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昨日は二つだった《意味がわかると怖い話》rw+4,514

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その日は朝から暑かったという。

彼は自室でテレビゲームに夢中になっていたが、不意に母親の声が飛び込んできた。

「ほら、ゲームばっかりやってないで、草むしりしちゃいなさい。お母さんとの約束でしょ」

誕生日にゲームソフトを買ってもらう代わりに、夏休みの朝は庭の草むしりをすると約束していた。窓の外を見れば、雲一つない青空。彼は露骨に顔をしかめたが、逆らう気にはなれず、ゲーム機の電源を落として階下へ降りた。

庭は狭かったが、小さな子どもにとっては十分すぎる重労働だった。しゃがみ込んで雑草を引き抜くたび、日差しが容赦なく肌を焼く。十分もしないうちに全身が汗で濡れ、彼は音を上げるように立ち上がった。

庭の片隅に、イチョウの木が一本立っていた。そこだけが、はっきりとした影を落としている。彼はふらつく足取りで木の下へ行き、根元に腰を下ろして息を整えた。

そのとき、尻の下の感触に違和感を覚えた。地面が、妙に盛り上がっている。土がこんもりと膨らみ、まるで何かを隠しているようだった。

好奇心に負け、指で土を掘り返す。草むしりよりも短い時間で、それは姿を現した。

異様なほど白く、ところどころ紫に変色した細い腕。土にまみれたその手の薬指には、プラチナの指輪が嵌まっていた。

彼はその指輪を知っていた。毎日見ていた。母親の指にあったものだ。思考が、そこで止まった。

「お母さ……」

声になりかけた瞬間、縁側に視線が引き寄せられた。そこに立っていたのは、母親だった。

いや、母親だったもの。

眼は不自然なほど吊り上がり、口は耳のあたりまで裂けるように開いている。笑っているのだと理解するまでに、時間がかかった。

その日も朝から暑かったという。
彼は約束通り、今日も庭で草むしりをしている。汗だくになりながらも手は止まらない。庭は以前よりずっと整い、雑草は目立たなくなった。

イチョウの木は今日も変わらず影を落とし、彼が涼みに来るのを待っている。

彼は作業の合間に、木の根元を見た。
こんもりと盛り上がった土の小山が、いくつも並んでいる。

昨日は二つだった気がする。
だが、今日は数え直す気になれなかった。

[出典:37 : ◆cBCRASH/NU : 投稿日:2003/06/05 00:47:00]

 

解説

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この話の肝は、母親が化け物だったことではない。もっと根本的な点にある。

少年は最初、イチョウの木の下で「母親の腕」を掘り当てている。つまりその時点で、母親はすでに土の中にいる。では、草むしりを命じ、縁側に立って笑っていた存在は何か。その答えは作中では一切示されない。

重要なのはその後だ。少年は異変に気づいている。それでも逃げない。問い詰めない。誰にも言わない。そして翌日も、その翌日も、約束通り草むしりを続けている。

最後に描かれる土の小山は「二つ」ではなく、「いくつも」になっている。これは新たに何かが埋められた可能性を示しているが、少年は数え直さない。確認することを自分で放棄している。

つまりこの話は、「母親が何者だったか」では終わらない。少年自身が、異常な存在と異常な行為を、日常として受け入れる側に回ってしまった話だ。

意味が分かると怖いのは、怪異が増えていることよりも、それを当たり前として処理できてしまう人間の側に変化が起きている点にある。読者が最後に突き落とされるのは、「この子はもう止まらない」という感覚だ。

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