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サエノ神の夜語り r+2966

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これは、丹沢を訪れた旅人が語ってくれた、奇妙な一夜の出来事だ。

夜露が肌を刺すような寒さで、やむなく道端の祠に身を寄せた。「サエノ神」と書かれた小さな木の札が風に揺れていたが、それ以外には目立ったものもない、ささやかな祠だった。旅人は荷物を枕に横たわり、風の音に耳を澄ませながら眠りを待った。

夜が更け、深い闇が山々を包み込む頃、どこからともなく声が聞こえた。低く、落ち着いた声と、それに応じるもう一つの声。祠の外には人影どころか動物の気配すらない。それでも、声は確かに耳を打つ。

「お~い、サエノ神。そろそろ行こうや」
「いや~今日はダメだ。お客人が来てるんでな。今日のところはみんなで行ってくれや~」

そのやりとりは、まるで祠の中から響いてくるようだった。旅人は目を閉じたまま、夢か現実か分からないまどろみの中でその声を聞いた。やがて静寂が戻り、またしばらくしてから別の声がした。

「サエノ神よ~今帰ったぞ~」
「ああ、どうだったんだ?」
「あ~男だったよ。ただ、アレは15までの運命だ。最期は川で果てるだろうな~」

その言葉に、旅人の胸に寒気が走った。奇妙な確信に突き動かされ、翌朝近くの村を訪ねた。昨夜、子どもが生まれたと話を聞きつけると、その両親を訪ね、祠での出来事を語った。そして「サエノ神を大事に信仰すれば、この子を守れるかもしれない」と助言した。


年月が過ぎ、噂の子どもはすくすくと育ち、釣りを好む少年になった。彼は毎日のように山奥の川で釣り糸を垂れる日々を送ったが、両親はどこか不安を拭えなかった。そして、その子が15歳の誕生日を迎えたある日、家に戻るなり不思議な話を始めた。

「今日、川で弁当を食べてたら、上流から男の子が来てこう言ったんだ。『お前は、本当なら今日で命が終わる運命だ。でも、親が信心深かったから、60歳まで命を預けてやる』って。」

家族は凍りつき、少年はその話を冗談だと思ったらしく、笑いながら釣り竿の修理に戻った。だが、その日を境に両親は祠をさらに熱心に拝むようになったという。

少年はやがて成長し、家を継ぎ、釣りを続けながら平穏な人生を送った。そして、村人たちは彼が60歳を迎える日を待ちながら、祠に灯を絶やさぬよう見守り続けたのだ。

[出典:803 :灰皿 ◆RxRt4/Lex. :04/02/14 02:03]

『サエノ神』は『塞の神』

道祖神とか結界を守る神様で、遡ると、黄泉の国でイザナギが死者を封じる為に置いた大石の事らしい。

村や部落の境にあって、他から侵入するものを防ぐ神。邪悪なものを防ぐとりでの役割を果すところからこの名がある。境の神の一つで、道祖神、道陸神 (どうろくじん) 、たむけの神、くなどの神などともいう。村落を中心に考えたとき、村境は異郷や他界との通路であり、遠くから来臨する神や霊もここを通り、また外敵や流行病もそこから入ってくる。それらを祀り、また防ぐために設けられた神であるが、種々の信仰が習合し、その性格は必ずしも明らかでない。一般には神来臨の場所として、伝説と結びついた樹木や岩石があり、七夕の短冊竹や虫送りの人形を送り出すところとなり、また流行病のときには道切りの注連縄 (しめなわ) を張ったりする。小正月に左義長などの火祭をここで行う場合もある。神祠、神体としては、「塞の神」「道祖神」などの字を刻んだ石を建てたものが多いが、山梨県には丸石を祀ったものもあり、人の姿を刻んだ石や、男根形の石を建てるものも少くない。行路や旅の神と考える地方ではわらじを供え、また子供の神としてよだれ掛けを下げたり、耳の神として穴あきの石を供えたりするところもある。

[出典:コトバンク]

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