長編 不動産・物件の怖い話

不動産屋だけど事故物件の怖い話する【ゆっくり朗読】2650

投稿日:

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ちなみに売買専門だから賃貸住宅のことは知らん

1 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/04/01(水) 09:35:31.816 ID:JiiUWUQe0USO

10年前にお風呂で現所有者の叔母さんが自殺したという物件を売ることになった。

現地調査、物件広告のため建物の中に入ることに。

築20年とはいえ中々状態がいい。

意外と手入れは行き届いている。

まずは一階で写真をとり、水回りのチェックをし、いざ二階へ。

階段を登り切ると目の前に30帖くらいの大ホールがあって、その一角に仏間スペースという変わった造りだった。

ありきたりなんだけど仏間の方から人の気配を感じた。

気配は仏間の奥の収納から。

一間くらいの幅、観音扉の収納スペース、どう考えてもそんなに大きな空間ではないはずなのにその扉の先に妙な生活感を感じた。

なんか家族が集まってテレビでも観てるようなそんな雰囲気。

収納スペースもきっちり写真に撮らなきゃいけない(広告の為、雨漏り確認の為)ので扉をゆっくり開ける。

ぎぃーーーー、がちゃがちゃがちゃ

額縁に収まった大量の写真が雪崩を起こして飛び出してきた。

白黒からカラーまで、10や20では効かないくらいの写真の数々。

家長と思しきじい様、ディズニーランド入り口で撮った家族の集合写真、笑顔のばあ様、七五三、ほんと色々な写真がぜーんぶ丁寧に額縁に納められてる。

ちょっと気になったので所有者に電話することに。

不動産屋ってよく嘘をつくイメージがあるけど、お客さんもまた嘘をつくのがこの業界で、なんとなくだけど「このお客さん、なんか隠してるな」と勘が働いた。

「お世話になっておりますー。
蝦夷不動産の鈴木ですー。
以前お話した通り本日物件の調査をさせて頂いておりまして。
ちょっと確認させて頂きたいことがあるのですが今よろしかったでしょうか?」

所有者の男性が応える。

「心理的瑕疵(要は事故物件の内容)について伺いたいのですが、20年前に亡くなった方がいらっしゃると。
それ以外で何かございませんでしょうか?例えば他にも亡くなってる方だったり、近隣にトラブルメーカーの方がいらっしゃったり」

少し間を置いた後、その内容については直接会って話がしたいと言われる。

いや、県外の人なのに大丈夫なんかいな。

別に電話でもいいのに、と思いつつその日は仕事を終える。

後日、物件の現地で所有者と待ち合わせ。

敷地内にお互いの車を停めて、何故か敷地の外へ出ることに。

敷地のブロック塀にそって歩くと不自然に盛り上がった茂みを見つける。

男性が草をかき分けると中から氏神様を祀るような小さな石の祠が出てきた。

「実はみんな死んじゃってるんです。
この家」

男性が言うには以下の通りだった。

この辺りは昔から飢饉の度に大変な被害が出たらしい。

この祠はそうした時に口減らしで殺された子供の霊を慰めるためのもの(今で言うところの集合墓地)。

今まで何度かこの敷地で家を建て替えている。
その度に不幸があったとのこと。

多分これが原因ではないか。

ほえー、ってなった。

「相続関係で巡り巡ってうちにこの家が回ってきたんですがどうも親戚筋に中々教えてもらえなくて。
なので確証はないんですけど多分これのせいだと思います」

男性が更に続ける。

「それで、別にこんなオカルトっぽい話あんまり関係ないかなって思って伏せていたんですけど、この家には変なルールがあって」

詳しく書き起こすとすごく長くなるので要約すると以下の様な内容だった。

ルールは簡単。
毎年一枚、お盆前にその家に住む人の写真を仏間に納めなければならない。

新しく撮った写真をご先祖様に見せて「この一年無事過ごせましたと報告する意味があるらしい(昔は名前を書いた紙で報告していたが、いつからか写真に替わった)。

それを怠ると不幸がある。
年齢が若い順にその不幸は早くやってくるようで、小さい子供の場合は一年持たないこともあるらしい。

ほえーってなった。

もう見ましたよね、と言いながらその男性が仏間の写真について触れる。

「あの写真、写ってる人はもうみんな死んじゃってるんです。
叔母さんが最後の一人だったようで、自殺の原因も子供が死んでしまったからだとか」

「うちもそんな気味の悪い所、あんまり触れないようにしていたんですが、ここ最近この地区の自治会長さんから電話をもらいまして。
まあ親戚筋からも話があったんですけど」

その電話の内容もかなり長くなるので要約。

ここ数年、この地区で変な死に方をする人が増えてきた。

本当はもっと前からそういったことがあったのかも知れないが最近は特に酷い。

この物件の所有者について、不幸があったり独自のルールがあるのは地区全体で暗黙の了解。

住む人がいなくなったことでこの家の外にまで犠牲が出ているのではないか。

早く誰かに住んで欲しい。
少なくともその人達が亡くなるまでは自分達は安全。

心理的瑕疵について周辺の聞き込みがあった時には地区全体で協力する。

という話らしい。

誰にも言うな、とのことだったそうだがどうにも話さずにはいられなかったらしい。

で、オチも何もない話なんだがうちの会社としてはその物件を売りに出すことにした。

10年前の自殺については勿論触れているが他はダンマリ。

うちの会社と付き合いのある悪徳弁護士によるとその件については説明義務がないと判断されるらしい。

そもそも地区全体でダンマリ決め込まれたら発覚しない話だしね、とも。

周辺相場よりもかなり安くて中々悪くない物件なんだけど広告してから2年間一向に売れる気配がない。

もう何度か値下げしたりハウスクリーニングを入れたりしてるんだけど何故か売れない。
事故物件であっても買っていく。人は普通にいるんだがこの物件だけは不思議なくらい売れない。

月々家賃以下のお支払いで住める豪邸、是非お買い求めください。

その後のことについては責任取れませんけれども、っていうお話でした。

ちなみに東日本の物件です
この間の台風で周辺は結構な被害を受けたがその物件だけは何ともなかった
不思議な力で守られてる、そんなお家
多分その家も早く誰かに入って欲しいんだろうなーって先輩社員と話してた

心理的瑕疵については広告で明示しなくちゃいけないからどうしても周辺相場より安く出さないといかんのよ
ただ下げすぎた感はあるんでその通りかも知れん

転勤族のハウスメーカー営業さんから聞いた話だと一番やばいのは四国って聞いた
地名を口に出せない所があるらしい
重要事項説明でもそこの地名だけは発音せずに契約が進行していく。んだそうな
なぜ口に出していけないのかは不明

「鈴木主任、先々月に引き渡した〇〇町の物件覚えてます?さっきそこの買主さんから電話があったんです」

先々月?ほえー、覚えてないす。

「すごく焦った様子で今すぐ来て欲しいと。
この後伺うんですがなんか怒っていて。
話もよく分からないのでちょっと一緒に来て欲しいんです」

引き渡し前ならいざ知らず、引き渡し後のトラブルに同席してもお金になりませんがな。
面倒なので行きたくなかったんだけど、俺が事務所に戻る前に課長から既に指名されてたらしい。

しかたないので車を出して現地に向かうことに。

お客さんなんて言ってたの?
「言ってないことがあるでしょ!って」

なにそれ?
「わかりません」

水道調べた?
「調べました」

インスペクションは?
「売主さん負担で実施しました」

境界確定は?
「やってます。
現地で売主さんにも確認してもらいました。
いつも通り」

心理的瑕疵は?
「ありません。
売主さんからの告知書もお渡ししてます」

暴力団?
「近くにはいないです。
変な人も」

なんだ、ちゃんと仕事してるじゃん。

なんで揉めてるのかも分からないまま現地に到着。

広い土地に普通の二階建て住宅。

外壁塗装が完了していてかなり新しい物件に見えた。

駐車場に黒いワゴン車が停まってて、その前に買主さんご夫婦がいた。

まだ若い。
ちょうど後輩と同じくらいの年齢。

「お世話になっております。
遅くなって申し訳ございませんでした」

後輩が買主さんご夫婦に頭を下げる。

そのあと何故か玄関の方に向かってもう一礼。

俺も自己紹介して本題を聞く。

「それで、今回こちらの吉田(後輩)が何か…」

「何かも何も、こんな話聞いてませんでした!自分の家に入れないなんておかしいでしょう!」

俺が話し終わる前に相手の奥さんがキレる。

入れないってどういうことやねん。

と言いますと?
奥さんが少しこちらに近寄り声を潜める。

「玄関のとこ、いるんですよぉ。
心理的瑕疵はないって契約の時に言ったじゃないですか。
いるんですよ」

ほえー?なに?おたくら見える人なの?

「いる、入れない、そう言われましても…」
要は幽霊がいて怖くて家に入れない。

こんな真っ昼間から?聞いたことない。

「売主様から告知書は出ていると吉田が申しておりました。
今一度吉田から売主様に確認させますので…」

「そんなに言うなら試しに入ってみてください!」
今度は旦那さんがキレる。

どうも自分たちは外で待っているから中に入ってみろとのことだった。

いやいや、そんなことしても解決しないだろうにと思ったけど、どうにも治まらないようなので仕方なく鍵を預かって中を確認することに。

庭から玄関へ向かう途中、後輩がずっと俯いている。

「買主さん達、正しいかも知れないです。
売主さんの告知義務違反かも知れないです」

ん?もしかして見えてる?
「今は見えないんですが、さっき本当に玄関の前に立ってました。
お爺さん。
人かと思ったんですけど、気付いたらいないし」

そんなこと言ってもあっちが確認しろって言ってるんだから仕方ない。

とりあえず玄関に到着。

手を入れたのはどうも外壁だけだったようで、玄関は昔ながらの曇りガラスをはめ込んだ引き戸のまま。

緩い社風のとこは知らんけど「営業は数字が全て!」っていう会社ではそういうこと考える余裕ないよ
みんな仲間だけどみんな敵
いくら可愛い子でもそういう対象として見れない

「とりあえず今ここにはいないんだよね?」

そう聞きながら鍵を回す。

後輩が頷く。

玄関を開けるとしばらく換気されていない、そんな淀んだ空気の臭いがした。

何にもないじゃん。

入ってみろと言われたことだし、とりあえず玄関で靴をぬいでお邪魔させてもらう。

さて、先輩である俺がお邪魔したっていうのに後輩は上がってくる気配がない。

それどころかまだ玄関の敷居を跨いでもいない。

「んー、んー」
俯きながら、拳を握りながら後輩が唸っている。

以前うちの会社で適応障害だかノイローゼだかを発症した子が同じような感じになったの見たことあって、あ、まずいなと思った。

「どうした?」

「んー、んーーーー!」

「分かった分かった、いるんだな、とりあえず買主さんから見えないように一旦こっちに来て。
辛いだろうけど」

そう言って玄関の中に後輩を引き入れる。

「多分話せないと思うから聞くだけでいいよ。
吉田さんには見えてるんだよね?」

「んー」

「ただね、確認とってもいないことで幽霊いましたとか、そういうこと言えないわけ。
分かるよね?」

「んー」

「とりあえずもう帰るから。
お客さんには俺から話しておくから。
吉田さんは余計なこと言わないでね。
あとなるべく普通にしてて。
今何が見えてるか知らないけど、こんなの一円にもならないから。
さっさと切り上げちゃうのが一番だよ」

で、その言葉の通り事務所に戻ることに。

「とりあえず何も確認出来ませんでした。
改めて売主様に確認致します。
後ほど連絡します」
そう言ってさっさと切り上げ。

帰り際、後輩がぎこちない笑顔でいると奥さんから「やっぱりいたでしょ。
髪の長い女の人」と言われる。

あれ、お爺さんじゃないの?
え、なんなの君ら。

帰りの車の中、後輩はしばらく俯いたままだった。

こんな状態で事務所帰ったらパワハラ疑われるのでコンビニで塩と水とコーヒーを買ってそのまま海に行くことに。

海岸の駐車場で降りて、後輩に塩かけて、自分にも塩かけて、お互いに塩と水を口に含んで吐き出す。

車の中にも気持ち塩を撒いておいた。

事務所にはまだしばらく帰れません、場合によっては直帰しますと連絡いれるとめっちゃからかわれた。

後輩へ「売主さんへまずは連絡するように」と言い電話をさせる。

「売主さんからは知らないって言われました。
少なくとも、自分達が住んでいる間そういうことはなかったって」

変だよね。
あの人達が嘘ついてたってわけじゃないんでしょ?

「はい。
私も確かに見ました」

なにが見えたの?あの人達は女の人って言ってたし、吉田さんはお爺さんを見たんだよね?

「それが、鈴木主任が引き戸を開けた時は確かにお爺さん一人だったんです。
両手を広げて通せんぼしてました。
すごく怒った顔だったんです。
怖かったです」

で、それを知らずに俺は上がってしまったと。

「はい。
そのあと家に上がったらお爺さんが今度は急に笑顔になって」

受け入れてもらえたってこと?

「いえ、なんか奥の方に手招きされてました。
そうしたら色んな所から他に3人くらい出てきて。
みんなで手招きしてました」

うわ、こわっ。

「それと、多分みんな津波とかで亡くなった人かもしれません。
濡れてました」

津波?
確かに東日本の時は津波が来た地域だったけど、あの物件はそんなに大した被害もなかったはず。

さて、これも特段オチのない話なのでここらで終わり。

ただ後日スナックの子に聞いた話なんだけど、海岸沿いで暮らしてる人はお盆だったり3.11の日だったり、そういう節目の時期に「あ、海から帰って来たんだな」って雰囲気を感じるらしい。

陸に向かって歩いてるんだと。

今回は売主さんにも告知義務違反がなく尚且つ後輩が見たっていう幽霊も複数だったので、恐らく陸から上がってきた時に帰る家が見つからず、たまたまいい感じの空き家を見つけて住み着いてしまったんじゃないかっていう俺の勝手な推測です。

買主さんは最初の方こそ真実を明らかにする!とか言って話を聞かなかったが結局その後何も見つからず、うちの事務所にわざわざ謝りに来ました。

ただお祓いだけはしたらしい。

その後については知りません。

墓地がどこだか分かりません

「買取して欲しい土地があるんですけど」
事務所にそんな連絡があったらしい。

地価もそれなりに高い所でおまけに700坪。

大規模分譲出来るやんけ!と大喜びしてまずは現地でアポイントを取ることに。

2日後にお客さんの自宅で会うためにまずは謄本、公図、測量図を法務局のデータベースで取得。

一筆の土地じゃなくて複数の土地が集合しているような感じだった。

公図は旧土地台帳付属地図、いわゆる字限図ってやつで、まあ簡単に言うと土地の並びや大きさが明治時代の測量を元に作成されたものだから現況の参考に出来ないって代物だった。

未だに多いっていうか、意外と珍しくないんだよねコレ。

そんな中、その公図に浮島みたいな土地があることに目がついた。

他は全部依頼者が登記名義人になってるんだけど、そこだけが違う。

所有者「○○町第10地区会」
ほえー、なんじゃこりゃ。

地目「墓地」
へ?

面積「6平米」
ちっちゃ。

甲区には受付年月日が昭和半ばになっている。

国土地理院の上空写真データを閲覧したけど、おおよそ墓地だの記念碑だのの類は見つからない。

その墓地の登記名義人の住所を調べてみるとどうも地区の集会所になっているようだった。

こればっかりは人に聞かないと分からん。

とりあえずそこで事務的な調査は終了。

2日後、依頼者に会いに行く。

「どうもー。
はじめましてー。
蝦夷不動産の鈴木と申します。
この度は弊社にお問い合わせ下さいましてありがとうございました」
現所有者は相続したばかりの60代くらいの女性。

ちょうど売地のすぐ近くに家があって、高齢の父とつい最近まで一緒に住んでいたらしい。

「あら、鈴木さん、お若いのに主任さんなのね。
宅建も持ってらっしゃるようで」
「そんなそんな若いだなんて。
ちなみに何歳に見えます?」

とかそんな雑談をしばらくしながら早速本題へ。

「今回売却をご希望されている土地、分かりづらいかも知れませんがこちらの公図でご確認頂けますでしょうか」
と言いながら公図と住宅地図を確認してもらう。

「はい、これで間違いないですよ」
「ありがとうございます。
それで少し気になったことがあるので、実際現地に立ち入らせて頂くことは可能ですか?」

所有者は快く承諾。

それどころか一緒に見たいとまで言ってきた。

どうも気に入って貰えたらしい。

現地まではすぐなので2人で歩くことに。

道中、所有者なりのセールストークが始まる。

ここら辺は静かだけど、頭のいい人が集まる学区だから人気はある。

元々お城が建っていた高台だった。

そういう訳で住んでいる人も、特に昔から住んでいる人は武家特有の気品がある。

うんうん、そうですよねーと相槌を打ってる間に現地到着。

そこだけが全くの手付かずで、一部が砂利、一部が草地と人気のある住宅地としては珍しい場所だった。

700坪のうち100坪が砂利道で、当然その砂利道も今回の依頼人が所有している。

道を進んだ先に600坪の大きな広場があるといった形になっていた。

現地には境界票も杭もない。

拉致が開かないので早速聞いてみることに。

「この広場のどこかに墓地か石碑があったはずなんですがご存知ですか?」

所有者曰く、父親から話を聞いたことはあるが詳しいことは分からないらしい。

自分が生まれた頃には既にそうした物は無かったとのこと。

ただしその土地の自治会長さんが詳しいようで、後で話をしておくとのこと。

とりあえずその日はそれで終了。

後日自治会長さんのご自宅に伺って話を聞くことになった。

自治会長さんとお会いする予定だったんだが、当日は何故か付近のお寺の住職さんも同席していた。

簡単に挨拶をすませて話を聞く。

「今回は本当にありがとうございます。
それで早速なんですがこの墓地の件で詳しくお話を伺いたいと思いまして」

悲しいことにこういう調査で協力的な人は珍しい。

まあお金にならないし、不動産屋なんて積極的に会いたい人種じゃないからね。

ただ、今回は自治会長さんも住職さんも快くお話してくれた。

お二人曰く、こういうことらしい。

・登記名義人は確かに自治会ということになっているが、実質的な管理はお寺に任せてある
・自治会から土地の処分や活用に関してはお寺さんに任せるという覚書もある
・どうせそんなに大きい土地でもないからお金については期待していない
・今回の売買には協力する

とのことだった。

お二人とも人と話すのが好きなようで、その後しばらく雑談が続く。

結婚してる?いえ、まだですとかそんな話。

仕事柄というか、その土地の曰くとかを聞きたがる質が出る。

「話が戻ってしまうんですけど、このお土地って元々何があったんですか?墓地か記念碑か、ちょっと気になりまして」

そう聞くと自治会長さんから
「あの辺り一帯、実は刑場だったんだよ。
明治の始めか江戸の終わりか、その辺りまで斬首刑で使われていた土地だったんだ。
小さい土地だろ?供養塔があったらしいけど、今はこちらのお寺さんに管理して貰ってるんだわ」

ほえー、なにそれ。

住職さんが補足。

「うちでもざっくりとした資料しかないんですが、自治会長さんが言ってた通りで間違いありません。
今はこちらの敷地に供養塔ごとお引越しをしてもらいました。
先代の頃にそうした話になったようです」

その後司法書士さん、土地家屋調査士さん、悪徳糞弁護士に相談して、うちで買い取ったあとに建売と土地売りをやることになった。

モデルハウスとしてウチの建売を2棟ほど建てて、他は建築条件付きで売り出す的な。

一年くらい時間は掛かったけど無事買取は成立。

早速建売の建築が始まった。

建売が完成する前に結構な問い合わせが来る。

当たり前。

元々人気のエリア。
物件はすぐに売れていった。

あっという間に入居者で埋まっていき、そこはすぐに完売。

曰く付きの物件だけど特段なんのトラブルもなく、俺はちょうど引越しの挨拶廻りをしていた。

入居してからしばらく経つけど、その後どうですかーっていう感じ。

どのご家庭も皆んな幸せそうだったが共通して「気になることがあるんだけど」と話始めた。

曰く、夜になると男の人が大声で歌っている時がある、とのこと。

「まあ中にはそういう人もいるのかなーって思ったんだけど、仕方ないのかなーって。
すごく短い歌だし、あんまり気にしないようにしてます」

不思議なことに、どのご家庭もこれを言う。

ってことは、この分譲地の一体誰が歌っているんだろう。

もしかしてだけど、首を斬られた人の中に歌が大好きだった人もいた、そういうことなんだろうか。

いつも通りオチはないんだけどこの話はこれでお終い。

家族全員頭おかしい

件の後輩社員が絡んだ話。

ちょっと汚い表現があるのでご飯食ってる人はご注意を。

外回りの最中、女性の後輩社員から電話が掛かってきた。

「鈴木主任、今どこですか?」
今○○町だよー、コンビニで一服してるよー。

「これから○○町で売却相談があるんですが、ちょっと同席してくれませんか?」
この後フリーだから別にいいよー、でも顧客データの入力あとで手伝ってねー。

とりあえず事務所に戻って後輩を拾って現地へ向かう。

ちなみにその子は普段社有車で営業してて通勤は徒歩。

俺は自家用車持ち込みで営業してます。

こういう時は面倒なんでいつも俺の車で移動するんだ。

車中で話を聞く。

同席ってことは何かトラブルだろうし。

今回はなに?
「一昨年土地を買ってくれた方が家を建てて、それを売りたいって言ってます」

ほう、それで?
「こっちに落ち度はなかったんですけど、オタクから買ったんだからオタクが売る義務があるとかで。
なんか大分まくし立てられました」

そんなもん適当に預かって売れなきゃごめんなさいすればいいのにー、とか思いつつ現地に到着。

現地は閑静な住宅地。

古いお家と建売住宅が混在してて多少道が狭い。

昔ながらの住宅地って感じ。

お庭に車を停めてまず目に入ってきたのは真っ赤な鳥居。

道路を挟んで向かい側に真っ赤な鳥居があって、石の階段がずっと続いている。

本殿は見えないくらい長い階段。

南向きの物件なのに神社のある山で影が出来ていて暗い雰囲気。

なんか嫌な所だなーと思いながら早速呼び鈴を押して中に入れてもらう。

玄関で応対してくれたのはその家の奥さん。

やたらと声が大きい人でしかも早口。

リビングに入って座るまでずっと何かを話してるんだけど不思議と頭に入ってこない。

某大手ハウスメーカーで建てた家で中々いい造りだった。

ただ気になるのはやたらと状態がよろしくない。

壁紙が所々、何か糊付けしたものを剥がした時のような跡があって汚く見える。

リビングも醤油か何かをこぼしたような跡があってしかもベタついていた。

リビングに続く和室は更に酷いもんで畳に大きなシミがある。

犬でも飼ってるのか、畳がほつれてるような部分もあった。
ちょうど爪でひっかいたようなそんな感じ。

家主が隣の家に住んでいるババアみたいだなと思った
大声でなんか宅配業者とトラブル起こしてたりおかしいw
ババアの80代母親が死んでから本性いうか姿を現すようになった

後輩と奥さんがお話。

売買した時を振り返っているようだった。

まくし立てられたとか言ってたのに全然そんな雰囲気じゃない。

一応2人の話を要約するとこんな感じ。

・希望の学区でようやく土地が見つかった、蝦夷不動産には感謝している
・しかし学校に通ううちに小学生の娘さんが酷いイジメに遭っているらしい
・それで今回この家を売って別の土地で新生活を送りたい
・売買した当時は前所有者の家が建っていて、それを解体して建てたものであるとのこと(築年数が大分経過していたが中古住宅として売りに出ていたものを解体した)
・今回売りに出そうと思ったが中々予定が出来ず、吉田(後輩社員)に急遽来て欲しいと思って連絡した

2人が話しているの内に少しずつ気になったきたのが、まず奥さんがうるさいということ。

早口で声も大きいのは先程書いた通りなんだけど、変な話し方をするのでそれが余計に耳障りだった。

その話し方なんだが、最初の発音がやたらと高い音で例えるならドップラー効果。

パトカーとか救急車がサイレン鳴らすじゃん。

んで遠ざかると音が低くなっていく。あれ。

「↑そうそうそう!!あの時は本当に寒い時期でね!!↓」みたいな感じ。

で、次に気になったのが獣臭。

畳のシミとか傷とかで、なんとなく犬でも飼ってるのかなって思ったけどそういった様子もない。

ペット用品とかその類も全然見当たらなかった。

なのに段々とその獣臭が強くなってくる。

そして更に気になったのが後輩のことだった。

奥さんの話し方が伝染してきてる。

大きな声、早口、最初に高い音で最後に低い音。

モノマネして怒らせようとしてんのか?と思って多少ヒヤヒヤした。

そうこうしてるうちに娘さんが学校から帰ってきた。

奥さんが今日はどうだった?と聞くとこれもまた例の話し方。

「↑またね、バカ清助に机蹴られたの!!引っ掻いたら先生に怒られた!!私悪くないのに!!お母さん、今度先生のこと叱って!!↓」
とかこんな感じ。

「大変ですね」と声を掛けると更にヒートアップ。

結局、本題に入るまでに一時間以上も学校の話を聞かされた。

こういうのって難しくて、相手がマシンガントークだと中々こっちの話を切り出すタイミングが掴めないんだよな。

ようやくこっちのペースで話が出来ると思って売却について話を始める。

今回ほぼフルローンで頭金がほとんど入っておらず、諸費用も含めた借入になっている為売却しても利益は出ない旨。

それどころか、周辺相場から考えて数百万円手元の資金を拠出しないと抵当権を消せない旨(要は売れない)。

仲介手数料など売却時に諸々の諸費用が掛かってくる旨。

依頼人からすると結構ショッキングな内容のはずなのに本人はどうも上の空みたいな様子。

こりゃ困ったなと思った。

おまけに娘さんは和室でずっと走り回っている。

六畳の和室をぐるぐるぐるぐる。

イジメによるストレスなのか落ち着きがない。

その内、奥さんからご飯を食べていって下さいと提案される。

え?まだ4時なんですけど?

流石にそういう訳にもいかないし(何より汚いお家でご飯とか食べたくないし)、そろそろ帰らせてもらおうかなと話を切り上げるんだけど、奥さんはそれを無視するようにテーブルにご飯を並べる。

びっくりするのが、食卓に並んだものが全部茶色。
要は肉料理ばっかり。

角煮。
牛の切り落とし肉をただ焼いただけのもの。
フライドチキン。
皿の端に食べ終わった後の骨が置いてある。
これは汚い。

更に困ったことに、後輩はノリノリでご飯を食べようとしている。

「↑うわー、美味しそうですね!!↓」
いやいや、営業だとしてもそれはやめて。
本当に食べたい?骨がそのままなんだよ?俺は帰りたいの。

奥さんが食事の準備をしていると今度は娘さんが癇癪を起こし出す。

畳の上で地団駄を踏んでぎぃーーーーと叫んでる。

で、間もなく娘さん失禁。

スカートから畳にびちゃびちゃびちゃ。

完全に地獄絵図。

そこで俺は意を決して「いやあ、長居してしまって申し訳ございません。
この後私も吉田もスケジュールがあるので失礼します。
後日、査定書を郵送させて頂きますのでご確認下さい」と言って逃げるように退散。

奥さんははっと我に返ったのかそれ以上引き留めるようなことはしなかった。

後輩は後輩で「え?食べて行かないんですか?」と。

いや、お前いい加減にしろよ。

娘さんは、三年生とか四年生になってたんじゃないかな
言動はアレだったけど身長はそれなりに高かったと思う
失禁した時はマジでびっくりした

事務所に戻る途中、後輩はテンションが高いままだった。

「↑最初は怒られたかとおもったんですけどいい人でしたね!!↓」

「↑今回の案件、多分私一人で出来そうです!!迷惑かけてすいません!!↓」

「↑ご飯美味しそうでしたね!!↓」

こいつこんな性格だったっけ?
まあいいや。

とりあえず今日中に査定書作って明日郵送しておきなよ、と言ってその日は終了。

気にしすぎかも知れないけど車の中にまであの獣臭が残っていた。

ちなみにその後輩社員、仕事とは関係なしに自殺の第一発見者になったりしてて歩く事故物件なんて言われてる
他で言われてるのとはちょっと意味合いが違うけど

で、面談した日から数日、件のお家からまた電話が掛かってきたらしい。

今度は旦那さんでしかもガチギレしてると。

男性客がブチ切れてる現場には女性社員一人で行かせないっていう部署での暗黙のルールがあって、やっぱりその日も俺が同席することに。

簡潔に内容を聞くと、どうも旦那さんは売りに出すつもりはないらしい。

それならそれで構わないんだけどどうも謝罪しに来いとのこと。

後輩社員と現地に向かう。

道中「こっちは何にも悪いことしてないんだから変に謝ったりしないように」と釘を刺す。

トラブルって一方的に謝ればいいってもんでもなくて、変に「責任を感じてる」とか言っちゃうとそれにつけ込まれて「じゃあ責任取れ、誠意を見せろ」って話になりやすいのよね。

現地に到着。

旦那さんが出迎える。

「↑いやあ、忙しい中すいませんね!!こっちも中々休みが取れないもんですから!!↓」
あれ?怒ってない。

いや、それよりやっぱりあの話し方だわ。

前回同様、リビングで話をする。

その日は土曜ってことで奥さん、娘さんもいる。

またマシンガントークされてはかなわんのでこちらから切り出す。

「この度、弊社に対してご自宅の売却は考えていないということでお叱りの電話を頂きました。
その件に関してですがこちらの吉田はあくまで不動産の査定書をお送りしただけ。
まだ売却活動は行なっておりません」

旦那さん、自分が怒っていた話なのに上の空。

似た者夫婦か?

「また、こちらのご自宅ですが所有者は旦那様ということになっております。
所有者本人の了解が頂けない限り、そもそも不動産売買は行えません。
今後ご自宅を勝手に売られてしまったりだとか、そういうことはございませんのでご安心下さい」

上の空の旦那さんを突然奥さんがぶっ叩く。

野球のピッチャーがボール投げるじゃん。

あの手の振り方で思いっきり頭ばちーん。

びっくりした。

「↑娘ちゃんが苦しんでて、あんたはそれでいいの!?↓」

「↑そんなこと言ったって俺はこの家が気に入ってるんだよ!!↓」

夫婦の言い合いが続く中、娘さんは我関せずといった具合で畳の上をバタバタバタバタ走ってる。

その内落ち着いて、奥さんがまたご飯をご馳走しようとしてくるが今回もさっさと切り抜け。

とりあえずまた何かあれば連絡下さいと言ってその場を後にする。

帰りの車中、後輩のテンションはまた高かった。

「↑やっぱり、依頼人を幸せにしてこそ不動産営業ですよね!!私あの家絶対売ります!!↓」

いや、話し方聞いてた?旦那さんの了解が無かったら売れないんだよ?

「↑そんなこと言っても娘ちゃんがイジメられっぱなしじゃ可哀想ですよ!!奥さんの意見が正しいです!!↓」

正しいとか正しくないとかじゃなくて、売れないもんは売れないの。

「↑娘ちゃんちゃん、ワンちゃんと楽しそうに遊んでましたね!!ああいう子供の姿って癒されます!!↓」

いやさ、だから話聞いてる?
っていうかワンちゃんって?やっぱりあの家犬飼ってんの?

「↑え?お家の中で遊んでたじゃないですか!?ずっと元気に追いかけっこしてましたよ!?」

は?家の中?ずっと?
そんなもん居なかったけど。

そこで後輩が
ぎぃーーーーっと唸り始める。

地団駄を踏んでシートベルトがギチギチ鳴るくらい身体を揺らす。

で、失禁。

色々パニクったけどとりあえず近くのコンビニに車を停める。

冷静になったのか、すいませんすいませんと助手席で泣いていた。

ここで待っててと指示して店内で何枚かタオルを買う。

車内に戻ってそれを手渡しながら後輩の自宅を聞き出す。

防水シートの車で本当に良かった。

「すいませんでした」

「いや、別にいいよ。
とりあえず君の家に送るけどいいよね?っていうかそうするしかないでしょ」

「はい、お願いします」

後輩の家に到着。

普通のアパートでとりあえず風呂入って着替えるように言う。

あと食器用洗剤と水の入ったバケツ持ってきて、とも。

とりあえず応急措置でシート洗わないと。

アパートの駐車場で車を洗うこと一時間。

携帯に後輩からの着信。
落ち着いたんで上がっていってくださいとのこと。

車内での様子が大分異常だったんでとりあえず話を聞くことに。

「うん。
それでさっきはどうしたの?体調悪かった?」

「いえ、自分でもよく分かりません。
カッとなっちゃって、そしたらああなってました」

「あそこの家に行ってからだよね。
変になったの」

「多分。
っていうかやっぱり変でした?」

「うん、普通に最初から。
人格変わったのかって思ったもん。
やっぱアレかな。
その犬がどうって話に関係してんのかな?」

「そうだと思います。
っていうか鈴木主任は本当に見てないんですね?」

「うん、全然」

「とりあえずさ、今日は仕事あがりね。
会社には俺から言っておくから。
あと管理部の田村さん。
知り合いの地主さんが神主やってるんだって。
連絡先教えてもらいな。
うちも地鎮祭とかでお世話になってる人だから」

と、その日はそれで終わり。

後日、後輩はいつもの感じに戻ってて、なんかいつも迷惑掛けてるお詫びに飲みに行きましょうとのこと。

その後の経過が聞きたかったし承諾。

家賃保証の話は業界の人間が聞いても感心するレベルで闇が深い
っていうか○東とか○建とか、営業マンが魑魅魍魎みたいなやつ多いよ

後輩による後日談。

紹介してもらった神主さんの話だと、ちょうどあの物件の目前にあるのが稲荷神社。

よう分からんけどそこの狐様がその家に憑いてるんじゃないかと。

で、神主さんも見えるわけじゃないから断言は出来ないけど後輩はそこの空気に当てられただけ。

折角家に憑いてるのにわざわざその日来たばっかりの他人に心移りしないだろうし、何より子供と遊んでたってことはその子供に憑いてるんだろう、子供が好きなんだろうとのこと。

効果あるかは分からんけどとりあえず形式的なものはやっておく。

別に憑かれてるってわけでもなさそうだし、その家族と距離を置けば問題ないんじゃないか。

って話だったらしい。

ほえー、って思いながらお酒を飲んだ。

「もうあの家族とは絶対に会いません。
無理です」とのこと。

これもオチがないけどそういう話。

とりあえず俺の話はもう終わりです
そんなにネタがあるわけじゃないからこんなもん

関東の稲荷神社ってのは複数種に分ける事が出来ると思う。

278 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/04/02(木) 01:02:00.784 ID:rru8PogUa

第一に、京都伏見稲荷の分社。

第二に、豊受姫などの豊作の神様。

第三に、女化神社の分社(女化稲荷)
第四に、都内(江戸)に多かった水商売の神様としての稲荷。

そもそも何故キツネが神様なのか?
これは俺独自の見解なんだが、世界中、キリスト教やら大手宗教が普及する前の古代社会において、動物を神様と崇めるのはポピュラーな事だった。

エジプトではネコ、ハヤブサ、ヘビ。

ネコ信仰はエジプトぐらいだが、ハヤブサやワシ・フクロウなどの猛禽類を神と崇める地域は多い。

ヘビに至っては世界中で信仰されていた。

そして日本の狐信仰、これらには共通点それは『ネズミの天敵』だという事。

古代社会において、食料不足に備える為に食料を貯蔵する文化が誕生すると、人間にとってもっとも恐ろしい獣は熊でも狼でもなく『ネズミ』となったワケだ。

そのネズミを取る動物は、世界各地で神と崇められるようになっていった。

これが日本の稲荷信仰の始まりなんじゃないかな?と俺は思っている。

だから上記の第二に挙げた『豊受姫などの豊作神』が稲荷神社の主神となっているんじゃないかと。

伏見稲荷のお稲荷さまも安倍晴明伝説では女性(キツネだからメスと言うべきか)だよね。

女化稲荷もその名の通り女性、まあ女化伝説自体が安倍晴明誕生秘話の関東版みたいなモンだから当然。

豊受姫も女性。

江戸で稲荷を信仰した水商売の人々も女性。

つまりお稲荷さま、稲荷神社は女性の神様ってのが共通点なんだよね。

今回のキツネ憑きも、旦那さんを除けば憑かれた操られたのは全員女性。

奥さんは娘の為に出ていこうとしてるのに、旦那さんが「俺はここを気に入ってる」って言ってるのも意味深だ。

安倍晴明伝説も女化も「狐の嫁入り」の話だからね。
旦那さんは魅入られちゃったんじゃね?

その稲荷神社が俺がいった4タイプ(江戸の水商売稲荷は関係無いと思うから事実上3タイプ)のドレに該当するのかも気になる。

(了)

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