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短編 ヒトコワ・ほんとに怖いのは人間

マジでやばい占い師【ゆっくり朗読】7314

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御存知の方がいらっしゃるかも知れませんが……これは或るスタジオミュージシャンがラジオで話していたものです。

家族ぐるみでつきあっていた占い師がいました。

占い師と言うより、近所のおばちゃんとしてつきあってましたが、時々「今度大きな仕事がはいるわよ。私が力を入れてあげとくからね」と云われた2~3日後、CMの仕事が入る、なんてことが何度かあり、「さすが……」と思ってました。

CMの仕事が増えだし、収入も上がったので、近くのマンションを買いました。(中古ですが)

それが始まりのきっかけでした。

まず、子供の体中に湿疹が出来始め、私も妻もおかしな夢を良く見るようになり、ぜんぜん眠れなくなりました。

占い師のおばちゃんも心配し始め、子供の見舞いがてら看に来てくれました。

その時、急に「子供をこの部屋に寝せていてはいけない」と言うなり、子供を抱きかかえ、居間の方へ連れて行きました。

そしてまたその部屋に戻り、

「こっちのほうから妖しい気が感じる……。ここね」

と言ってエアコンの裏をさぐるなり、

「前の住人かしら、変なことをして行ったわね」

そうつぶやきながら、私にあるものを見せました。

それは、割り箸のかけらみたいなものを髪の毛でぐるぐる巻きにした、不思議なものでした。

「強い呪いがかけられてるよ。どうするの。一番良いのは引っ越すことかもね」

その時、子供がひどい目にあっているのと、此のまま引越すのは逃げていくみたいで嫌だったので、おばちゃんに尋ねました。

「この呪い祓えませんか?」

「少し高いわよ。それでよければ……まあ、このおばちゃんに任せなさい」

そして次の日、おばちゃんはどこから持ってきたのか、沢山の御札を部屋中に貼り、ちっちゃな香炉みたいなものの上で護摩を焚いて、いくつかの呪文を唱え……

「これで、良いはずだけど。まあ、暫く様子をみましょう」

そう云っていました。

次の日から子供の湿疹は治り始め、おかしな夢を見なくなりました。

これですべて終わったと、そう思いました。

おばちゃんに電話でそのことを話すと、

『ずいぶん貰ったから心配してたのよ。巧くいかなかったら怒られると思って……』

などと喜んでいました。

しかし次の日から、またおかしなことが始まりました。

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朝、玄関の前に、泥を血でこねたような物で作った丸い物が置いてありました。

そのことをおばちゃんに話すと、血相を変えてやってきました。

「とんでもないことになったわね。これからどうするの」

「戦いますよ。妻や子供を守らなきゃ。手伝ってくれますよね」

「任せときなさい。出来る限りのことはしてあげるから」

それから、血の泥団子が置かれるとおばちゃんのお払いをするという、いたちごっこが数回続きました。

おばちゃんへの礼金も私の年収に近い額になり、精も根も就きかけ始め、どうしようかと思った頃、おばちゃんが一つの方法を提案してきました。

引越したふりをして相手を安心させ暫く時間を作り、その隙に対抗策を考えると言うものでした。

巧くいけば完全に引越したものと思ってくれて、すべて終わるのでは……

そう考え、妻と子供は妻の実家へ。

私は仕事もあるので、スタジオかビジネスホテル、あるいは友人宅などを泊まり歩いていました。

しかし、いつまでもそうしてもいられないので、10日ほど経った頃、一旦様子を見るのと、これからの生活に必要なものもあるので、家に戻りました。

妻も子供を実家に残し、これからの事を話し合う為に二人で泊まりました。

次の日、玄関の扉を開けるとそこには、昨晩までは無かった血の泥団子が置かれていました。

この方法でも駄目なのかと落胆していると、妻が、

「私、見たのよ。泥団子置いている人」

「誰なんだそいつは」

「……あのおばちゃんが、朝早く玄関の前に置いていたの」

(了)

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