高一の頃、某チェーンの飲食店でバイトしてたんだけど、同じ日に入った子がいた。
見た目も普通、性格も普通で、特に変な子じゃなかった。年も近いし、なんとなく気が合って仲良くしてた。
でも、その子を嫌ってる先輩がいて、そいつがすごい陰湿なイジメを始めたんだ。バイト内の上下関係を盾にして、「先輩には絶対敬語使え」とか言い出してさ。
でもそれ、他の後輩には言わないのよ。その子だけに徹底的にやる。最初は小さな嫌がらせだったのが、徐々にエスカレートしていった。
言ってもない悪口を吹聴されたり、ミスを押し付けられたり、バイト先のストレスのはけ口みたいになっていった。店長も見て見ぬふり。完全にバイト内カースト最下層にされてた。
彼女がミスをすると、みんなしてため息をついて嫌味を言う。休憩室では、彼女が入ってくるだけで空気が変わる。「あ、また来た」みたいな視線が向けられる。それでも彼女は、必死に笑顔を作ってた。
私はそんなのが嫌で辞めたんだけど、その子は続けてた。辞めるように言ったけど、「辞めたら負けた気がする」って。その言葉、今でも思い出す。
それからも電話やメールで愚痴聞いたり、遊んだりしてたんだけど……
ある日、その子が自殺未遂した。
しかも、遺書みたいなメモに、イジメの主犯格や関わった奴ら、店長、責任者の名前がずらっと書かれてた。
なんとか一命を取り留めたものの、精神的にボロボロになって、入退院を繰り返すようになった。お見舞いにも何度も行ったし、退院してる時は遊びに誘ったりした。
でも、彼女はもう前の彼女じゃなかった。目の焦点が合わないっていうか、ずっと何かに怯えてる感じ。昔みたいに大笑いすることもなくなった。
それから三年後、バイト先の店は不況の煽りを受けて、大手企業に吸収された。……と思ってたら、その企業、彼女の親が経営してる会社だった。
当然、イジメてた奴らは全員リストラ。家族持ちもいたのに、容赦なし。中には「子供がいるんです、お願いします」って泣いて懇願したやつもいたらしいけど、無駄だった。
それだけじゃなかった。
彼女の診断書をもとに、傷害罪で訴えられて、見事に敗訴。慰謝料と治療費の支払い命令が出た。
当然、そんな大金すぐに払えるはずもなく、奴らは借金地獄へ。闇金に手を出して、家庭崩壊。仕事もない。未来もない。どん底へ。
で、今も、彼女が入退院を繰り返す病室で、土下座して許しを乞うてるらしい。
でも、彼女も彼女の親も許さない。
「お前らが私にしたことを、一生忘れない」
そう言って、彼女は微笑むらしい。
そして、その微笑みを見た元同僚たちは、一様に顔面蒼白になるんだと。
生きてる人間が一番怖いよな。どこで誰に恨まれるか分からん。
因果応報って、こういうことを言うんだな……