ある旅人が、丹沢山中で夜をむかえた時、
803 :灰皿 ◆RxRt4/Lex. :04/02/14 02:03
夜露をしのぐ為に、仕方なく道端の『サエノ神』(確かそんな名前)の祠で夜を明かそうとした。
夜も更けた頃、どこからともなく二人の声が聞こえてきた。
「お~い、サエノ神。そろそろ行こうや」
「いや~今日はダメだ。お客人が来てるんでな。今日のところはみんなで行ってくれや~」
そんな会話を、旅人はウトウトしながら聞いていた。
しばらくするとまた声がする。
「サエノ神よ~今帰ったぞ~」
「どうだったんだ??」
「あ~男だったよ。だが、アレは15までの運命だ。最期はは川で果てる事になるな~」
そんな会話を聞いた旅人は、翌朝、近くの村を周ってみた。
すると不思議なことに、昨夜生まれた男の子がいるという。
そこで、両親に昨日の出来事を話し、子供の為にサエノ神を大事にするようにすすめた。
やがてその子は釣り好きになり、毎日のように山に釣りに入っていった。
そしてその子が15歳になったある日、釣り竿を壊して家に帰ってくると、不思議な話をしだした。
「今日、おかしな事があった。川で弁当を食べていたら、上流の方から一人の男の子がやってきて、『お前は、本当なら今日で命が終わる運命だ。だが親が信心深いので、60になるその時まで命を預ける』って言われた」
そう不思議そうに話したという事だ。
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『サエノ神』は『塞の神』ですね。
道祖神とか結界を守る神様で、遡ると、黄泉の国でイザナギが死者を封じる為に置いた大石の事だとか。
村や部落の境にあって、他から侵入するものを防ぐ神。邪悪なものを防ぐとりでの役割を果すところからこの名がある。境の神の一つで、道祖神、道陸神 (どうろくじん) 、たむけの神、くなどの神などともいう。村落を中心に考えたとき、村境は異郷や他界との通路であり、遠くから来臨する神や霊もここを通り、また外敵や流行病もそこから入ってくる。それらを祀り、また防ぐために設けられた神であるが、種々の信仰が習合し、その性格は必ずしも明らかでない。一般には神来臨の場所として、伝説と結びついた樹木や岩石があり、七夕の短冊竹や虫送りの人形を送り出すところとなり、また流行病のときには道切りの注連縄 (しめなわ) を張ったりする。小正月に左義長などの火祭をここで行う場合もある。神祠、神体としては、「塞の神」「道祖神」などの字を刻んだ石を建てたものが多いが、山梨県には丸石を祀ったものもあり、人の姿を刻んだ石や、男根形の石を建てるものも少くない。行路や旅の神と考える地方ではわらじを供え、また子供の神としてよだれ掛けを下げたり、耳の神として穴あきの石を供えたりするところもある。
[出典:コトバンク]