俺の家の近くには、小さい山がある。
入り口から中までアスファルトで舗装されてるんだけど、何で舗装されてるのか謎。
登山目的ってわけでもないし、伐採をやるわけでもない。
二十年以上前からそんな感じだから不思議に思って近所の婆ちゃんに聞いてみたら
「あそこは昔、色々あってなぁ……」
というだけで、その色々を聞いても教えてくれない。
小学生の頃の俺はそれで納得してた。
それから高校生になってその山について自分でも調べてみた。
高校生の夏休み。
暇だった俺はこの山を探検してみたいと思い、ジャージ姿にポテチを持って山を登ってみた。
今思えばもう少し装備してけば良かったな、と。
1時間ぐらい登っていたら、今自分がどこにいるかわからなくなってしまった。
どう考えても自分が悪いんだが、その時は怖くても先に進めばなんとかなると思い、前に進んだ。
どれぐらい登ったのかわからないが、喉が渇いたなぁ……けど、ポテチ喰うと水分無くなるしなあといろいろ悩んでいたときだった。
そんな時に開けた場所で、村みたいなところを発見した。
木造の家が五つぐらい並んでいて、それも時代劇に出てくるような木造の古臭い家なのが印象的だった。
そこで畑作業をしている人が数人チラホラ見えた。
この時点で既に怪しいんだけど、喉が渇いてた俺は「すいませーん!」と大きな声で畑仕事をしてたおじさんに声をかけてみた。
「お前、外から来たんか?」
「外……?多分そうです。それと水を……」
「ちょっと待っとり」
なんか竹筒みたいなやつから水くれたおじさん、マジ良い人だった。
「そんじゃ、村長のところ行くか」
この時はもうなにをされてもいいなって思えるぐらいおじさんが神に見えた。
村長の家なんだが、別に他の家と特になにが違うってわけじゃなかった。
家の中にいた村長は白髪だらけの普通のじいさんだった。
「お主、村の外から来たのか?」
「はい、そうですけど」
「そうか……」
そこからなにも話が進まない。
それで俺から話を切り出してみることにした。
「あの……皆さんは外の街にでたりしないんですか?」
「犬神様がおるでの、外に出たらあかんのじゃ」
普段の俺なら宗教臭いって一蹴してたけど、村長の目がマジだったので黙っておくことにした。
で、しばらくしてさっきのおじさんが戻ってきて、握り飯をくれた。
塩しかついてないけど空腹には美味だった。
おじさんが「今日はウチにおいで」と声をかけてくれた。
「お世話になります!!」
おいでっていうのは遊びにおいでって意味だと思ってた高校生の俺。
おじさんの家に行ったら、幸薄そうな嫁さんと、いもっぽい顔した女の子がいた。
「おいトメ!この人と遊んであげぇ!!」
「わかった!!」。
それから一緒に遊んだんだが、この村には他に子供がニ人しかいないから、四人で鬼ごっことか隠れんぼなんかをして遊んだ。
遊んでいる内に日が暮れて、これはそろそろ帰らなくちゃまずいんじゃないかと今更になって不安になってきた。
「おじさん、今日はもう帰りたいんだけど」
「もう遅いけぇ、この暗さで帰るよりも明日の朝帰り!」
全くもって正論なので、少し不安だったけど世話になることにした。
夕飯は汁ものと飯と漬物。そこでの夕食も美味しかった気がする。
それで夜になっておじさんたちに色々外のことを話した。
まあなに話しても嬉しそうに聞いてくれるので、べらべら俺が喋ってただけなんだが。
それで夜も深くなった頃、寝てたらトメに揺すられて起きたんだけど、トメがトイレに行きたいと言って来た。
「トイレは外にあるけ、おとうちゃんたち起こさんようにな」
俺も半分寝ながら、音を出さないように外に出た。
そしたらいきなりトメが真顔になって言った。
「にいちゃん、早く外に逃げり!」
「えっ?なに、いきなり」
「ここにおったら、生贄にされてまうでぇ!」
なにを言ってるのかわからなかったが、なにやらヤバイ感じはした。
「でも帰り道がわからない」
「にいちゃん、あっちから出てきたんやから、あっち真っ直ぐ行けばいいやろ!」
怒られて怖くなった俺は、そっから走った!
正直どこ走ったか覚えてないけど、どれぐらい走ったかわからないぐらい走って、ようやく電気がある道に出られた……
(了)