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短編 r+ 山にまつわる怖い話

山の中心の墓標 r+3204

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これは、土木関係の仕事をしている知人から聞いた話だ。

随分昔のことになるが、中国地方のある山中での出来事だという。


トンネル建設のため、険しい山を削ることになった。作業は順調に進んでいたが、ある日、掘削機が急に停止した。重機の操作を担当していた作業員が顔をしかめ、無線で「何かに引っかかったみたいです」と報告してきた。現場監督が慌てて前方へ確認に向かうと、掘削機の刃の前に異様なものが散らばっていた。

それは墓石だった。割れているものもあれば、苔むしたものもあり、文字がかろうじて読めるものも混じっていた。「墓石や骨が出てくるのは、山を掘る現場では珍しいことじゃない」と監督は言っていたそうだ。しかし、問題は場所だった。

その地点は、山のほぼ真ん中。地表から約200メートル下、まさに山の中心部だったのだ。自然の山で、人工的に土を盛った形跡もなく、誰かが墓地をここまで運んだと考えるのは不自然だった。しかも、墓石だけでなく、人骨のようなものまで混じっていたという。

「山全体が昔、何かの事故で埋まったのかもしれないな」
誰かがそうぼやいたが、詳しい調査をする余裕はなかった。工期が迫っていたため、そのまま作業を再開した。


掘削機は墓石を慎重に避けながら進んだが、その後も妙なことが続いた。ある日、夜勤の作業員が異様な音を聞いたという。重機の轟音に紛れるようにして、かすかな「祈りの声」のようなものが聞こえたそうだ。耳を澄ますと、声は低くうめくような調子で、どうやら古い言葉を唱えているようだった。

「重機の振動で風が変な音を立ててるだけじゃないか」
そう思おうとした矢先、次々と体調を崩す作業員が現れた。理由もなく高熱を出す者、足場で足を滑らせる者、そしてある男は夜中に宿舎を飛び出し、翌朝、近くの川で遺体となって発見された。現場は暗い空気に包まれたが、仕事を止めるわけにはいかなかった。


トンネルが完成したのは、予定より2か月遅れてのことだった。関係者は安堵し、苦労の末の達成感に浸っていたという。しかし、その後もトンネル周辺では不可解な事件が続いた。開通して間もなく、車の事故が異常に多発した。単調な直線区間での正面衝突、原因不明の横転、夜間の突然のエンジン停止など、不自然な出来事ばかりだった。

地元では次第に「このトンネルは呪われている」という噂が広まり、利用を避ける人も増えた。トンネルの名前を聞くだけで眉をひそめる者もいた。


特に印象的だったのは、開通から数年後の出来事だ。夜間点検のためにトンネル内に入った作業員が、壁にあるものを見つけたのだという。トンネル内のコンクリート壁には無数の手形がついていた。乾燥してからついたものではなく、まるでコンクリートがまだ固まっていない時に押されたようにくっきりと残っていた。

その手形の大きさは、子どものものだった。しかも、よく見ると手のひらだけでなく、指の間に「爪」のようなものが異様に長く伸びているのが見て取れた。点検作業員は慌てて管理室に駆け戻ったが、翌日には手形が消えていたという。

「気のせいだったんじゃないか」
同僚たちはそう言ったが、その後、彼は職場を辞めて故郷に帰ってしまった。


最近になり、このトンネルが廃止されるという話を耳にした。老朽化が原因とのことだが、噂を知る者の間では「ようやくか」とほっとする声もあるようだ。あの山の中心に埋まっていた墓石と人骨は、いったい何だったのだろうか。山全体がかつて墓場として使われていたのか、それとも何か別の理由があるのか。

その答えは、今も闇の中だ。

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