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短編 r+ 洒落にならない怖い話 ヒトコワ・ほんとに怖いのは人間

ポコさん r+7,312

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私の近くの公園には、いつもポコさんという大道芸人が週に三回来ていた。

顔は白粉で白く塗り、眉毛を太く描き、ピエロのような格好でいつもニコニコしていた。紙芝居をしたり、ジャグリングを披露したり、風船で動物を作ったりと多才な人だった。ポーポーとラッパのような笛を吹きながら、小太鼓をコンコンと叩くのが彼の登場の合図で、それが「ポコさん」という名前の由来だった。

その音が聞こえると、子供たちはもちろんのこと、中学生や子連れの母親たちも公園に集まった。しかし、ある日を境に、ポコさんはぱったりと姿を見せなくなった。

最初のうちは「今日はお休みかな?」と思っていたが、一週間、二週間と経つうちに、子供たちは「今日こそ来るはず」と待ち続けた。それでも、四ヶ月が過ぎてもポコさんは現れなかった。

そして、四ヶ月後のある日——

ポーポー、コンコン。

懐かしい音が公園に響いた。子供たちは歓声を上げながら駆けていく。私も友人たちと急いで向かった。公園の中央では、笑い声とも叫びともつかぬ奇妙なざわめきが広がっていた。

ポコさんの前には十六人ほどの子供たちが座っていたが、いつもならいるはずの母親たちは皆帰っていった。ポコさんの様子を見た瞬間、彼女たちは顔をこわばらせ、小さくざわめきながらそそくさとその場を離れた。そして、子供たちもいつもと違って静かだった。

その違和感の正体はすぐに分かった。

ポコさんは、白粉を厚く塗った白い顔に、目と口から滴るような赤い血のペイントを施していた。皮膚に浮き出た血管が妙に生々しく、いつもは滑稽だった太い眉毛も、不気味なほど歪んで見えた。髪の毛は白髪に変わり、ぼさぼさと乱れている。血走った目をぎょろりと見開きながら、ポーポーコンコンと不規則に音を鳴らしていた。

演出の一つだろう——そう思って、私たちも座って演目の開始を待った。

やがて、ポコさんが紙芝居を取り出した。「さーて、始まるよー。今日の紙芝居はー」

次の瞬間、子供たちは悲鳴を上げた。

『最愛の死』と赤い手書きの文字が躍る表紙。そして、一枚目に映し出されたのは、棺の中に横たわる死装束の遺体の写真だった。

子供たちは怯え、大人たちが慌てて駆け寄った。「おい、ポコさん、これはひどすぎる!」

しかし、ポコさんは聞く耳を持たず、紙芝居をめくる。

次のページには、血まみれの遺体の写真——その体は不自然にねじれ、顔には恐怖の表情が張り付いたままだった。服は裂け、皮膚には深い傷跡が残り、赤黒い血が乾いてこびりついている。まるで助けを求めるかのように、指先がわずかに動いたように見えた。

子供たちは泣き叫び、逃げ惑った。大人たちはポコさんを止めようとしたが、

「お、おーまーえーか!!!」

ポコさんは突然叫び、太鼓のバチや笛を振り回して暴れ出した。驚いた子供たちは悲鳴を上げながら四方に散り、大人たちは一瞬動けずにいた。しかし、ポコさんはますます興奮し、地面を太鼓のバチで乱打しながら、泡を吹くように口を動かして何かを呟いていた。二人の大人が意を決して取り押さえようとするも、ポコさんは身をよじり、獣のような唸り声を上げながら抵抗した。最終的に数人がかりで押さえつけ、ようやく静かになった頃、通報を受けた警察が駆けつけた。その間、公園は恐怖と混乱の渦に包まれていた。

あとで聞いた話では、ポコさんの身内が亡くなったという。町の噂によれば、それはポコさんの目の前で起こった轢き逃げ事故だった。犯人は捕まったものの、やりきれない思いが彼を壊してしまったのだろう、と囁かれていた。

しかし——この話には続きがある。

ある朝の五時ごろ。

ポーポー、コンコン。

笛と太鼓の音が、誰もいないはずの公園から聞こえた。

八時ごろ、学校へ向かうために家を出ると、公園のあたりが騒がしかった。近づくと、ビニールシートが張られ、警察が出入りしていた。

ポコさんは、公園の中央でいつもの格好のまま、自ら命を絶っていた。

それ以来——

誰もいないはずの公園から、ポーポー、コンコンという音が聞こえるという噂が後を絶たなかった。

ある夜、公園の近くを通りかかった友人が、ふと音のする方に目を向けた。そこには、ぼんやりとした人影が一つ、ゆらゆらと揺れながら立っていたという。恐る恐る目を凝らすと、それはポコさんの格好そのままの何かだった。白塗りの顔、乱れた白髪、赤く滲む目元。友人が後ずさると、その影はゆっくりと顔をこちらに向けた——しかし、そこには顔がなかった。

悲鳴を上げて逃げ出した友人は、その日以来、あの音を聞くたびに体が震えると言っていた。

深夜、家の前の道を、誰かが笛と太鼓を鳴らしながら歩いていたと語る者もいた。

私も何度か耳にしたことがある。

しかし、その音色は、以前の陽気なものとは違っていた。

ただただ、悲しげな音だった——

[出典:720: 本当にあった怖い名無し:2010/07/24(土) 03:23:49 ID:FKv3ogQo0]

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