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短編 山にまつわる怖い話 ヒトコワ・ほんとに怖いのは人間

ノエ君

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俺がリア消四年の頃だから、もう二十年くらい前のことなんすけど、 一コ上の友達に、ちょっとキワイ感じのノエ君(本名は忘れた)って子がいたんですよ。

914 名前: ロンパー ◆YdpC/gBCw. 03/12/15 15:31

彼は山の生き物が大好きで、レア種をゲットするためには手段を選ばない。

ヒラタクワガタを捕まえるために山火事を発生させたり、コウモリを集めるためと称して有線放送をジャックし、集落をパニックに陥れたりと、ほとんどテロ行為に近い無法者っぷりで町中に悪名を轟かせてました。

そんなノエ君が、ある時期を境に狂気のコレクションをピタリと止めてしまったんです。

「××ため池の水を抜くらしいぞ。スッポンや鯉の掴み取りパーティーだぜ!」

そんな誘い水を撒いても一向に乗ってこない。

今までのノエ君なら、学校を早退しかねない位おいしい話なのに…

「ノエ君日和っちまったんじゃねー?」

「ちょっとガッカリもんだよな」

「見たくねーよ、そんなノエ君」

「何があったんだよ?」

「ママに止められたってか?」

俺たちが軽く煽りを交えつつ尋問してもノエ君はなかなか話したがりません。

ギリギリの交渉の末、銀のエンゼル三枚でようやくオトしました。

「…このあいだから、大城の森に行ってたんだよ…」

そこはマムシ多発地帯で、大人でも立ち入る者は少ないデンジャーゾーンです。

穴場探しのためだけに一人でそんなところへ行くノエ君はやはりハンパねェー。

「…したら、でっけー水たまりがあったんだよ。昨日まではなかったんだぜ」

ノエ君が近づいてみると、水面下で何かがうねうねと蠢いている様子。

覗き込んでみると、真っ黒なイモリが数え切れないくらい折り重なってました。

「見たことないくらいデカいイモリでさー、思わず両手でガバって掴んじまって」

すぐさまひっくり返して赤と黒の斑模様が毒々しい腹を確認。

ノエ君うっとり。

「でさ、この場所を秘密にしようと思ってさ、罠仕掛けて隠したんだよ」

この辺の思考回路は何となく判るんですが、そこからが本領発揮です。

森を出たノエ君は、畑から盗んだ有刺鉄線を巻いて水たまりの上に被せました。

その上から木の枝や葉っぱで覆ってトラップ完成。

全ての作業を素手でやったので両手は血だらけになったみたいですが、ノエ君は全く気にしていない様子。

「手大丈夫だったの?」

「いやーそれがイモリ触ってゴム臭くてさー、洗ってもなかなか取れないんだよな」

当然、誰かが間違って踏んだらどうなるんだろう?みたいな懸念は眼中無しです。

万全のセキュリティ対策を終えたノエ君は、森を出て家に帰りました。

次の日の放課後また森にやって来たノエ君は、警備システムに異常を発見。

「木の枝なんかが退かせてあって、鉄線の棘に布や血みたいなのが付いてたんだよ」

ここは誰かに狙われてる……

そう思いこんだノエ君は矢も楯もたまらず、無我夢中で有刺鉄線をひっつかんで退かせました。

やっぱり素手で。

水たまりの底には……

いました。

昨日と同じように無数のヤモリの群がうねうねと。

安堵のあまり兵士のように膝を突いたノエ君の耳にあらたな異変が

─wwヘ√レvvw^ ピ──ヘ√レvv────!!

まるで短波ラジオをチューニングしているかのような、耳をつんざく高周波音! 

誰かが有線放送を使ってコウモリを捕まえようとしている!!

特許を侵害された憤りもあらわに、後ろを振り向くノエ君。

その目に奇妙なものが飛び込んできました。

森の入口に、一見ヒトのようなものが立っている。

ヌーンと突っ立ているそいつが高周波の発生源のようですが、口が閉じてます。

無表情、と言うかノッペリした顔は、まるで選挙のポスターのよう。

──wピwヘ√レvw^ ──ヘ√レvキュル───!!

さすがに気味が悪くなって脇に退くと、そいつはノエ君の目の前をスーッと横切って水たまりの方へ向かいました。

その時、そいつが異様に薄っぺらいのに気が付きました。

厚さは五センチくらいしかない体のツルリとした表面に、ヒトの姿、服や手足、顔などが印刷されたように描かれています。

薄っぺらいヒトのようなそれは、水たまりの縁で止まると、急に音を出すのを止めて、ゆっくりと溶けはじめました。

イモリの群れがビチビチと暴れだしたのが見えます。

それを見たノエ君の勇者魂に火がつきました。

「オレのイモリに何するんだ!」こんな状況下で堂々と既得権を主張する人類代表ノエ君。

しかし、そんなド根性っぷりもそいつには通じませんでした。

──wケwヘ√レvw^ オレ──ヘ√レvするんだ───!!

そいつは鳴き声?をノエ君の声に変化させながら、ヌヌヌ──ンと伸び上がり、こっちへ向かってくる様子…

さすがにヤバイと感じたノエ君は、身を翻すと一目散に逃げ出しました。

──wレwヘ√レvw^ヘ√レvにするんだ───!オレのイモリニナニスるんだ───!

後ろから甲高い自分そっくりの声が追いかけてくるのを振り切って、ノエ君は森を脱出しました。

「…で、次の日に行ってみたんだけど、水たまりなんて跡形もねーんだ」

それでガックリきたノエ君は、しばらくは大人しくしていようと誓ったようです。

「だって、そんなのと競争したって勝てねーだろ」

なんだかイイ加減な説明だし、聞いて損したみたいな空気になって、銀のエンジェルは二枚しか渡しませんでした。

ノエ君は平気で嘘を付くような人間だったので、本当のところ何があったのかは分かりません。

案外、ママに止められた、というのが真相のような気もします。

そんなノエ君も、翌年には堂々復活。

××ため池の水を抜く際にフライングで池に入り、排水溝に詰まって溺死しました。

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