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病院の夜間巡回警備 r+4544

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昔、警備員をしていた時のことだ。

入社して間もない頃、俺は機械警備の担当として、ある区域を任されることになった。その日は、昼間に先輩社員と共に警備対象の建物を車で巡回し、夜間は待機所で警報信号に備えるというスケジュールだった。その区域には機械警備とは別に、夜間巡回が必要な物件が3カ所あり、その中の一つに元病院の建物——通称Aがあった。

先輩によると、Aは「出る」病院として有名らしく、霊感の強い人間は絶対に近寄りたがらない場所だという。俺自身も、これまでに数回幽霊を見たことはあったが、普段は霊感なんて全く感じないし、先輩の話も「ありがちな噂話」くらいにしか思わなかった。何より、新入社員の俺は覚えることが多く、それどころではなかった。

A病院の巡回は夜間2回。午後11時と午前3時だ。他の2カ所を巡回し終え、1回目の病院巡回に向かうことになった。

A病院は深い山中にあり、近くには大きな川が流れている。水は霊を引き寄せると聞いたことがあるが、なんとなく腑に落ちる立地だった。その病院は80年代後半に新病院への移転のため廃墟となり、地上2階・地下1階、長さ100m×30mほどの建物だ。解体しようとしたこともあったらしいが、その際に何か問題が起きたという噂もある。

高さ3mほどのバリケードに囲まれた病院の敷地へは、アコーディオン式の扉に南京錠を外して入る。荒れ果てた敷地には無数の落書きや割れた窓ガラス、腰ほどの高さにまで伸びた雑草が広がっていた。

巡回ルートは決まっていて、屋外にある螺旋階段を上がり、2階の入口から建物内に入る。2階の古びた南京錠を開けて中へ入ると、懐中電灯の光が無数の病室を照らし出した。建物の中は、生ぬるいような、かと思えば寒気がするような、言葉では表せない異様な空間だった。

ベッドなどの設備は撤去されていたが、1986年の週刊少年ジャンプが置き去りにされているなど、どこか生活の痕跡が残っている。

先輩いわく、俺たちのような夜間警備員が懐中電灯を使うことで、「病院で奇妙な光を見た」という怪談が生まれることもあるらしい。ある意味では笑える話だ。

巡回ルートに従い、スロープを通って1階へ降り、病室やナースセンターを確認。異常はなかった。だが、地下に降りるには階段を使う必要がある。配置図で確認した階段へ向かおうとすると、先輩が「地下はいいよ、どうせ何もないし…」と言って止めた。どうやら先輩はかなりの怖がりだったらしい。内部の巡回を切り上げ、外周を確認して1回目の巡回を終えた。

待機所に戻り、遅い夕食をとりながら緊急警報と2回目の巡回に備える。午前1時を回った頃、先輩は疲れて眠ってしまい、俺も配置図を見ながらうとうとし始めた。仮眠が許されている時間帯だったので、目覚ましを2時30分にセットして眠りについた。

…暗い。

どこだ、ここは?

ぼんやりとした意識の中で、俺は階段の下にいることに気づいた。窓からはかすかに光が差し込んでいる。だが、その場所から別の部屋へ行く気はどうしても起きない。ただ、ここにいてはいけない。そんな気がして、俺は階段を登ろうとした。

だが、足が動かない。足元を見ると、ツタのようなものが絡みついている。それは次第に俺の体へと絡みつき、さらに階段の上からはベニヤ板のようなものが次々と倒れてくる。手で払いのけようとするが、どんどん積み重なり、ついに光も遮られ、仰向けに倒れてしまった。

苦しい。重い。呼吸ができない…。

…ここで死ぬんだ。そんな気がした。

…そこで目が覚めた。

車内で汗びっしょりになっていた。時計は2時20分を指していた。先輩は熟睡している。

あの夢は何だったのか…。怖かったが、それ以上に、今すぐ病院へ行かなければならないという気持ちに駆られた。俺は先輩をそっと起こし、「次の巡回は自分一人で行く」と告げて、車を走らせた。

病院の外観は先ほどと変わらない。順路通りに2階を確認し終えた後、俺は本来は避けるはずの地下へ降りる階段を探した。配置図通り、階段はあった。

幅2mもない狭い階段を、懐中電灯で照らしながら降りる。途中の踊り場の窓からは川が見えた。そして、地下へ続く階段の途中で立ち止まり、上を見上げて懐中電灯を照らす…。

光は差していない。それでも、そこに広がる光景は、夢で見たものと寸分違わなかった。

その後の記憶はあまり残っていない。だが、これを境に、俺の人生は狂い始めた。

警備員として独り立ちしたものの、俺には事故や事件が次々と付きまとった。強盗、暴力事件、交通事故…。「こんな仕事だから」と言えばそれまでだが、その頻度は異常だった。同僚たちも次第に俺との勤務を避けるようになり、結局1年も経たずに仕事を辞めることになった。

その後も不可解な出来事は続いた。食品工場に勤めれば、自分の周囲で調理器具の紛失が相次ぎ、工場全体が何度も大損害を被った。そして原因不明の高熱が続き、退職を余儀なくされた。

今も俺の体温は平熱で37度を超えたままだ。

なぜ俺がこうならなければならなかったのか。

ある占い師に相談したことがある。その占い師は、ためらいがちに言った。

「あなた、行ってはいけない場所に行ってしまいましたね。その夢は、あなたの人生を暗示しているんですよ…」

境遇を変える方法は教わった。毎日それを実行しているが、状況は変わらない。生きる気力すら失いかけている。

俺は今も、あの夜の病院の地下階段を思い出す。登りたかったはずの階段…。

[出典:250:2007/11/09(金) 17:37:12 ID:rRGvWjsF0]

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