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向こうも気づいた rw+2,323-0822

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高校生のころ、私は夢日記をつけていた。

目が覚めるとすぐ、枕元のメモ帳に夢を書きつける。時間がなければ、通学のバスの中で続きを書いた。

なぜそんなことを始めたのかは覚えていない。ただ、毎晩のように同じ人物になる夢を見るのが面白かったのだ。

夢の中の私は、中年のサラリーマンだった。

紺色のスーツを着て、満員電車に揺られ、会社では一日中パソコンに向かっていた。

現実の私は女子高生だったから、その落差がおかしかった。

「またおっさんだった」

朝になると、そんなことを書いて笑っていた。

ところが、夢日記を続けているうちに、その男の生活は妙に細かくなっていった。

会社の机の傷。

給湯室に置かれた欠けたマグカップ。

同僚が煙草を吸ったあとにつける、強いミントの匂い。

右肩だけがいつも凝っていること。

夢というより、誰かの一日をそのまま借りているようだった。

それでも私は気にしなかった。

ある日の昼休み、教室で夢日記を読み返していた。

寝起きに書いているので、どのページもひどい字だった。自分でも読めないところがある。

その中に、一ページだけ、まるで別人が書いたような箇所があった。

細く、癖のない、几帳面な字だった。

最初は、自分がたまたま丁寧に書いたのだと思った。

だが、内容がおかしい。

「放課後、友達とカラオケ」

「帰りにコンビニで肉まん」

「伊藤園のほうじ茶ラテ。思ったよりうまい」

どれも私が実際にしたことだった。

夢ではない。

しかも、私はそんな内容を夢日記に書いた覚えがなかった。

次のページも同じだった。

「数学、小テスト。たぶん赤点」

「体育。持久走。きつい」

「母と口喧嘩」

私の生活だった。

けれど、字は私のものではない。

気味が悪くなって、私はノートを閉じた。

その日のうちに、教室のゴミ箱へ捨てた。

それから夢日記はやめた。

不思議なことに、あのサラリーマンの夢も見なくなった。

大学に進み、就職し、何年も経った。

あのノートのことなど、ほとんど忘れていた。

昨夜までは。

久しぶりに、あの男の夢を見た。

夢の中で私は、昔と同じ会社にいた。

男は以前より少し老けていた。

髪に白いものが混じり、机の上には老眼鏡が置かれていた。

私は彼の目で、机に向かっていた。

引き出しを開ける。

一冊のノートが入っていた。

見覚えのある表紙だった。

高校生のころ、私が捨てた夢日記だった。

夢の中で、男はそれを開いた。

ページには、私の汚い字がびっしり並んでいた。

「今日も会社」

「上司に怒られる」

「昼はそば」

「右肩が痛い」

全部、私が高校生のころに「夢」として書いた内容だった。

その下に、男の整った字で一行だけ書かれていた。

「また、あの女の夢を見た」

そこで目が覚めた。

午前二時十二分だった。

しばらく布団の中で動けなかった。

あのころ私が男を夢に見ていたように、男も私を夢に見ていた。

そう考えれば、あの見知らぬ筆跡にも説明がつく。

いや、説明がついてしまうことのほうが怖かった。

水を飲もうと起き上がったとき、机の上に何かがあるのが見えた。

ノートだった。

黄色く変色した表紙。

角に貼った、小さな猫のシール。

間違いない。

高校時代に捨てた夢日記だった。

開くまでに、かなり時間がかかった。

最後のページに、昨日の日付が書かれていた。

几帳面な、あの男の字だった。

「久しぶりに、あの女の夢を見た」

その下には、もう一行あった。

「今度は、向こうも気づいた」

[出典:353 :本当にあった怖い名無し:2018/10/10(水) 01:24:06.41 ID:JpwfAMWv0.net]

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