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短編 山にまつわる怖い話

結界を破った結果……【ゆっくり朗読】5658-0102

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南関東の山の中にある町で(と言うより村なのかな?という場所)、山中のある場所に納屋を作るという仕事を受けた時の話です。

依頼者に案内されて着いた場所は、山道を登った先にある平坦な場所でした。

その山全部がその人の持ち物だそうで、山の数ヵ所に畑があるみたい。

今までは、家から毎度農具を運んでいたらしいのですが、もう一つ畑を作るので、ついでに農具を保管する納屋を山の中に作ってしまおう、ということらしい。

予め会社の人間が出向いていて、測量だの図面だのはできていたので、佐藤君一行は作業のみ。

藪を綺麗に整地して、高さを整え納屋を建てる。

住居ではないのでそんなに大変な作業ではない、はずでした。

最初の異変は佐藤君が気づきました。

杭とロープで区画した藪の中を草刈り機で刈り、数本ある木をチェーンソーで切り倒して下地が見えると、人工的に置かれたと思われる石が五つ、それも等間隔に置いてある。

石自体の形はイビツだが、大きさは足のサイズで比較して30㌢から35㌢くらい。

これは、結界…かな?と思ったそうです。

とすると、石で囲んだ中央に何かがあるはずだが、見た感じ何もない。

山の持ち主に聞こうにも、案内したら帰ってしまったので聞けない。

まあいいや、取り合えずってな感じで結界の中に足を一歩踏み入れると、強烈な耳鳴りが。

頭まで響く耳鳴りは久し振りだったと言う佐藤君。

確実に何か封印してるみたいだけど、表面に何もないから埋まってるみたい。

まあ、最悪そのまま上に建てちゃってもいいけど、石は邪魔だから退かさなければならない。イコール結界は破られる。

聞いてからの方がいいと思うんだけどなぁと思い、現場監督である上司に言ってみると、バカ言ってんなと笑われる始末。

まあ佐藤君が見えるということは知らないし、そもそも信じない人達の集まり。

その場で石は撤去され、木や草の根っこを取り除くため少し掘り下げる作業に入りました。

ところが、作業開始後ものの数分でショベルカーがトラブル。

何故かアームが動かない。モタついているうちに日が落ちてきたので、作業は明日ということになり、違うショベルカーを持ってくることに。

翌朝、修理に出すのにショベルカーを確認するとどこも壊れていない。

昨日あれだけ動かなかったアームもスイスイ動く。

昨日のは何だったんだ、と皆ぶつくさ言うものの、壊れていないならと同じショベルカーをトラックに積み出発。

この日は、機材はショベルカーだけ。

あとは全部現地に置きっぱなしなので、作業員はライトバンで乗り合い移動。

運転手ではない佐藤君は、道中少し寝ようとタオルをアイマスク代わりにバンの後部座席でうたた寝を始めました。

どれくらい寝たのか、夢を見たそうです。

昨日整地した場所に立つ佐藤君。

すると、地面がモコモコと動き、しばらくすると直径1㍍くらいの土がドサッと陥没した。

近づいて穴を覗くと、暗くて分からないが何かが動いている。

さらに覗くと、人型の真っ黒な何かが穴の中で動いている。

うわー何かいる、と思った瞬間、それがバッと上を向いた。

佐藤君と目が合う。その目は憎しみしかなかった。嫌な目だった。

それはニヤッとすると、低く響く声で「出れた」と一言言うと凄い早さで穴から這い出て、蜘蛛のように四肢を広げた感じで山を降りて行った。

そこで目が覚めたそうです。

気づけば現場は目の前。

若いのに一番寝やがったな、と運転手に笑いながら文句を言われた佐藤君。

すいません、と笑い返すも夢の内容が気になって仕方ない佐藤君は、現場に到着すると真っ先に確認に行きました。

穴は、ありました。まさに結界があった場所のど真ん中に、直径1㍍くらいの穴が。

足を踏み入れても、もう耳鳴りもしない。

後からきた作業員達が、何だよこの穴は!と騒ぎ出す。

どうせタヌキかイタチかなんかの動物だろうと結論付けて、作業開始。

穴を埋めるところから始まったこの日の作業は、最高にスムーズに運んだそうです。

土台を作り上げ、コンクリートを流し込んでその日は終了。

翌朝、現地に着いた全員が驚愕。昨日コンクリートを流して作った土台のど真ん中に穴が開いている。

それも、前日に穴が開いていた場所と全く同じ場所に。

さらに不思議なのは、コンクリートは固まっているのだが、動物や人の足跡などは一切付いていない。

穴の場所までは、普通の人がジャンプしたくらいでは到底届かない。

となると、コンクリートが乾いてから穴を開けたことになるが、コンクリートの破片すらない。

そもそも夜中から明け方の山の中で、誰が何のためにやるのか、と騒然としていると、地元の人だろうか、腰のえらく曲がったお婆さんと、身なりのしっかりした中年の女性が山を登ってきたようです。

お婆さんと女性は、現場監督となにやら話していて、しばらくすると作業を中止すると言い出した。

大ブーイングの作業員達。

結局、別の場所に納屋は作るが、また測量からスタートなので時間がかかる。

取りあえず撤収!と言われ、片付けが始まりました。

ふと見ると、お婆さんがジーッと穴を見つめている。

佐藤君はちょっと抜け出して、お婆さんに話しかけてみました。

「ここね、石で結界が張ってあったんだけど、お婆ちゃん何か知ってる?」

と佐藤君が言うと、お婆さんはビックリしたような顔で佐藤君に話し出しました。

が、方言がキツ過ぎて何を言ってるのか全く分からない。

困った顔をしている佐藤君に見かねてか、お婆さんは手を引いて女性のところへ佐藤君を連れて行きました。

女性に通訳されて聞いた話に、佐藤君は愕然と後悔。

内容は以下の通り。

この山の所有者の家は、今でこそ普通だが昔はこの辺りの庄屋だった。

ある時、大変な凶作が続き村が飢饉に襲われた。

村人は庄屋が食料を隠していると騒ぎ、代表の男が庄屋の家に怒鳴りこむ。

これに怒った庄屋は、その男を棒でメッタ打ちして、村人全員の前で張り付けにして見せしめにしたが、男は張り付けにされながらも庄屋を呪う言葉を吐き続け、業を煮やした庄屋は張り付けにしたまま下から火を焚いて男を焼き殺した。

絶命の時、男は庄屋一族を必ずや根絶やしにすると言って果て、怯えた庄屋は名のある神職に頼んで男の亡骸をどこかの山の中に埋めて封印した。

ただの噂や言い伝えだと思っていた、とお婆さんは言ったそうです。

だが、先日息子(依頼者)が急に熱を出して倒れ、病院に行っても原因が分からずそのまま入院してしまった。

それで昨日、嫁(中年の女性)と見舞いに行くと、寝ていた息子がカッと目を見開いて、息子のではない全く知らない声で「恨みは晴らせてもらう」とお婆さんを睨んで言ったらしいです。

これから霊能者のところへ相談に行くが、あの声と目は忘れられない。

多分私達は死ぬかも知れない。

どういう風に結界が張ってあったのか、詳しく教えてくれないか、お婆さんは震えながら佐藤君にそう言ったそうです。

奥さんもやはり旦那さんのそれは見たし聞いたそうで、終始泣きそうな顔をしていたみたいです。

あの時、やっぱり結界破っちゃいけなかったと本当に後悔した、と佐藤君。

その後、最初の工事の支払い以外は何の連絡もなく、お婆さん、奥さん他のご家族がどうなったかは分からないそうです。

恐らく結界が強いうちはどうにもならなかったんだろうけど、時間が経って結界も弱まってきて、何とか意識だけでも飛ばせるようになっちゃったから、あの中の黒いヤツが結界を破らせようとあの場所を選ばせたんだろうね、とのことです。

化け猫の話もそうですが、昔からの因縁で現代の人に影響が出るのは堪らないですね。

751 : 2016/07/09(土) 12:05:30.50 ID:OjJXJjgk0

(了)

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