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短編

絡繰函(からくりばこ)

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俺が中学三年生の時、祖父が死んだ。

胃癌だった。

初孫ということもあり、俺はとても可愛がってもらった。

俺も小さい頃は祖父の大きな膝で本を読んでもらうのが大好きだった。

祖父が死ぬ3日前に、病院にお見舞いに行った時の事。

痩せ細って入院前の面影がすっかり無くなった祖父は、か細い声で俺を近くに呼び寄せると、組木細工の箱を渡した。

「じいちゃん、これなに?」

と聞くと、祖父は

「わしが死んだ後、棺桶に入れてくれんか」

と微笑んで言った。

「なに?ばあちゃんからもらったラブレターでも入ってるの?」

と冷やかし半分でニヤニヤしながら言うと

「そんな色っぽいものじゃないよ」

と笑って答え、その後

「絶対に開けてはならんよ。人に見せてもならん」

と真剣な顔で付け加えた。それが祖父の声を最後に聞いた瞬間だった。

その後、俺がジュースを買いに行っている数分の間に昏睡状態に陥ってしまったからだ。
祖父が亡くなり、慌ただしく時間だけが過ぎた。

告別式の前夜、俺は自室の机の上に祖父から預かった箱を置き、じっくりと見つめた。

大きさは20センチくらい。

組木細工だと思いこんでいたが、フタがあるわけでもなく、組木と組木の間に隙間があり、少し動く事から、それがカラクリ箱だと気が付いた。

元々パズルは苦手だったのと、何より祖父の言いつけがあったので、開ける気はなかったが……

祖父との思い出を頭に浮かべながら見つめているうちに、その箱を開けなくてはならないような焦りが生まれた。

そして俺はその箱を、何かにとり憑かれたように外し始めた。

何本か形の違う組木を外し、開いた空間に他の組木をずらしていく。

思ったより簡単だ。

そして恐らく最後であろう組木を外そうとした時、爪が箱の奥で何かに引っ掛かった。

なんだろう?と思い、ペンライトで爪が引っ掛かった隙間を照らしながら中を覗くと、そこには一枚の紙が張ってある一回り小さい箱があるのが見えた。

どうやらその紙に爪を引っ掛けたようで、少し破れてしまっている。

更に目を凝らして見て背筋が凍った。

その紙には読めない黒い字と朱色の文字で

『封』

やばいと思った。

お札だ。

なんのお札かはわからないけど確かにお札だ。

その時部屋の外から父の声が聞こえた。

「ああああ!母さん!母さんが!」

それ以来俺には家族はいない。

その後、母は入退院を繰り返し、一八歳の時に死んだ。

父は母の病名について話すことはなかった。

父は俺が19歳の時に俺があの時ばらしたカラクリ箱と一緒に失踪してしまった。

今でも思う。きっと母を殺したのは俺だ。

結局あの箱の中に何が入っていたかはわからないままだ。

(了)

 

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