しかし、それらの違和感はすぐに消え去り、生活は順調に思えた。

だが、そこから不可解な出来事が続発した。

まず、幼い子供の皮膚に原因不明の湿疹が広がり始めた。それと同時に、彼と妻も悪夢に苛まれ、安眠できない日々が続いた。疲労が蓄積し、精神的にも不安定になり始めた。

異変を察知した占術師の女性は、見舞いを口実に彼の家を訪れた。そして、玄関をくぐるなり、異様な気配に眉をひそめた。

「この部屋で子供を寝かせてはいけない」

彼女は即座に子供を抱きかかえ、居間へと移した。その後、再び子供部屋へ戻り、視線を周囲に巡らせながら呟いた。

「このあたり……何か、嫌な気がする……」

エアコンの裏を手探りし、しばらくして何かを取り出した。それは、髪の毛で何重にも巻かれた割り箸の破片のようなものであった。

「これは……前の住人が遺していったものかしら。強力な呪詛がかかっているわね。これは、対象の生命力を徐々に奪い、家の住人を精神的に追い詰める類のものよ。体調不良、悪夢、そして最終的には……最悪の場合、命すら奪われかねないわ」

彼女の表情は険しく、ただちに「この家を出るのが最善だ」と警告した。

しかし、彼には引っ越すことが逃避に思えた。子供の症状が深刻なことを鑑みつつも、彼は問いかけた。

「呪いを払うことはできませんか?」

「可能だけど、それなりの対価が必要よ。私に任せるなら、準備を整えるわ」

翌日、彼女は数多の御札を持ち込み、室内に配置し、香炉を焚き、呪文を唱えた。

「これでひとまずは落ち着くはずよ。しばらく様子を見ましょう」

驚くことに、その日を境に子供の症状は改善し、彼と妻の悪夢も止んだ。

彼は電話でそのことを伝えると、

『良かった……正直、上手くいかなかったらどうしようかと心配していたのよ』

と、ほっとしたような声が返ってきた。

しかし、事態は収束しなかった。

翌朝、玄関の前には血と泥が混ざった不気味な塊が置かれていたのだ。

再び占術師に連絡すると、彼女は血相を変えて駆けつけた。

「事態は深刻ね。これは明らかに強い意思を持った者が送りつけているものよ。これからどうするつもり?」

「闘います。もう逃げたくはない。妻と子供を守らなければなりません。このままでは、奴の思う壺です。怖くないと言えば嘘になるが、何もしなければもっと恐ろしいことが起こる気がする……。協力してもらえますか?」

「もちろん。できる限りのことはするわ」

それから数日間、血の泥団子が現れるたびに彼女が祓うという繰り返しが続いた。

その過程で、彼は彼女への礼金を次々と支払い、その額は年収に匹敵するほどに膨らんでいった。精神的にも肉体的にも限界を感じ始めていた頃、彼女は新たな策を提案した。

「引っ越したと見せかけて相手を油断させるのよ。その間に、呪いの発信源を特定し、より効果的な防御策を整えるの。まずは近隣の監視を強化し、誰が呪いを仕掛けているのかを突き止める必要があるわ。そして、その間に新しい結界を築く準備を進めましょう」

確かに、呪いを仕掛けた者が彼らの不在を信じれば、すべてが終息するかもしれない。

そう考え、彼は妻と子供を妻の実家へ避難させ、自身はスタジオやホテルを転々とした。

十日後、必要な荷物を取りに家へ戻った。妻も今後の方針を話し合うため、一緒に泊まることにした。

翌朝、玄関を開けると、そこにはまた血の泥団子が置かれていた。

「やはりこれでも駄目か……」

落胆する彼に、妻が震えた声で告げた。

「私、見たのよ……泥団子を置いている人を」

「誰なんだ?」

「……あのおばちゃんが、今朝早く、玄関の前に……」

妻の声はかすかに震え、顔は青ざめていた。彼女の手はぎゅっと握りしめられ、指先がわずかに痙攣している。目には涙が浮かび、言葉を続けるのに必死だったのがわかった。まるで、自分の口から出る言葉すら信じたくないかのようだった。

衝撃だった。これまで頼りにしていた彼女自身が、この不可解な現象を引き起こしていたのか。

何のために?彼女は本当に祓っていたのか、それとも、最初からこの恐怖を生み出していたのか。

動揺と疑念が渦巻くなか、ふと視界の隅で彼女が貼った御札の一部が剥がれ落ちているのに気づいた。

もうこの場所にはいられない——そう確信し、彼は妻とともに家を後にした。

(了)

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